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22.好き
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家に着くと、母さんも義父さんも帰って来ていなかった。
兄さんと俺は帰る途中、一言も話さなかったけど、兄さんに掴まれた腕も離してくれなかった。
玄関に上がり、この気まずい空気をどうしたら良いのかと悩む。
雅隆さんは、謝って、告白して……エッチしたら良いって言ってたけれど、そんな簡単な話なのか?
このままリビングに行くか、自分の部屋に逃げるか?
いや、逃げたらせっかくの雅隆さんの犠牲を無駄にする事になる!
意を決して兄さんに声を掛ける。
「兄さん、あの……えっと、さっき言った事なんだけど」
「なに?」
俺を振り返り、兄さんは素っ気なく返す。
「酷い事言ってごめんなさい……」
「どれの事?血の繋がった家族じゃないって言った事?事実だろ」
俺が言った事だし、事実だったとしても、兄さんに言われたらすごく胸が痛かった。
「そうかも知れないけど、でも……」
俺は小さい頃から、兄さんの背中を追いかけて育ったんだ。
「ごめんなさい」
何の言い訳も出来ず、ただ俯いて謝る事しかできなかった。
寒いのに、2人とも玄関から動けない。
「それより咲耶は、俺の事セフレだと思ってるの?」
それよりって、兄さんにとって大事だったのはそこなの?
「分かんない……けど、そんな感じかなって……。あの時は、頭に血が昇ってて、あんまり考えずに言っちゃったから」
「そう……」
だから深く考えないでほしい。
「あと、嫌いって言った事も……謝りたい」
「……気にしてないし、どうでも良いよ」
え?そ、そんな言い方しなくても良いだろ?
兄さんはもう話は無いと言いたげに、階段を上がろうとする。
俺ってそんなに兄さんにとってどうでも良い存在?
だけどその時、雅隆さんに言われた事をもう一度思い出す。
そうだ、告白して……いや、無理だろ!
青くなったり赤くなったり、多分今の俺は相当変な顔付きをしていただろう。
兄さんは階段の途中で止まり、俺の方を振り返った。
目線が5秒程絡み合い、兄さんは口を開けた。
「咲耶が、俺の事どう思っているかなんて、どうでも良いよ。俺が、咲耶の事を好きな事には変わり無いし」
そう言って、2階まで上がって行った。
えっ?
いや、えっ?
今、兄さんが俺の事好きって言った?
どういう好き?それって友達とかに使う好き?
いや、どういう好きでも構わない。兄さんに嫌われていないと分かっただけで、俺はこの先の行動に対する自信を得ることができた!
「ま、待って!」
俺は兄さんを追いかけて、トントンと小刻みよく階段を上がった。
今言わないで、いつ言うんだ?
兄さんが好きだと言ってくれるのなら、俺が言わずに話を終えて良いわけがない。
ドアに手を掛けている兄さんの背中に、俺は勢いよく抱きついた。
「俺も、兄さんの事が好きっ」
言えた!やっと言ってやった!
言葉にしたら簡単で、何でこんなに今までまで時間がかったのか分からない。
まぁ兄さんが先に言葉にしてくれたからなんだけど。
そしてその兄さんの反応はというと……。
「そう……」
………それだけ?
兄さんの感情が動くタイミングが全然わからない!
「咲耶は、好きでもない人に抱かれるの?」
俺が呆然としていると、兄さんがまた不思議な事を言い出した。
「いや、兄さん以外に……抱かれたくないよ……?」
「俺だって、好きでもない人の尻に突っ込みたいなんて思わないし」
俺は兄さんから腕を離し、一歩下がった。
何だろ、嬉しいような?言い方の問題?
そしてこの話は、ずいぶん前におじさんと話した会話な気がした。
ん?それって……
「兄さんは、俺が好きだって分かってたって事?」
「まぁ、そうかなって思ってたよ。オナニーしながら人の名前呼ぶぐらいだし」
それって最初からじゃないか!
「でも、咲耶から抱きついて来て、好きって言われるなんて思っていなかったから、嬉しいよ」
兄さんの頬が緩んだ。かっこいい。
けど、兄さんのその表情は一瞬で、また少し機嫌が悪そうだった。
「だけど、今日のお友達との件は許してないよ。2人でラブホだなんて、舐めてんの?」
前言撤回、少しじゃなかった。
「咲耶が俺に何言おうと許せるけど、他の男とデートして、ラブホ行って、手縛られて……掘ってくださいって言ってるようなもんだよ」
それは、そうかも知れない……。
雅隆さんはそんな事しないと言ったところで、やっている事が事なだけに、何の説得力もない。
「ごめんなさい……」
兄さんがため息を吐いて、再び部屋に入ろうとする。
「だから、今日はそっとしといてくれる?咲耶に優しく出来ない」
せっかく兄さんに好きって言ってもらえて、俺も伝えられたのに?これで今日はお終いなの?
