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番外編
※55の続き
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「レイリンのドレスは本当に綺麗だった」
元天帝はその時の情景を思い出しながら、夢見心地だった。
「いつまで言っているのですか?同じ話を繰り返す老人のようですよ」
夕飯の支度をしながら魔王様はチラリと、壁にもたれて立っている元天帝に目をやった。
結婚式を挙げてから1ヶ月、2人きりの時間が増えて、元天帝は幸せを噛み締めていた。
「レイリンがご飯を用意してくれると、本当に夫婦だなって実感するよ」
元天帝の目尻は下がりきっていた。
そんな元天帝の姿に、魔王様も殊更言うこともなく、微笑んで眺めているだけだった。
「あ、そろそろ良い時間ですね」
パンの入っているバスケットを元天帝に渡した。
出来上がったのは、肉と野菜のスープだ。
肉の周りを焼いた後に、じっくりと野菜と煮込み、柔らかく仕上げてある。
2人分を器に盛って、魔王様は食堂へ運んだ。
元天帝はその後に続き、魔王様の右隣に座る。
「頂きます」
2人は手を合わせて、魔王様の用意した食事を食べ始めた。
「レイリン、お湯の準備が出来たよ」
食事が終わり、お茶を飲んでいた魔王様に元天帝が声をかけた。
特に理由が無ければ2人は行動を共にしており、それは湯浴みも例外ではなかった。
「ありがとうございます」
魔王様は、飲んでいたカップを片付けてから、元天帝について浴場へ向かった。
石でできた大きな浴槽には、たっぷりのお湯が張ってあり、そのそばで元天帝は立って待っていた。
「レイリン」
元天帝は魔王様の腰帯を解き、1枚1枚、順に服を脱がしていった。
「良い身体しているよね」
その身体には情事の跡がくっきりと、数多く残っている。
元天帝はその痕をなぞる様に、胸や背中に手を滑らせて、首元に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。
魔王様はその仕草で思い当たる事を訊いてみた。
「まさか、ここでしたいのですか?」
「だめ?」
「だめです。ここはリタも使うのですよ?」
「綺麗にしておくよ」
元天帝は懇願するが、あまり手応えを感じなかった。
「だめです。部屋まで我慢してください」
魔王様は元天帝をあしらい、湯に浸かると大きく息を吐いた。
「気持ちいいです」
元天帝も服を全て脱ぎ、髪を束ねている紐も外し、ちゃぽんと音を立てて魔王様の隣に座った。
「ねぇ、2人でこのまま魔王城で暮らすのもいいけれど、旅行もしたいな」
元天帝は、魔王様の髪で遊び、口づけを落とした。
魔王様はゆっくりと目を開けて、呆けながら答えた。
「そうですね、行きましょうか。まずは人間界の色んな所で食事がしたいです」
魔王様は想像して、楽しそうにちゃぽちゃぽと足をバタつかせた。
元天帝は誰にも邪魔されずに魔王様を独り占めできれば、どこでも良かった。
「それなら明日にでも行こう」
「それはまた急ですね。構いませんが……」
魔王様は元天帝に甘かった。
返事を聞いて更に気分の良くなった元天帝は、もう一度訊いてみることにした。
身体を寄せて、両腕で魔王様を抱き込む。
「ねぇ、しばらくここへは戻ってこないわけだし、一度ぐらいここでしても良いんじゃない?」
魔王様の首筋に口付けし、肩に頭を乗せる。
魔王様は僅かに眉間に皺を作って言った。
「1回だけですよ」
魔王様は元天帝には甘かった。
浴室の壁に手をついて、後ろから突き上げられる姿は、なんとも惨めなんだと、魔王様は冷静になった時に思う事だろう。
だが、情事の最中はそんなことよりも、快感に身体を委ねることの方が大事だった。
声を出すことも、素直になることも、元天帝に教え込まれて来た魔王様は、あられもない声で髪を踊らせながら泣き叫いている。
「あぁっ!気持ちいい、ですっ……そこっ……あっ!あぁぁっ!」
強すぎる快感を逃したくなくて必死に腰を上げるが、力がどんどん抜けていく。
元天帝はそんな魔王様の腰をしっかりと支え、腰を前後に激しく振っている。
魔王様の濡れた肌や響く声は、元天帝の征服欲を満たし、腰を動かす原動力となる。
「レイリン。可愛いよ、愛している」
「あっ、ランシュエっ!愛しています」
魔王様も必死になって答え、気持ちが昂ったところで、2人一緒に果てた。
「はぁっ……はぁっ……抜いてください」
元天帝は1回の約束を守り、中から引き抜き、魔王様を抱きしめた。
「今、最高に幸せだ」
上辺だけでないその言葉に、魔王様も心が暖かくなる感覚に浸った。
大袈裟と言えばそうなのだが、強まる腕を拒絶することなく手を重ねて、魔王様も言葉を発した。
「私も、幸せです」
