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ルーク様の困惑(主人公 エマ視点)
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中庭で私とフェリクスとルークは昼ご飯後の休憩をとっている。ハーブティーが美味しい。
「ユリアが光魔法保持者とはな……」
ルーク様が深いため息をつきながら言った。
「思うところは色々あるが、フォローしないわけにはいかないだろう」
ルーク様が頭を抱える。
「ルーク様、ユリアと二人きりになる時はくれぐれも注意してください。そのう……目的のためには手段を選ばない子ですから」
エマの狙いはルーク様だ。長い付き合いだもの。あの子の考えていることなんてすぐにわかる。
「……俺のことを心配してくれているのか?」
ルーク様がちょっと色っぽい眼差しを私に向けてくる。
「大丈夫さ、俺が想っているのは……」
ごほんとフェリクスが咳払いする。
「ルーク様、ユリア嬢の魔力は思っていた以上に強いようなのでくれぐれもお気をつけください」
「あ、ああフェリクス、ありがとう」
「ユリアと接触する時はできるだけ俺もついておくことにしよう。万が一のことが起こらないようにな」
・
・
・
休日にカフェで働いていると久しぶりに使用人のアリアが店にやってきた。店長が休憩をくれたので休憩室で話をする。
二人きりになるなり開口一番にアリアが慌てた様子で言う。
「エマ様、ユリア様が魔法学園に……!」
「ああ、もう会ったわ」
私の返答にアリアは心配そうな表情を浮かべた。
「だ、大丈夫でしたか? なにかひどいことはされていませんか?」
「まあ……今のところみんなの手前もあって、一応大人しくはしているわね。まあ心の中では私のことを邪魔に思っているに違いないだろうけど。アルバートの件も根に持たれていそうだわ」
アリアが小さく息を吐く。
「アルバート様とユリア様は婚約を解消されたんです」
思った通りの展開だ。
「でしょうね」
私は言った。
「メイソン侯爵様はアルバート様の生家であるメリック家とのつながりを期待しておりましたから大変困っておいでです。エマ様を探し出して再び婚約を結ばせでもしそうな勢いですよ?」
アリアの言葉に私は身震いがした。あのアルバートからせっかく逃げられたのに、また婚約をさせられるなどうんざりだわ。ユリアがアルバートの本性に気がつくのが思ったより早かったわね。結婚さえしてしまえば、そう簡単に離婚はできないからちょうどいいと思っていたのに。
ユリアって野生の勘だけは異常に働くハイエナのような女なんだもの。
「そう。まあ私はメイソン家に戻るつもりはないけどね」
「もちろんです。エマ様をあんな風に扱うあんな家に戻る必要はありませんわ。邸を出てからのエマ様は本当に生き生きとしていて素敵ですもの」
「ありがとう」
アリアの言葉に私は微笑みを返す。
「あの調子ではメイソン家の先が思いやられます。……使用人の私がこんなことを申し上げるのは僭越かもしれませんが、内情はめちゃくちゃです。奥様は湯水のようにお金を使う上に使用人を人とも思わないような振る舞いで。メイソン様が手掛けている事業も最近上手くはいっていないようですし。資金の援助を受けるためになんとかしてメリック家とのつながりを得ようと必死のようですね」
アリアの話を私は冷めた気持ちで聞いていた。事業が上手くいかない埋め合わせを娘を差し出す政略結婚でなんとかしようとするなんて、衰退する侯爵家の典型的末期症状だ。
昔のお父様の姿を私はふと思い出す。ユリアの母であるグレース様と結婚する前の父上はこうではなかった。幼い頃の記憶しかないけれど、家の事業には真剣に取り組み、使用人たちからは慕われ、私には優しく、常に書斎で本を読み博学だった父。
それがグレース様と再婚してからというもの、享楽に溺れるようになってしまった。メイソン家の財政事情を密かに調べたことがあるけれど、ここ数年のメイソン家の財政はひどいものだ。その埋め合わせをするために領民たちに重い税を課していて、領民からは不満の声が上がっている。お父様はそのことにすら気がついていない様子だ。
あの頃のお父様は一体どこへ行ってしまったのだろう? 邸で長い間ひどい扱いを受けても耐えていたのは、お父様がいつか昔のお父様に戻ってくれるのではないかという気持ちもあったからだ。だけど結局最後までお父様は変わらなかった。
「とにかくメイソン侯爵様にもくれぐれもお気をつけくださいね、お嬢様?」