今後は?恋人にしてくれるの?え?
俺にとって、好きって伝えることがゴールだと思っていたけど、まさかのスタートラインにも立てていない!
どうなるの?
「ま、待ってよ……」
兄さんの腕を掴んで、俺は縋りついた。
「優しくなくて良いから、その……ダメ、かな?」
「それは、酷くて良いからエッチしたいって事?」
ストレートな言葉に少しだけ戸惑うけれど、俺は首を縦に振った。
「そう……。まぁ、覚悟できてるなら良いよ」
そう言って、兄さんは自分の部屋ではなく、俺の部屋のドアノブに手を掛けた。
「咲耶はさっき、誰を好きって言った?」
「に、兄さんを好きって、言った」
何だか不穏な空気が漂ってんだけど?
兄さんなんか口角上げてるんだけど?
「それなのに、他の男に抱かれようとしたんだから、躾が必要だと思わない?」
「しつけ……?」
「咲耶は誰のものになりたいの?」
何その質問。
俺は息が荒くなり、ムスコがピクリと反応したのが分かった。
そうだ、この状況に凄く興奮している。
「兄さんのものになりたい」
「だったらやっぱり、可愛い弟にしっかりと罰を与えて、躾しないとな」
雅隆さん、かなりの劇薬だったみたいですよ。
準備を終えて、ベッドに横になった俺は、1つだけ兄さんにお願いをしてみる事にした。
「兄さん、お願いがあるんだけど……」
「なに?」
「縛って欲しい」
兄さんは言葉を詰まらせたが、ベルトを使って俺の腕を拘束した。
なんで皆んなベルト使うの上手なの?
でもやっぱり、兄さんに拘束されるのは凄く興奮する。
「何でお友達と同じ事させるの?」
兄さんの機嫌は、変わらずあまり良くない。
「それは……その、ま……友達にされた時、やっぱりちょっとだけ、怖かったから……」
今、兄さんの前で雅隆さんの名前を出したらダメな気がした。
「……咲耶は、興奮してる?」
「うん……」
兄さんが俺の上に跨り、俺の腕を掴む。
「今、俺が何をしても咲耶は抵抗できないのに?」
それが良いんだよ、とは思っても言わなかった。
「兄さんが、良いから……」
と、代わりに訳の分からない事を言ってしまう。
「そう……。後悔しないでね」
後悔?俺から望んで縛ってもらったのに、後悔なんてしないだろうと、この時の俺は安易に考えていた。
それに気持ちが通じたわけだし、気持ちに余裕があったんだ。
下を全て脱がされ、すぐにローションで下を慣らされる。
「んっ、んんっ……」
だけどいつもと違って、何だが早急な気がする。
前立腺を弄られて気持ち良いんだけど、どちらかといえば穴を柔らかくするように弄られている。
いや、うん……それも気持ち良いんだけどね。
すぐに指が増え、ローションを足され、広げられていく。
とは言え、俺も色々と我慢が出来ない。
それこそ、酷くされても兄さんのペニスを挿入して欲しいんだ!
やっぱり雅隆さんの言った通り、酷くすると言われていても、どこか兄さんを信じている。
それ程、酷くはないはずだって。
既に慣らされた穴に、兄さんのペニスが押し入ろうとしていた。
外でした時よりもローションだって多いし、慣らされてるし!
足を上げられ、奥まで入ってくる。
「んんっ、んんっ……」
「痛い?」
俺は首を横に振った。
多少のキツさはあるが、痛くはない。
「じゃあ、動くよ」
兄さんの腰が上下に動いて、上から勢いよく奥まで突かれる。
「んぁっ、ひぃっ……はぁっ、あぁっ、あぁ……んんっ!」
最初からラストスパートのようで、奥に当たっては快感が身体を駆け抜ける。
「あぁっ、ああっ!きもちぃっ、んんっ、はあっ!」
「ナカ、締めすぎ」
仕方ないだろ!嬉しくて気持ち良くて、感情が溢れてくるんだから!
