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職場の後輩の橘くん
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こんな事態、想定してなかった。
まさか橘君にお持ち帰りされちゃうなんて。
橘悠希(たちばな ゆうき)君は私と同じ部署の営業職で二歳年下のイケメンだ。
私は成海結衣(なるみ ゆい)。25歳。文房具メーカーで営業事務の仕事をしている29歳。
今日は部署の忘年会。12月だけど寒さはそれほど厳しくない。
2歳年下で同じ部署の橘君のことは前からちょっといいなと思ってた。
世の中がこんな状況だから、今まで飲み会なんかもあまりなくて、仲良くなる機会はなかなかなかったけれど、今日の忘年会では気がついたらなぜか橘君が隣の席にいて、たわいない話で盛り上がった。
お酒もどんどん進んじゃって、それほど強くないのに随分たくさん飲んでしまった気がする。
一次会が終わって店を出たところで、この後どうするか話し合ういくつかの集団ができた。私はもう帰ろうかなと思っていたんだけど、飲み過ぎたせいかぼんやりしてしまってその場になんとなく立ち尽くしていた。
部長たちはこの後スナックに行くようで意気揚々とその場を離れて行った。私もさっさと帰ろうと思って歩きだそうとしたところで視界がぐらりと揺れた。-転ぶ!!そう思ったところで後ろから聞き慣れた声がした。
「成海さん、大丈夫?」
橘君がそう言いながら私の体を支えていた。橘君の手が私の腰に触れている。思わずどきりとしてしまう。職場ではこんなボディタッチ一度だってなかった。スマートでさりげない感じだから不快感も不自然さもないけれど、腰にある橘君の手の感覚に全神経が集中してしまう。
「だ、大丈夫……」
言ったそばからよろめいてしまって今度は腕も掴まれた。
思っていたより酔いがまわっている。
「僕、成海さん駅まで送っていきます」
「えーそうなの?」
少し離れたところから先輩たちのちょっと残念そうな声が響いた。当然だ。橘君はみんなの人気者だから。
「成海ちゃん大丈夫?」
そう言いながら隣の係りの佐藤係長が近寄ってきた。根は悪い人ではないのだけれど、係長のセクハラ発言にはいつも困らされているので近づかれると思わず身構えてしまう。びくりとしたら橘君がすっと間に入ってくれた。
「はいはい佐藤さん、酔っ払いすぎ~」
「なんだ橘、怪しいな」
「なにも怪しくありません。僕明日早いんで帰るだけです」
「ふーん」
面白くなさそうな佐藤係長の声がした。
「じゃあ失礼します」
そう言って橘君は私の手を引いて駅の方角へ歩き出そうとしていた。
このまま橘君と二人で消えたら、いい噂の種だ。そう危惧していたら救世主が表れた。
「あ、俺も駅まで行くわ」
無難さで言ったらナンバーワン、子持ちパパの田中さんが後からついてきた。
「あ、じゃあ一緒に行きましょう」
なんてことない様子で橘君が言った。そのまま三人で駅の方向へと歩き始めた。
「成海さん、ほんと大丈夫か? こんなに酔ってるの初めて見た」
田中さんにそう言われて、自分がちょっと恥ずかしくなった。
「久しぶりの飲み会でしたからね。成海さん、飲み方すっかり忘れちゃってたのかも」
「あーそれはあるな」
橘君がさりげなくフォローしてくれてありがたい。
「あ、電話だ、ちょっとごめん」
そう言って田中さんがスマホを取り出した。相手は奥さんみたいだ。
「え、あ、そうなの? わかった~、それじゃちょっと寄ってくわ」
そう言って田中さんは通話を終えた。
「ごめん、俺ちょっと駅ビル寄って帰るわ。奥さんから明日の子どもの習い事で必要なもの買ってくるように頼まれちゃってさ。一人で大丈夫か?」
「あー全然大丈夫です。お疲れ様です」
「おう、お疲れ。成海さんのことよろしくな」
まさかの流れで橘君と二人きりになってしまった。酔いで頭がくらくらする。でもイケメンに半分抱きかかえられるようにして歩くのは悪くない気分だった。あの橘君と二人きり。
