変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi

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なにげない会話

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「と、とにかく急にそんなこと言われたって、はいそうですかなんて言えないわ。冗談はやめてくださる?」

「俺はいたって真面目に言ったつもりだが?」

  私の言葉にフェリクスはがっかりした表情を浮かべている。

「そんなことより真剣に対策を考えなくちゃ」

「大丈夫さ、そんな奴が来たら俺が追い払う」

「だけどね、アルバートって本当にしつこい男なの。あなただって会ってみたらわかるわ」

  私がフェリクスと話しているところにルークがやって来た。

「やあ2人で何を話しこんでいるんだ?」

  私はルークにも事情を説明した。

「やれやれ妹のことが済んだと思ったら今度は元婚約者かい? 君って本当に苦労ばかりしているんだな?」

「ふふ、本当にその通りかもしれませんわね」

  ルークの言う通り、我ながらこれまでの人生でとことん人間関係には恵まれなったようだ。とは言え今はフェリクスやルークのような気心の知れない仲間もできたし、アリアやシータのような女友達もできた。

  邸にいた頃と比べて生活は質素になったけれど今の生活は本当に楽しい。

「今度は媚薬を盛られないように気をつけてくださいますこと?」

「うっ……それを言われると耳が痛いな。その元婚約者殿は男色の気もあるということか?」

  ルークがそう言って怪訝な表情を浮かべる。

「それはないと思いますけれど……」

  でもアルバートならあり得るかしら?

「とにかくまたしばらくの間、できるだけエマが1人にならないように気をつけたほうがいいかもしれないな。学園内はとりあえずは大丈夫だろうが……。街に出る時は俺に声をかけてくれ、わかったな?」

  フェリクスが言う。

「俺に声を掛けてくれてもいいんだからね?」

  続けてルークが言った。

「その必要はない」

「どうして?」

「俺がいるからだ」

「だけど王太子様はなにかとお忙しいだろう? 俺は君と違って暇をしてるからな」

「エマからの呼び出しなら何を置いてでもかけつけるさ」

「へえ」

  この2人の関係はなんだかんだ言って相変わらずね。

「そういえばもうすぐ合宿だな」

  合宿と言うのは魔法学園で年に一度開催される泊りがけの課外授業だ。魔獣の多い森で生徒たちがグループごとに課題をこなす。

  まだグループは決まっていないけれど、予想外の場所から魔獣が現れたり指導役の教員が強力な魔術を使ってくるらしい。無事に課題を終えられるグループはわずかで、課題に失敗した場合は補習を受けることになる。

「合宿って一体どんな内容なのかしら?」

  その内容については口外厳禁のため詳しい内容は知らされていない。あと数週間後に魔獣の森の奥の今は使われていない邸で行われるそうだ。

「なんでも結構古い洋館でやるらしいけど、そんなとこまで雰囲気出さなくたっていいのになぁ。俺、ホラーとか正直苦手なんだよな。魔獣は構わないけど、暗くてヤバい洋館とか一体誰の趣味だよまったく」

  ルークはうんざりしている様子だ。

「俺は別に構わないけどな。エマ、君はどうなんだ?」

「そうね、私がいた邸の部屋もひどいものだったから、怖いとかそういうことはないけれど」

  邸の私の部屋は暗くて古い一番北側のしけっぽい部屋があてがわれていた。だから暗い場所には慣れているけれど……。お化けって本当にいるのかしら? たしかに怪談なんかの本はちょっぴり苦手かも。だけど言ったらなんだかまたフェリクスに笑われそうで私は黙っている。

「女の子がお化けに驚いて抱きついてきてくれたりするのは願ったりかなったりなんだけどな」

「ルーク、あなたって人は……」

  ルークは基本的に女の子が大好きらしい。

「エマみたいな普段は気の強い子が実は怖いものが苦手とかそういうギャップに弱いんだよな、俺」

「……人を勝手に妄想の種にしないでちょうだい」

  私は小さくため息をついた。
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