「あぁっ!もっ、いきそっ……んんっ!あぁっ、いくっ……!」
「良いよ、イッて」
身体全体を震わせて、ドライでイッてしまった。
「んあぁぁぁっ!んんんっ!!っあぁ!はぁっ、はっ……」
「今度は、出してよ」
続けて中を突かれて、何度も身体がビクビクと震え、力が入る。
「んぁぁあ!やぁっ!はっ、はっ、はぁっんんん!」
言われたからって出せるわけじゃないけれど、ムスコを刺激されたら話は別だ。
兄さんは俺のムスコを扱き始める。
「やぁっ!んんっ、あぁっ、でるっ、あぁっ!で、るっ!」
上の服は手を縛った都合上、脱いでいなかったので……まぁ多少は精液で汚れたかもしれない。
余韻に浸る事なく刺激は続き、直ぐにまた快感の波が押し寄せてくる。
「ひぁっ、ああっ!やっ、んんっ、んんっ!」
「これだけじゃ、足りない?」
何が?何が足りないの?
十分なんですけど!
兄さんは一度動きを止めて、俺のエログッズボックスから電マを取り出し、コードをセットした。
「ま、まって!十分だよ?」
「忘れたの?これは躾だよ」
中を突かれて、射精して……こんな状態で電マなんて無理だって!
電源が入れられて、縛られている俺の片手に手渡される。
「自分で裏筋当てて」
しかも自分でやるの?
練習したし、加減を自分でできるならまだ何とかなるか?
俺はゆっくりと自分のムスコに電マを当てた。
「んんんぁっ!ああっ、はっ、はぁっ!」
やばい!そう思って直ぐに電マを離してしまう。
「離すなって」
兄さんは俺の手を持って、グッと電マを押し当てた。
「ひぃぃぁっ!あぁっ、んんっ、んんんっ、んんんっ!」
むりむり!もう無理だって!
「そのままにしておいて」
兄さんは俺の足を持って、また抽挿を始めた。
「ああっ!まっ!ひぁんんんっ、んんんぁっ!」
呻き声を上げながら快感に耐えるけど、やっぱり電マの刺激が強すぎる!
「むりっ、んんんっ!んんぁっ、はぁぁっ!」
「すごいナカ動いてる」
「あぁぁっ!いぐっ、はぅ、いぃぐぅっ!」
射精と共に身体が跳ね、電マを手から落とした。
足も閉じたいけれど閉じられない。
「まだ、離して良いなんて言ってないよ」
兄さんは腰を打ち付けながら電マを拾うと、俺のムスコの亀頭に当てた。
「あああぁぁっ!んあぁっ!あっ、あぁぁぁあ!ひぃっ、あぁぁぁっ!」
「もう無理?」
腰を動かして逃れようとしたけど、兄さんにのしかかられて動きを制御された。
「はぁっ!あぁっ!ああぁっ、いっ、ぐっ!いぐっ!いっでる!」
もう射精しているのか何なのか分からない。
身体中から変な汗まで出てきて、何かがふわりと駆け抜ける。
「はぁっ、はぁぁっ、はぁっ!」
「出すよ……」
兄さんのペニスが脈打ち、精液が注がれて、やっと中への刺激が止んだ。
それと同時に電マがムスコから離され、また俺に手渡された。
「ほら、これで好きなだけ気持ち良くなって」
「はぁっ……はっ……、もぅ……きもちいぃ、よ……」
「もう?まだ始まったばっかだろ」
そう言うと、兄さんは再び動きを始め、俺の腕を掴んで電マを当てた。
もう無理だって!
「あぁっ、んんぁっ、やっ、もぉやだぁっ!」
「嫌?」
「やだっ、もっ……やっ……あぁっ、むりぃ、むりぃっ!」
首を勢いよく左右に降る。
電マがトラウマになりそうだ。
やっぱり自分でやって感度が上がった気がする。
兄さんは電マの電源を切り、ベッドの脇に置いた。
酷くても良いなんて、自分で誘ったくせにこの様だ。不甲斐無くって涙が出そう……いや出てるかもしれない。
「ごめ、ごめんなさい……」
「はぁ……何が?」
兄さんは盛大にため息を吐いて、俺の中からペニスを抜き、俺はその抜ける快感で身体がピクリと跳ねた。
「自分から、誘ったくせに……うまく、出来なくて……」
一度流れてしまった涙が止まらなくなってしまい、俺は縛られている両手で顔を覆った。
「……あのさ、前にも言ったけど、咲耶が上手く出来る必要ないんだって」
兄さんは膝を立てて頬杖を付き、呆れた様子だった。
「でも……酷くて良いって言ったの俺だし」
「だからって、嫌になるまで我慢されたくないよ。確かに酷くするって言ったけど、本当に嫌な事をして傷つけたい訳じゃないし」
そう言うと兄さんは俺の縛られている手を解放してから、俺のムスコに手を伸ばした。
一瞬触れられて、さっきまで刺激のあったそこは過剰に反応してしまい、隠すように身体を丸めてしまった。
「だから、こうなるまで我慢しないでって言いたいんだよ。なんで俺が拒絶されて傷つく羽目になってんの」
「ご、ごめん……。今のは、反射で……」
「それが1番最悪だ」
ああもう、そんなの俺が1番よくわかってるよ!
