変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

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ルーク様とフェリクス

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あのパーティの日から数か月、フェリクスはすっかり元気になり、魔法学園は日常を取り戻している。

私はと言えば、毎日魔術や剣術、体術の訓練に明け暮れている。暇な時間ができると学園の図書室で気になる書物を読み漁る日々。

邸とは比べ物にならない蔵書量に胸が躍る。

今日も図書室で薬学についての本を読んでいたら頭上から聞き慣れた声で呼びかけられた。

「エマちゃん、君ってちょっと色々頑張りすぎじゃないかな? 頑張る女の子ってすごく素敵だけど、ちょっと心配になってしまうよ。たまには少し息抜きでもしたらどうかな? 例えば俺とお茶をするとか?」

顔をあげると同じクラスのリアムがいた。フェリクスとルーク様と同じ生徒会役員の一人だ。

おしゃべりが上手で見た目も今風。女の子に優しくて態度も柔和。

こういう方がいわゆる女たらしと言うのかしら。社交界になんて顔を出したことがなかったから知らなかったわ。本の中では読んだことがあったから事前知識としては知っているけれど。

まあリアムは素敵だけど……正直言うと、私はもっと硬派な人が好みなのよね。

……って違う違う! そういう問題じゃなくて、今は恋愛だの男性だののことを考えている場合ではないんだった。

私がリアムの誘いを断ろうと口を開いたちょうどその時、ルーク様が私たちの会話に割り込んできた。

「おっと、あいにくエマ嬢はこの後僕と剣術の訓練をすることになっているのでね」

いつ見てもスマートなルーク様。今日も髪型が決まっている。そう言えばこの後ルーク様と剣術の訓練の約束をしていたのだった。3人で会話をしていたらさらにもう1人やってきた。

「剣術の訓練をされると言うのなら、私もご一緒させていただいてもよろしいですか、ルーク様?」

背後から聞こえる声の主が誰なのか、振り返らなくてもわかる。フェリクスだ。

なんだかよくわからないけれど、これではまるで私の相手を3人の男性が取り合っているように見えてしまうじゃない。実際先ほどから周りの机にいた数人の女子たちにちらちらと見られてしまっている。

……はぁ。こんなところをイザベラに見られたらまた嫌味を言われてしまうわ。

「あ、ああ、フェリクス。もちろんいいとも」

ルーク様がフェリクスのことを怪訝な表情で見つめながら言う。

……いつもそつがなくてクールでスマートなルーク様なんだけど、フェリクスを見る目がなんだか時々おかしいのよね。

何がおかしいかって聞かれると上手く説明できないんだけど、なんだかまるでフェリクスの言動に心底驚いているみたいな、そんな不思議な表情をするの。

他の誰に対してもルーク様がそんな表情を浮かべるところを見たことはないものだから、なんだかやけに気になるのよね。二人ってよほど親しい間柄なのかしら。

「……というわけでリアム、お誘いは嬉しいのですがお二人と剣術の訓練があるのでまたの機会に」

「あ、ああ……。くれぐれも気をつけて。……二人が本気の殺し合いなんかし始めないよう祈るよ」

リアムが後半なんと言ったのかよく聞き取れなかったわ。

「さ、行こうか、エマ」

ルーク様がそう言って私を促す。

相変わらず周りからじろじろ見られているわ。

それも仕方がないわよね。ルーク様もフェリクスも女子からとっても人気があるんだもの。

ルーク様は言わずもがなだけど、フェリクスも女の子から人気があるなんて意外だったわ。たしかに眼鏡を外したらすごく綺麗な顔をしているけれど、それに気がついているのは私だけだと思ってた。……女の子って結構男の人の顔をしっかり見ているものね。

フェリクスはなんだか自分の顔の綺麗さを必死に隠そうとしているみたいだけど、結局隠しきれていないってわけ。おまけに座学と体術剣術は常に学年トップなんだもの。

それなら魔術もよくできそうなものだけど、魔術の成績はあまり振るわないのよね、なんだか色々よくわからないわ、フェリクスって。

おまけにあの事件後からやたらと私に絡んでくるし……一体何を考えているのかさっぱりわからない。

そしてなんだか険悪なムードを漂わせているのよね、この2人。

私は前を並んで歩くルーク様とフェリクスをちらりと見る。
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