まさか橘君にお持ち帰りされちゃうなんて。
橘悠希(たちばな ゆうき)君は私と同じ部署の営業職で二歳年下のイケメンだ。
私は成海結衣(なるみ ゆい)。25歳。文房具メーカーで営業事務の仕事をしている29歳。
今日は部署の忘年会。12月だけど寒さはそれほど厳しくない。
2歳年下で同じ部署の橘君のことは前からちょっといいなと思ってた。
世の中がこんな状況だから、今まで飲み会なんかもあまりなくて、仲良くなる機会はなかなかなかったけれど、今日の忘年会では気がついたらなぜか橘君が隣の席にいて、たわいない話で盛り上がった。
お酒もどんどん進んじゃって、それほど強くないのに随分たくさん飲んでしまった気がする。
一次会が終わって店を出たところで、この後どうするか話し合ういくつかの集団ができた。私はもう帰ろうかなと思っていたんだけど、飲み過ぎたせいかぼんやりしてしまってその場になんとなく立ち尽くしていた。
部長たちはこの後スナックに行くようで意気揚々とその場を離れて行った。私もさっさと帰ろうと思って歩きだそうとしたところで視界がぐらりと揺れた。-転ぶ!!そう思ったところで後ろから聞き慣れた声がした。
「成海さん、大丈夫?」
橘君がそう言いながら私の体を支えていた。橘君の手が私の腰に触れている。思わずどきりとしてしまう。職場ではこんなボディタッチ一度だってなかった。スマートでさりげない感じだから不快感も不自然さもないけれど、腰にある橘君の手の感覚に全神経が集中してしまう。
「だ、大丈夫……」
言ったそばからよろめいてしまって今度は腕も掴まれた。
思っていたより酔いがまわっている。
「僕、成海さん駅まで送っていきます」
「えーそうなの?」
少し離れたところから先輩たちのちょっと残念そうな声が響いた。当然だ。橘君はみんなの人気者だから。
「成海ちゃん大丈夫?」
そう言いながら隣の係りの佐藤係長が近寄ってきた。根は悪い人ではないのだけれど、係長のセクハラ発言にはいつも困らされているので近づかれると思わず身構えてしまう。びくりとしたら橘君がすっと間に入ってくれた。
「はいはい佐藤さん、酔っ払いすぎ~」
「なんだ橘、怪しいな」
「なにも怪しくありません。僕明日早いんで帰るだけです」
「ふーん」
面白くなさそうな佐藤係長の声がした。
「じゃあ失礼します」
そう言って橘君は私の手を引いて駅の方角へ歩き出そうとしていた。
このまま橘君と二人で消えたら、いい噂の種だ。そう危惧していたら救世主が表れた。
「あ、俺も駅まで行くわ」
無難さで言ったらナンバーワン、子持ちパパの田中さんが後からついてきた。
「あ、じゃあ一緒に行きましょう」
なんてことない様子で橘君が言った。そのまま三人で駅の方向へと歩き始めた。
「成海さん、ほんと大丈夫か? こんなに酔ってるの初めて見た」
田中さんにそう言われて、自分がちょっと恥ずかしくなった。
「久しぶりの飲み会でしたからね。成海さん、飲み方すっかり忘れちゃってたのかも」
「あーそれはあるな」
橘君がさりげなくフォローしてくれてありがたい。
「あ、電話だ、ちょっとごめん」
そう言って田中さんがスマホを取り出した。相手は奥さんみたいだ。
「え、あ、そうなの? わかった~、それじゃちょっと寄ってくわ」
そう言って田中さんは通話を終えた。
「ごめん、俺ちょっと駅ビル寄って帰るわ。奥さんから明日の子どもの習い事で必要なもの買ってくるように頼まれちゃってさ。一人で大丈夫か?」
「あー全然大丈夫です。お疲れ様です」
「おう、お疲れ。成海さんのことよろしくな」
まさかの流れで橘君と二人きりになってしまった。酔いで頭がくらくらする。でもイケメンに半分抱きかかえられるようにして歩くのは悪くない気分だった。あの橘君と二人きり。
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