兄さんを拒絶したいわけじゃないけど、今身体がそう反応したんだから仕方ないだろ!
「俺だって、兄さんに嫌われたくないし!兄さんの期待に応えたいって、思っちゃって……」
そう言った時、兄さんの機嫌がまた1つ下がった気がする!
止めてくれ、もう俺のライフは0だ!
「何勘違いしてるのか知らないけど、俺が何で怒ってたのか忘れたの?」
兄さんが目を鋭くさせる。
「それは……俺が、ホテル行ったから?」
「そうだよ。好きな人が警戒心も無く他の男とホテル行ったからだよ。俺が、咲耶を好きで怒ってんのに、何で嫌われる心配してるわけ?」
怒気は含んでいるものの、兄さんに好きと言われて、俺の不安だった心が一瞬で晴れる。
何て言葉を出したら良いか分からず、兄さんを見つめることしかできない。
「咲耶は、どうして欲しいの?我慢せずに言ってよ」
兄さんの視線が、優しくなる。
俺がどうして欲しいか?
前にもそれで、優しくしてもらった気がする。
「酷くても良いって言うのは、本当だよ。兄さんになら何されても良いし、躾けて欲しい。けど、上手く出来ないから、ゆっくりして欲しいし、たまには飴も欲しい……」
俺って欲張り?
兄さんにたくさんの欲求をしてしまった。
だけど、これが俺の本心だ。
「そう……」
と、いつもの如く兄さんは短い返事をすると、優しく微笑んだ。
あああ、やっぱりかっこいい。
とか思っていたら、兄さんが覆いかぶさってきて、顔が近いと思ったら……唇に柔らかいものが触れた。
えっ!えっ!
こ、これってまさか!
ちゅーですか?
「下手くそ」
言葉は悪いものの、兄さんの声色は柔らかくって、俺を馬鹿にするようなものじゃなかった。
「だって、初めて……だし」
顔を赤くして、戸惑いながら答える。
「……良いよ、一緒に上手くなれば」
兄さんの指が俺の唇をこじ開けて、歯に指をかけてくる。
ムスコが反応して、兄さんに当たってる気がするのは、無視して欲しい。
「口開けて、舌入れるから」
こ、これはディープキスというやつ?
再び唇が触れて、今度は舌が入って歯をなぞってくる。
「ふぁっ……んっ……」
なに、キスってこんなに興奮するの?なんで?
何も考えられなくなる。
唇が離れて、兄さんは俺の横に横たわった。
「飴になった?」
「甘いよ……」
顔を見るのが恥ずかしくなって、俺は兄さんとは反対を向いてしまう。
「そんなに照れなくても」
後ろから抱きつかれて、首元を舐められた。
「ひぁっ!」
何この激甘モード!やばいって!
「でもそろそろ、良い時間だから風呂入らないと」
「あ、う……うん……」
耳元で囁かないでもらえますか?立てなくなるんですけど!
「何もしないから、一緒に入ろ?」
いやもうこの際何かしてください。
「雅隆さんが1人ってことは、上手く行ったの?」
「さぁどうだろうね?一応お兄さんにも発破かけたけど」
「何て言ったの?」
「可愛くて健気な弟君に少し優しくした方がいいって、アドバイスしたんだよ」
「そしたら何て?」
「ふふっ、思い出しただけでも笑っちゃうよ……」
「気になるんだけど……」
有松から話を聞いて、わざわざお兄さんの目に留まるように、デートの誘いをした甲斐があったというものだ。
『咲耶が可愛いなんて、俺が1番良く知ってるから。他人からそんな言葉聞きたくない』
「セフレだなんて、咲耶くんかなり拗らせてるのかと思っていたけれど、お兄さんも相当だったよ。あの弟にあの兄ありって感じ」
「じゃあ俺は今日上手くいかない方に賭けるかな」
「マスター酷いね。じゃあ上手くいってたら、今日のこの酒は奢りってことで」
「まぁ……咲耶くんに免じてそれでも良いよ」
人の恋愛話を肴に、酒を飲む雅隆さんであった。
兄さんと俺は帰る途中、一言も話さなかったけど、兄さんに掴まれた腕も離してくれなかった。
玄関に上がり、この気まずい空気をどうしたら良いのかと悩む。
雅隆さんは、謝って、告白して……エッチしたら良いって言ってたけれど、そんな簡単な話なのか?
