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テンプレ物語にも終わりはくる1

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 卒業パーティーが刻一刻と迫っている。明日はもう、待ちに待った卒業パーティーだ。

 ゼダウス婚約破棄をした当初は、エスコートする相手がいない、と言う理由でその日を遠くに遠ざけてしまいたい気持ちでいっぱいだった。

 だが、今のノーチェはエスコート役が立派すぎる、と言う全く反対の理由でパーティーを遠ざけてしまいたい気持ちになっている。
 明日、ノーチェのエスコートをするのはこの国の王子なのだから。

 ノーチェは未だ、王子と面と向かって会ったことはない。急に婚約者として選出されてしまったのでそんな暇が、全くなかったのだ。

 ノーチェの王妃教育は、ジーナの尽力もあり、王子の隣に立っても見劣りしない出来に仕上がっていた。

 作法ももちろんだが、空いた時間は今まで以上に勉学に励むことができたので、卒業前の期末テストでは今までにとったことのない点数を取ることができた。

 そのことがあまりにも嬉しく、ジーナにも伝えたくなったノーチェはまるで犬のように駆け寄る。

「ジーナ様! 私、初めてテストで一位になりましたわ!」
「すごいじゃないか! ノーチェ。やっぱり君は勉強ができる子なんだなあ」

 ジーナは優しく、ノーチェの頭を撫でてくれた。テストで一位になると言うことは、同学年に在籍しているジーナや王子でさえ、抜かしてしまったと言うことになる。
 だが、ジーナはそれを気にするような仕草は見せず、手放しに喜んでくれた。

 そのことがテストで一位になったこと以上に嬉しくてたまらなかった。
 以前、ゼダウスに“自分よりいい順位をとるな”と言われたことがある。ノーチェにとっては自分の得意分野で頑張った結果を婚約者に知らせただけだったが、ゼダウスにとっては自分のプライドをへし折ることにつながってしまったのだろう。しかしゼダウスに言われた言葉は一種のトラウマとなり、ノーチェを縛っていた。
 ジーナも彼と同じことを言うのだろうか。密かに試してみたい気持ちがあったのだ。

 もちろん、ジーナはそんなことは一切気にしないし、むしろ王子の相手となるのだから、王子を補えるくらい賢い方が望ましいと言う考えだった。

 ふふふ、ふふふ、といつまでも笑いが止まらないノーチェを見て、ジーナは嬉しそうにつぶやく。
 
「ノーチェはかわいいね」

 溢れるような本音が混じった言い方だった。

「え?」

 その言葉にノーチェ自分でもびっくりするほど、胸がときめいた。どんどん顔が赤くなる。最近は王子の伴侶として、感情を表に出さないためのトレーニングも行っているのに、それが全く役に立たないくらい、真っ赤になってしまう。

(ジーナ様は心優しい方だし、このかわいい、は飼っている犬猫に言うかわいいとさして変わらないはずよ! 落ち着くのよ! 私!)

 心を鎮めようとすればするほど、もどかしくてたまらなくなる。

 最近のノーチェはおかしい。

 ノーチェの王妃教育は明日に迫り、もう時間がないため、結構なキツキツなハードスケジュールで進められている。
 それに根を上げずについていこうと思えるのは、ジーナにいつも褒めてもらえるからだった。

 ずっと誰かに自分の頑張りを認めて欲しかったノーチェにとって、どんな些細なことでも褒めてくれるジーナは最高の先生役だった。

 しかも、ノーチェはジーナに憧れていたのだ。

 ジーナは王の婚約者役をするために、人知れず努力をしてきた人だ。そんなどこか、自分と共通点を感じる人だと知ったとき、憧れと好意は今まで以上に高まった。

 憧れの人少しの微笑み、嬉しそうな声。
 それがあれば、どんなことだって頑張れると思える程にはジーナのことを慕っていた。

 だからこそ、ノーチェは今の幸せに浸っていたくて、先のことをあまり深く考えないようにしていた。

「そうだ。今日はノーチェと打ち合わせをすることがあるんだ」

 そう、ジーナから言われた時、なぜか心の中が水が流れ込んだように冷たくなった。


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