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対決2
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「メリック侯爵もそのようにおっしゃっておいでですわよ? 私どもの間の契約を勝手に破棄されるというのであれば、それ相応の補償を払っていただかなければなりませんわ。王太子ともあろう方が私人間の婚約を勝手に破棄する上に代わりの結納金の補償まで踏み倒すなんて筋が通りませんわよね? 結納金に加えて慰謝料までいただかなければ納得できませんわ」
黙って聞いていればぬけぬけと……。親が勝手に決めた婚約を破棄することが勝手? おまけにその婚約に異議を唱えればその結納金をフェリクスに負担させておまけに慰謝料ですって? 口を開こうとする私を制止してフェリクスが言う。
「そのようなことをこちらが補償する義務は一切ない。この婚約はそもそも当人の意志を完全に無視したものであり今回のことは婚約破棄ではなく婚約無効というべきものだ」
「あらそうでしたかしら? そちらのマリアベルは元々アルバートとの婚約をずっと了承してきたのですよ? ユリアとのことがあって一時的に婚約はなかったことになっていましたが、それが元の状態に戻っただけのことではありませんか」
「だが一度破棄された時点で婚約は無効となっている。再度の婚約をするにあたってのエマの同意書はあるのか?」
「それはもちろんこちらに」
そう言って義母上がサインの入った婚約同意書を掲げる。もちろん捏造だ。あんな書類に署名をした覚えはない。
「そんなものにサインをした記憶はございませんけれど」
私は言う。
「あら? お忘れになったのかしら? 婚約中の身でありながら他の殿方と恋仲になるほど股が緩い上におつむまでぼんやりさんでいらっしゃるのね?」
義母上の言葉に腸が煮えくり返る。義母上は余裕の表情で続ける。
「婚約が出ら溜めだと言うのならば王国の裁判所にでも申し立てをいたしましょうかね。どちらの言い分が本当か裁判所に判断をしていただきましょう? 王太子がすでに婚約が決まっていた侯爵家の令嬢を横取りした上、無理やり婚約破棄の上に結納金の補償を踏み倒し、それを侯爵家から訴えられて裁判沙汰になるなんて……。さぞかし話題になるでしょうねえ。たとえ結果的に裁判で勝利したところで醜聞は消えないものですわよ?」
義母上が勝ち誇ったように言う。フェリクスは動じない。
「ほう……裁判所ときたか。グレース殿は話が通じないようにしてなかなかリベラルな感覚をお持ちのようだな。もちろん受けて立つと言いたいところだが……そういう話になるのであれば、メイソン侯爵家には私よりも前に裁判所に訴えられるべき人間がたしか残っているのではなかったかな?」
フェリクスの言葉に義母上と父上の表情が固まった。フェリクスが続ける。
「そういえば王太子に毒を盛った罪で邸に幽閉されているユリア嬢は元気にお過ごしのことだろうか?」
「なっ?!」
フェリクスの言葉を聞いたメリック侯爵が驚きの声を上げる。
「お、王太子に毒を盛っただと?!」
ユリアが起こした事件のことはフェリクスの温情によって穏便に済まされていた。だがフェリクスが徹底的にユリアを糾弾するつもりなら話は別になる。
ルークはじめ事件の証言者はたくさんいるし物的証拠も揃っている。正式に王国裁判所に申し立てがされれば判決は最悪の場合公衆の面前で打ち首、よくても一生王国刑務所か修道院送りとなるだろう。
「な、なんのことをおっしゃっているのか……」
「わからないか? ならばなおさら裁判所で事実関係をはっきりさせたほうが良さそうだな?」
フェリクスは笑顔を浮かべて父上と義母上を合法的に脅す。
黙って聞いていればぬけぬけと……。親が勝手に決めた婚約を破棄することが勝手? おまけにその婚約に異議を唱えればその結納金をフェリクスに負担させておまけに慰謝料ですって? 口を開こうとする私を制止してフェリクスが言う。
「そのようなことをこちらが補償する義務は一切ない。この婚約はそもそも当人の意志を完全に無視したものであり今回のことは婚約破棄ではなく婚約無効というべきものだ」
「あらそうでしたかしら? そちらのマリアベルは元々アルバートとの婚約をずっと了承してきたのですよ? ユリアとのことがあって一時的に婚約はなかったことになっていましたが、それが元の状態に戻っただけのことではありませんか」
「だが一度破棄された時点で婚約は無効となっている。再度の婚約をするにあたってのエマの同意書はあるのか?」
「それはもちろんこちらに」
そう言って義母上がサインの入った婚約同意書を掲げる。もちろん捏造だ。あんな書類に署名をした覚えはない。
「そんなものにサインをした記憶はございませんけれど」
私は言う。
「あら? お忘れになったのかしら? 婚約中の身でありながら他の殿方と恋仲になるほど股が緩い上におつむまでぼんやりさんでいらっしゃるのね?」
義母上の言葉に腸が煮えくり返る。義母上は余裕の表情で続ける。
「婚約が出ら溜めだと言うのならば王国の裁判所にでも申し立てをいたしましょうかね。どちらの言い分が本当か裁判所に判断をしていただきましょう? 王太子がすでに婚約が決まっていた侯爵家の令嬢を横取りした上、無理やり婚約破棄の上に結納金の補償を踏み倒し、それを侯爵家から訴えられて裁判沙汰になるなんて……。さぞかし話題になるでしょうねえ。たとえ結果的に裁判で勝利したところで醜聞は消えないものですわよ?」
義母上が勝ち誇ったように言う。フェリクスは動じない。
「ほう……裁判所ときたか。グレース殿は話が通じないようにしてなかなかリベラルな感覚をお持ちのようだな。もちろん受けて立つと言いたいところだが……そういう話になるのであれば、メイソン侯爵家には私よりも前に裁判所に訴えられるべき人間がたしか残っているのではなかったかな?」
フェリクスの言葉に義母上と父上の表情が固まった。フェリクスが続ける。
「そういえば王太子に毒を盛った罪で邸に幽閉されているユリア嬢は元気にお過ごしのことだろうか?」
「なっ?!」
フェリクスの言葉を聞いたメリック侯爵が驚きの声を上げる。
「お、王太子に毒を盛っただと?!」
ユリアが起こした事件のことはフェリクスの温情によって穏便に済まされていた。だがフェリクスが徹底的にユリアを糾弾するつもりなら話は別になる。
ルークはじめ事件の証言者はたくさんいるし物的証拠も揃っている。正式に王国裁判所に申し立てがされれば判決は最悪の場合公衆の面前で打ち首、よくても一生王国刑務所か修道院送りとなるだろう。
「な、なんのことをおっしゃっているのか……」
「わからないか? ならばなおさら裁判所で事実関係をはっきりさせたほうが良さそうだな?」
フェリクスは笑顔を浮かべて父上と義母上を合法的に脅す。
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