このままリビングに行くか、自分の部屋に逃げるか?
いや、逃げたらせっかくの雅隆さんの犠牲を無駄にする事になる!
意を決して兄さんに声を掛ける。
「兄さん、あの……えっと、さっき言った事なんだけど」
「なに?」
俺を振り返り、兄さんは素っ気なく返す。
「酷い事言ってごめんなさい……」
「どれの事?血の繋がった家族じゃないって言った事?事実だろ」
俺が言った事だし、事実だったとしても、兄さんに言われたらすごく胸が痛かった。
「そうかも知れないけど、でも……」
俺は小さい頃から、兄さんの背中を追いかけて育ったんだ。
「ごめんなさい」
何の言い訳も出来ず、ただ俯いて謝る事しかできなかった。
寒いのに、2人とも玄関から動けない。
「それより咲耶は、俺の事セフレだと思ってるの?」
それよりって、兄さんにとって大事だったのはそこなの?
「分かんない……けど、そんな感じかなって……。あの時は、頭に血が昇ってて、あんまり考えずに言っちゃったから」
「そう……」
だから深く考えないでほしい。
「あと、嫌いって言った事も……謝りたい」
「……気にしてないし、どうでも良いよ」
え?そ、そんな言い方しなくても良いだろ?
兄さんはもう話は無いと言いたげに、階段を上がろうとする。
俺ってそんなに兄さんにとってどうでも良い存在?
だけどその時、雅隆さんに言われた事をもう一度思い出す。
そうだ、告白して……いや、無理だろ!
青くなったり赤くなったり、多分今の俺は相当変な顔付きをしていただろう。
兄さんは階段の途中で止まり、俺の方を振り返った。
目線が5秒程絡み合い、兄さんは口を開けた。
「咲耶が、俺の事どう思っているかなんて、どうでも良いよ。俺が、咲耶の事を好きな事には変わり無いし」
そう言って、2階まで上がって行った。
えっ?
いや、えっ?
今、兄さんが俺の事好きって言った?
どういう好き?それって友達とかに使う好き?
いや、どういう好きでも構わない。兄さんに嫌われていないと分かっただけで、俺はこの先の行動に対する自信を得ることができた!
「ま、待って!」
俺は兄さんを追いかけて、トントンと小刻みよく階段を上がった。
今言わないで、いつ言うんだ?
兄さんが好きだと言ってくれるのなら、俺が言わずに話を終えて良いわけがない。
ドアに手を掛けている兄さんの背中に、俺は勢いよく抱きついた。
「俺も、兄さんの事が好きっ」
言えた!やっと言ってやった!
言葉にしたら簡単で、何でこんなに今までまで時間がかったのか分からない。
まぁ兄さんが先に言葉にしてくれたからなんだけど。
そしてその兄さんの反応はというと……。
「そう……」
………それだけ?
兄さんの感情が動くタイミングが全然わからない!
「咲耶は、好きでもない人に抱かれるの?」
俺が呆然としていると、兄さんがまた不思議な事を言い出した。
「いや、兄さん以外に……抱かれたくないよ……?」
「俺だって、好きでもない人の尻に突っ込みたいなんて思わないし」
俺は兄さんから腕を離し、一歩下がった。
何だろ、嬉しいような?言い方の問題?
そしてこの話は、ずいぶん前におじさんと話した会話な気がした。
ん?それって……
「兄さんは、俺が好きだって分かってたって事?」
「まぁ、そうかなって思ってたよ。オナニーしながら人の名前呼ぶぐらいだし」
それって最初からじゃないか!
「でも、咲耶から抱きついて来て、好きって言われるなんて思っていなかったから、嬉しいよ」
兄さんの頬が緩んだ。かっこいい。
けど、兄さんのその表情は一瞬で、また少し機嫌が悪そうだった。
「だけど、今日のお友達との件は許してないよ。2人でラブホだなんて、舐めてんの?」
前言撤回、少しじゃなかった。
「咲耶が俺に何言おうと許せるけど、他の男とデートして、ラブホ行って、手縛られて……掘ってくださいって言ってるようなもんだよ」
それは、そうかも知れない……。
雅隆さんはそんな事しないと言ったところで、やっている事が事なだけに、何の説得力もない。
「ごめんなさい……」
兄さんがため息を吐いて、再び部屋に入ろうとする。
「だから、今日はそっとしといてくれる?咲耶に優しく出来ない」
せっかく兄さんに好きって言ってもらえて、俺も伝えられたのに?これで今日はお終いなの?