「……ええ」
アリアの忠告に私は小さく頷いた。
「ユリアが光魔法保持者とはな……」
ルーク様が深いため息をつきながら言った。
「思うところは色々あるが、フォローしないわけにはいかないだろう」
ルーク様が頭を抱える。
「ルーク様、ユリアと二人きりになる時はくれぐれも注意してください。そのう……目的のためには手段を選ばない子ですから」
エマの狙いはルーク様だ。長い付き合いだもの。あの子の考えていることなんてすぐにわかる。
「……俺のことを心配してくれているのか?」
ルーク様がちょっと色っぽい眼差しを私に向けてくる。
「大丈夫さ、俺が想っているのは……」
ごほんとフェリクスが咳払いする。
「ルーク様、ユリア嬢の魔力は思っていた以上に強いようなのでくれぐれもお気をつけください」
「あ、ああフェリクス、ありがとう」
「ユリアと接触する時はできるだけ俺もついておくことにしよう。万が一のことが起こらないようにな」
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休日にカフェで働いていると久しぶりに使用人のアリアが店にやってきた。店長が休憩をくれたので休憩室で話をする。
二人きりになるなり開口一番にアリアが慌てた様子で言う。
「エマ様、ユリア様が魔法学園に……!」
「ああ、もう会ったわ」
私の返答にアリアは心配そうな表情を浮かべた。
「だ、大丈夫でしたか? なにかひどいことはされていませんか?」
「まあ……今のところみんなの手前もあって、一応大人しくはしているわね。まあ心の中では私のことを邪魔に思っているに違いないだろうけど。アルバートの件も根に持たれていそうだわ」
アリアが小さく息を吐く。
「アルバート様とユリア様は婚約を解消されたんです」
思った通りの展開だ。
「でしょうね」
私は言った。
「メイソン侯爵様はアルバート様の生家であるメリック家とのつながりを期待しておりましたから大変困っておいでです。エマ様を探し出して再び婚約を結ばせでもしそうな勢いですよ?」
アリアの言葉に私は身震いがした。あのアルバートからせっかく逃げられたのに、また婚約をさせられるなどうんざりだわ。ユリアがアルバートの本性に気がつくのが思ったより早かったわね。結婚さえしてしまえば、そう簡単に離婚はできないからちょうどいいと思っていたのに。
ユリアって野生の勘だけは異常に働くハイエナのような女なんだもの。
「そう。まあ私はメイソン家に戻るつもりはないけどね」
「もちろんです。エマ様をあんな風に扱うあんな家に戻る必要はありませんわ。邸を出てからのエマ様は本当に生き生きとしていて素敵ですもの」
「ありがとう」
アリアの言葉に私は微笑みを返す。
「あの調子ではメイソン家の先が思いやられます。……使用人の私がこんなことを申し上げるのは僭越かもしれませんが、内情はめちゃくちゃです。奥様は湯水のようにお金を使う上に使用人を人とも思わないような振る舞いで。メイソン様が手掛けている事業も最近上手くはいっていないようですし。資金の援助を受けるためになんとかしてメリック家とのつながりを得ようと必死のようですね」
アリアの話を私は冷めた気持ちで聞いていた。事業が上手くいかない埋め合わせを娘を差し出す政略結婚でなんとかしようとするなんて、衰退する侯爵家の典型的末期症状だ。
昔のお父様の姿を私はふと思い出す。ユリアの母であるグレース様と結婚する前の父上はこうではなかった。幼い頃の記憶しかないけれど、家の事業には真剣に取り組み、使用人たちからは慕われ、私には優しく、常に書斎で本を読み博学だった父。
それがグレース様と再婚してからというもの、享楽に溺れるようになってしまった。メイソン家の財政事情を密かに調べたことがあるけれど、ここ数年のメイソン家の財政はひどいものだ。その埋め合わせをするために領民たちに重い税を課していて、領民からは不満の声が上がっている。お父様はそのことにすら気がついていない様子だ。
あの頃のお父様は一体どこへ行ってしまったのだろう? 邸で長い間ひどい扱いを受けても耐えていたのは、お父様がいつか昔のお父様に戻ってくれるのではないかという気持ちもあったからだ。だけど結局最後までお父様は変わらなかった。
「とにかくメイソン侯爵様にもくれぐれもお気をつけくださいね、お嬢様?」
「……ええ」
アリアの忠告に私は小さく頷いた。
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