変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

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誰なんだその男は(元婚約者アルバート視点)

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ふふ、やっと君の居場所がわかったよ。君のことを僕が一体どれだけ探したと思う? まさか魔法学園に入学しているだなんて思いもよらなかったよ。

姉思いのユリアがこうして僕にわざわざ手紙をくれたというのに肝心の君は僕に便り一つよこさないなんてね?

君との婚約を破棄してユリアと婚約したのは間違いだった。ユリアは可愛らしくて従順だと思っていたけれど、縄で縛ろうとしてみたらやっぱりちょっと違うんだよねぇ。

白磁のように美しい肌、僕を見つめる小動物のようにつぶらな瞳、つくりたてのようにふっくらと艶やかな唇。

やっぱり何をとってみても君にはかなわない。君の代わりになる女なんてどこにもいない。

婚約破棄を切り出したらユリアは涙ながらに受け入れてくれたよ。……僕は本当になんて罪深い男なんだろう。だけどやっぱり君のことがどうしても忘れられない、愛するマリアベル。失ってから気がつくなんて僕はなんて愚かなんだろうね?

国中を探させたけどちっとも見つからない君のことを一体僕がどれだけ心配したことか。

だけどやっと見つかった。すぐに君を迎えに行かなくちゃ。

ユリアとの婚約を破棄した後で君との婚約を再度申し出たら、君の父であるメイソン侯爵は快く了承したよ。媚びへつらうような表情を浮かべて何度も僕に頭を下げていた。

……本当に、金のことしか頭にない犬のような男だね。僕の家とのつながりがどうしても欲しいらしい。

君をこんな男のところには預けておけないとますます思ったよ。君のことは僕が幸せにしなければ。





そうして僕は魔法学園にやって来た。とは言えまだ入学許可は下りていないから堂々と会いに行くことはできない。ある日、魔法学園の生徒たちが課外実習で学園の外に出掛けるらしいという情報を得た僕はその日を狙って木陰からこっそりと彼らの様子を伺うことにした。

制服を着た男女の集団ががやがやと学園の敷地から出てくる。今日は近くの森で魔獣相手の実践練習をするらしい。

マリアベルは……一体どこだ? ユリアの手紙によるとマリアベルは「エマ」という偽名を使って暮らしているらしい。

木陰からマリアベルの姿を探していると男の声が聞こえた。

「エマ!」

黒髪で長身の男が1人の女生徒に早足で近づいた。女生徒は……間違いない、マリアベルだ! ああ、やっと会えたね、マリアベル。艶やかで美しい黒髪。輝くような美しさの中に可愛らしさが同居しているあの姿。間違いない。会いたかったよマリアベル!

彼女の姿を見たらいてもたってもいられなくなって一歩前へ出ようとした瞬間、黒髪の男がマリアベルの手を取った。

「エマ、駄目じゃないか。護身用の魔道具を忘れていくなんて」

そう言って男がマリアベルの手にネックレス型の魔道具を手渡した。僕は怒りと嫉妬で体中の血が沸き上がるような感覚を覚えた。なんなんだ? あの男は? 気安く僕のマリアベルに触れるんじゃない。

「あら私ったら……ごめんなさい、フェリクス。ありがとう」

「ほら、ちゃんと首にかけろ。装具型の魔道具はちゃんと装備しないと効果を発しないからな」

「じ、自分でできるったら」

「いいからじっとしてろ」

そう言って半ば強引に男がマリアベルにネックレスをつける。近い! 近い! 近すぎるだろう?! 僕のマリアベルからさっさと離れろ貴様!

出て行ってそう叫びたいのを必死にこらえる。今ここで出て行ったら不審者として捕らえられるであろうことくらいは、マリアベルのことで頭がいっぱいな僕にだってわかるさ。

「あ、ありがとう……」

マリアベルが黒髪の男に照れたような表情を向ける。2人はそのまま笑顔で談笑しながら学生たちの集団にまぎれていった。

僕はふつふつとわき上がってくる怒りの感情を抑えるのに必死だった。目の前がチカチカする。

……なんなんだあの男は? 僕のマリアベルにあんなに気安く……!

マリアベル……君も君だ。婚約者である僕以外の男に簡単に触れさせて、おまけにそんな無防備な笑顔を見せるだなんて。君がそんな女だっただなんて失望したよ。

いや悪いのはマリアベルじゃない。悪いのは彼女を誘惑するあの男と、そして彼女を堕落させたこの学園だ。一刻も早く彼女をこの悪しき環境から救い出さなければ。

だけど君にもお仕置きが必要だよね。 だってこうして堕落させられてしまったのは君にもそうされるだけの隙があったということだもの。僕のそばにいたらこんなことにはならなかったのに……。君が僕を失って寂しかったのはわかるけれど、君には僕しかいないんだってことを忘れてしまってはいけなかったよね? 今度こそ君の体にしっかり教えこまなきゃならない。君が愛するのは誰なのか、君が本当に求めているのは誰なのか。

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