今後は?恋人にしてくれるの?え?
俺にとって、好きって伝えることがゴールだと思っていたけど、まさかのスタートラインにも立てていない!
どうなるの?
「ま、待ってよ……」
兄さんの腕を掴んで、俺は縋りついた。
「優しくなくて良いから、その……ダメ、かな?」
「それは、酷くて良いからエッチしたいって事?」
ストレートな言葉に少しだけ戸惑うけれど、俺は首を縦に振った。
「そう……。まぁ、覚悟できてるなら良いよ」
そう言って、兄さんは自分の部屋ではなく、俺の部屋のドアノブに手を掛けた。
「咲耶はさっき、誰を好きって言った?」
「に、兄さんを好きって、言った」
何だか不穏な空気が漂ってんだけど?
兄さんなんか口角上げてるんだけど?
「それなのに、他の男に抱かれようとしたんだから、躾が必要だと思わない?」
「しつけ……?」
「咲耶は誰のものになりたいの?」
何その質問。
俺は息が荒くなり、ムスコがピクリと反応したのが分かった。
そうだ、この状況に凄く興奮している。
「兄さんのものになりたい」
「だったらやっぱり、可愛い弟にしっかりと罰を与えて、躾しないとな」
雅隆さん、かなりの劇薬だったみたいですよ。
準備を終えて、ベッドに横になった俺は、1つだけ兄さんにお願いをしてみる事にした。
「兄さん、お願いがあるんだけど……」
「なに?」
「縛って欲しい」
兄さんは言葉を詰まらせたが、ベルトを使って俺の腕を拘束した。
なんで皆んなベルト使うの上手なの?
でもやっぱり、兄さんに拘束されるのは凄く興奮する。
「何でお友達と同じ事させるの?」
兄さんの機嫌は、変わらずあまり良くない。
「それは……その、ま……友達にされた時、やっぱりちょっとだけ、怖かったから……」
今、兄さんの前で雅隆さんの名前を出したらダメな気がした。
「……咲耶は、興奮してる?」
「うん……」
兄さんが俺の上に跨り、俺の腕を掴む。
「今、俺が何をしても咲耶は抵抗できないのに?」
それが良いんだよ、とは思っても言わなかった。
「兄さんが、良いから……」
と、代わりに訳の分からない事を言ってしまう。
「そう……。後悔しないでね」
後悔?俺から望んで縛ってもらったのに、後悔なんてしないだろうと、この時の俺は安易に考えていた。
それに気持ちが通じたわけだし、気持ちに余裕があったんだ。
下を全て脱がされ、すぐにローションで下を慣らされる。
「んっ、んんっ……」
だけどいつもと違って、何だが早急な気がする。
前立腺を弄られて気持ち良いんだけど、どちらかといえば穴を柔らかくするように弄られている。
いや、うん……それも気持ち良いんだけどね。
すぐに指が増え、ローションを足され、広げられていく。
とは言え、俺も色々と我慢が出来ない。
それこそ、酷くされても兄さんのペニスを挿入して欲しいんだ!
やっぱり雅隆さんの言った通り、酷くすると言われていても、どこか兄さんを信じている。
それ程、酷くはないはずだって。
既に慣らされた穴に、兄さんのペニスが押し入ろうとしていた。
外でした時よりもローションだって多いし、慣らされてるし!
足を上げられ、奥まで入ってくる。
「んんっ、んんっ……」
「痛い?」
俺は首を横に振った。
多少のキツさはあるが、痛くはない。
「じゃあ、動くよ」
兄さんの腰が上下に動いて、上から勢いよく奥まで突かれる。
「んぁっ、ひぃっ……はぁっ、あぁっ、あぁ……んんっ!」
最初からラストスパートのようで、奥に当たっては快感が身体を駆け抜ける。
「あぁっ、ああっ!きもちぃっ、んんっ、はあっ!」
「ナカ、締めすぎ」
仕方ないだろ!嬉しくて気持ち良くて、感情が溢れてくるんだから!