その後、汚れた部分を洗い流し、元天帝は言った通りに浴室を綺麗にした。
ベッドに戻ってから、もう1戦行ったとか。
元天帝はその時の情景を思い出しながら、夢見心地だった。
「いつまで言っているのですか?同じ話を繰り返す老人のようですよ」
夕飯の支度をしながら魔王様はチラリと、壁にもたれて立っている元天帝に目をやった。
結婚式を挙げてから1ヶ月、2人きりの時間が増えて、元天帝は幸せを噛み締めていた。
「レイリンがご飯を用意してくれると、本当に夫婦だなって実感するよ」
元天帝の目尻は下がりきっていた。
そんな元天帝の姿に、魔王様も殊更言うこともなく、微笑んで眺めているだけだった。
「あ、そろそろ良い時間ですね」
パンの入っているバスケットを元天帝に渡した。
出来上がったのは、肉と野菜のスープだ。
肉の周りを焼いた後に、じっくりと野菜と煮込み、柔らかく仕上げてある。
2人分を器に盛って、魔王様は食堂へ運んだ。
元天帝はその後に続き、魔王様の右隣に座る。
「頂きます」
2人は手を合わせて、魔王様の用意した食事を食べ始めた。
「レイリン、お湯の準備が出来たよ」
食事が終わり、お茶を飲んでいた魔王様に元天帝が声をかけた。
特に理由が無ければ2人は行動を共にしており、それは湯浴みも例外ではなかった。
「ありがとうございます」
魔王様は、飲んでいたカップを片付けてから、元天帝について浴場へ向かった。
石でできた大きな浴槽には、たっぷりのお湯が張ってあり、そのそばで元天帝は立って待っていた。
「レイリン」
元天帝は魔王様の腰帯を解き、1枚1枚、順に服を脱がしていった。
「良い身体しているよね」
その身体には情事の跡がくっきりと、数多く残っている。
元天帝はその痕をなぞる様に、胸や背中に手を滑らせて、首元に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。
魔王様はその仕草で思い当たる事を訊いてみた。
「まさか、ここでしたいのですか?」
「だめ?」
「だめです。ここはリタも使うのですよ?」
「綺麗にしておくよ」
元天帝は懇願するが、あまり手応えを感じなかった。
「だめです。部屋まで我慢してください」
魔王様は元天帝をあしらい、湯に浸かると大きく息を吐いた。
「気持ちいいです」
元天帝も服を全て脱ぎ、髪を束ねている紐も外し、ちゃぽんと音を立てて魔王様の隣に座った。
「ねぇ、2人でこのまま魔王城で暮らすのもいいけれど、旅行もしたいな」
元天帝は、魔王様の髪で遊び、口づけを落とした。
魔王様はゆっくりと目を開けて、呆けながら答えた。
「そうですね、行きましょうか。まずは人間界の色んな所で食事がしたいです」
魔王様は想像して、楽しそうにちゃぽちゃぽと足をバタつかせた。
元天帝は誰にも邪魔されずに魔王様を独り占めできれば、どこでも良かった。
「それなら明日にでも行こう」
「それはまた急ですね。構いませんが……」
魔王様は元天帝に甘かった。
返事を聞いて更に気分の良くなった元天帝は、もう一度訊いてみることにした。
身体を寄せて、両腕で魔王様を抱き込む。
「ねぇ、しばらくここへは戻ってこないわけだし、一度ぐらいここでしても良いんじゃない?」
魔王様の首筋に口付けし、肩に頭を乗せる。
魔王様は僅かに眉間に皺を作って言った。
「1回だけですよ」
魔王様は元天帝には甘かった。
浴室の壁に手をついて、後ろから突き上げられる姿は、なんとも惨めなんだと、魔王様は冷静になった時に思う事だろう。
だが、情事の最中はそんなことよりも、快感に身体を委ねることの方が大事だった。
声を出すことも、素直になることも、元天帝に教え込まれて来た魔王様は、あられもない声で髪を踊らせながら泣き叫いている。
「あぁっ!気持ちいい、ですっ……そこっ……あっ!あぁぁっ!」
強すぎる快感を逃したくなくて必死に腰を上げるが、力がどんどん抜けていく。
元天帝はそんな魔王様の腰をしっかりと支え、腰を前後に激しく振っている。
魔王様の濡れた肌や響く声は、元天帝の征服欲を満たし、腰を動かす原動力となる。
「レイリン。可愛いよ、愛している」
「あっ、ランシュエっ!愛しています」
魔王様も必死になって答え、気持ちが昂ったところで、2人一緒に果てた。
「はぁっ……はぁっ……抜いてください」
元天帝は1回の約束を守り、中から引き抜き、魔王様を抱きしめた。
「今、最高に幸せだ」
上辺だけでないその言葉に、魔王様も心が暖かくなる感覚に浸った。
大袈裟と言えばそうなのだが、強まる腕を拒絶することなく手を重ねて、魔王様も言葉を発した。
「私も、幸せです」
その後、汚れた部分を洗い流し、元天帝は言った通りに浴室を綺麗にした。
ベッドに戻ってから、もう1戦行ったとか。
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