「あぁっ!もっ、いきそっ……んんっ!あぁっ、いくっ……!」
「良いよ、イッて」
身体全体を震わせて、ドライでイッてしまった。
「んあぁぁぁっ!んんんっ!!っあぁ!はぁっ、はっ……」
「今度は、出してよ」
続けて中を突かれて、何度も身体がビクビクと震え、力が入る。
「んぁぁあ!やぁっ!はっ、はっ、はぁっんんん!」
言われたからって出せるわけじゃないけれど、ムスコを刺激されたら話は別だ。
兄さんは俺のムスコを扱き始める。
「やぁっ!んんっ、あぁっ、でるっ、あぁっ!で、るっ!」
上の服は手を縛った都合上、脱いでいなかったので……まぁ多少は精液で汚れたかもしれない。
余韻に浸る事なく刺激は続き、直ぐにまた快感の波が押し寄せてくる。
「ひぁっ、ああっ!やっ、んんっ、んんっ!」
「これだけじゃ、足りない?」
何が?何が足りないの?
十分なんですけど!
兄さんは一度動きを止めて、俺のエログッズボックスから電マを取り出し、コードをセットした。
「ま、まって!十分だよ?」
「忘れたの?これは躾だよ」
中を突かれて、射精して……こんな状態で電マなんて無理だって!
電源が入れられて、縛られている俺の片手に手渡される。
「自分で裏筋当てて」
しかも自分でやるの?
練習したし、加減を自分でできるならまだ何とかなるか?
俺はゆっくりと自分のムスコに電マを当てた。
「んんんぁっ!ああっ、はっ、はぁっ!」
やばい!そう思って直ぐに電マを離してしまう。
「離すなって」
兄さんは俺の手を持って、グッと電マを押し当てた。
「ひぃぃぁっ!あぁっ、んんっ、んんんっ、んんんっ!」
むりむり!もう無理だって!
「そのままにしておいて」
兄さんは俺の足を持って、また抽挿を始めた。
「ああっ!まっ!ひぁんんんっ、んんんぁっ!」
呻き声を上げながら快感に耐えるけど、やっぱり電マの刺激が強すぎる!
「むりっ、んんんっ!んんぁっ、はぁぁっ!」
「すごいナカ動いてる」
「あぁぁっ!いぐっ、はぅ、いぃぐぅっ!」
射精と共に身体が跳ね、電マを手から落とした。
足も閉じたいけれど閉じられない。
「まだ、離して良いなんて言ってないよ」
兄さんは腰を打ち付けながら電マを拾うと、俺のムスコの亀頭に当てた。
「あああぁぁっ!んあぁっ!あっ、あぁぁぁあ!ひぃっ、あぁぁぁっ!」
「もう無理?」
腰を動かして逃れようとしたけど、兄さんにのしかかられて動きを制御された。
「はぁっ!あぁっ!ああぁっ、いっ、ぐっ!いぐっ!いっでる!」
もう射精しているのか何なのか分からない。
身体中から変な汗まで出てきて、何かがふわりと駆け抜ける。
「はぁっ、はぁぁっ、はぁっ!」
「出すよ……」
兄さんのペニスが脈打ち、精液が注がれて、やっと中への刺激が止んだ。
それと同時に電マがムスコから離され、また俺に手渡された。
「ほら、これで好きなだけ気持ち良くなって」
「はぁっ……はっ……、もぅ……きもちいぃ、よ……」
「もう?まだ始まったばっかだろ」
そう言うと、兄さんは再び動きを始め、俺の腕を掴んで電マを当てた。
もう無理だって!
「あぁっ、んんぁっ、やっ、もぉやだぁっ!」
「嫌?」
「やだっ、もっ……やっ……あぁっ、むりぃ、むりぃっ!」
首を勢いよく左右に降る。
電マがトラウマになりそうだ。
やっぱり自分でやって感度が上がった気がする。
兄さんは電マの電源を切り、ベッドの脇に置いた。
酷くても良いなんて、自分で誘ったくせにこの様だ。不甲斐無くって涙が出そう……いや出てるかもしれない。
「ごめ、ごめんなさい……」
「はぁ……何が?」
兄さんは盛大にため息を吐いて、俺の中からペニスを抜き、俺はその抜ける快感で身体がピクリと跳ねた。
「自分から、誘ったくせに……うまく、出来なくて……」
一度流れてしまった涙が止まらなくなってしまい、俺は縛られている両手で顔を覆った。
「……あのさ、前にも言ったけど、咲耶が上手く出来る必要ないんだって」
兄さんは膝を立てて頬杖を付き、呆れた様子だった。
「でも……酷くて良いって言ったの俺だし」
「だからって、嫌になるまで我慢されたくないよ。確かに酷くするって言ったけど、本当に嫌な事をして傷つけたい訳じゃないし」
そう言うと兄さんは俺の縛られている手を解放してから、俺のムスコに手を伸ばした。
一瞬触れられて、さっきまで刺激のあったそこは過剰に反応してしまい、隠すように身体を丸めてしまった。
「だから、こうなるまで我慢しないでって言いたいんだよ。なんで俺が拒絶されて傷つく羽目になってんの」
「ご、ごめん……。今のは、反射で……」
「それが1番最悪だ」
ああもう、そんなの俺が1番よくわかってるよ!
兄さんを拒絶したいわけじゃないけど、今身体がそう反応したんだから仕方ないだろ!
「俺だって、兄さんに嫌われたくないし!兄さんの期待に応えたいって、思っちゃって……」
そう言った時、兄さんの機嫌がまた1つ下がった気がする!
止めてくれ、もう俺のライフは0だ!
「何勘違いしてるのか知らないけど、俺が何で怒ってたのか忘れたの?」
兄さんが目を鋭くさせる。
「それは……俺が、ホテル行ったから?」
「そうだよ。好きな人が警戒心も無く他の男とホテル行ったからだよ。俺が、咲耶を好きで怒ってんのに、何で嫌われる心配してるわけ?」
怒気は含んでいるものの、兄さんに好きと言われて、俺の不安だった心が一瞬で晴れる。
何て言葉を出したら良いか分からず、兄さんを見つめることしかできない。
「咲耶は、どうして欲しいの?我慢せずに言ってよ」
兄さんの視線が、優しくなる。
俺がどうして欲しいか?
前にもそれで、優しくしてもらった気がする。
「酷くても良いって言うのは、本当だよ。兄さんになら何されても良いし、躾けて欲しい。けど、上手く出来ないから、ゆっくりして欲しいし、たまには飴も欲しい……」
俺って欲張り?
兄さんにたくさんの欲求をしてしまった。
だけど、これが俺の本心だ。
「そう……」
と、いつもの如く兄さんは短い返事をすると、優しく微笑んだ。
あああ、やっぱりかっこいい。
とか思っていたら、兄さんが覆いかぶさってきて、顔が近いと思ったら……唇に柔らかいものが触れた。
えっ!えっ!
こ、これってまさか!
ちゅーですか?
「下手くそ」
言葉は悪いものの、兄さんの声色は柔らかくって、俺を馬鹿にするようなものじゃなかった。
「だって、初めて……だし」
顔を赤くして、戸惑いながら答える。
「……良いよ、一緒に上手くなれば」
兄さんの指が俺の唇をこじ開けて、歯に指をかけてくる。
ムスコが反応して、兄さんに当たってる気がするのは、無視して欲しい。
「口開けて、舌入れるから」
こ、これはディープキスというやつ?
再び唇が触れて、今度は舌が入って歯をなぞってくる。
「ふぁっ……んっ……」
なに、キスってこんなに興奮するの?なんで?
何も考えられなくなる。
唇が離れて、兄さんは俺の横に横たわった。
「飴になった?」
「甘いよ……」
顔を見るのが恥ずかしくなって、俺は兄さんとは反対を向いてしまう。
「そんなに照れなくても」
後ろから抱きつかれて、首元を舐められた。
「ひぁっ!」
何この激甘モード!やばいって!
「でもそろそろ、良い時間だから風呂入らないと」
「あ、う……うん……」
耳元で囁かないでもらえますか?立てなくなるんですけど!
「何もしないから、一緒に入ろ?」
いやもうこの際何かしてください。
「雅隆さんが1人ってことは、上手く行ったの?」
「さぁどうだろうね?一応お兄さんにも発破かけたけど」
「何て言ったの?」
「可愛くて健気な弟君に少し優しくした方がいいって、アドバイスしたんだよ」
「そしたら何て?」
「ふふっ、思い出しただけでも笑っちゃうよ……」
「気になるんだけど……」
有松から話を聞いて、わざわざお兄さんの目に留まるように、デートの誘いをした甲斐があったというものだ。
『咲耶が可愛いなんて、俺が1番良く知ってるから。他人からそんな言葉聞きたくない』
「セフレだなんて、咲耶くんかなり拗らせてるのかと思っていたけれど、お兄さんも相当だったよ。あの弟にあの兄ありって感じ」
「じゃあ俺は今日上手くいかない方に賭けるかな」
「マスター酷いね。じゃあ上手くいってたら、今日のこの酒は奢りってことで」
「まぁ……咲耶くんに免じてそれでも良いよ」
人の恋愛話を肴に、酒を飲む雅隆さんであった。
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