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いらないものは捨てましょう3

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 ゼダウスはどう見ても怒っているジーナの顔を見て、ぎょっと目を見開く。

「ジ、ジーナ様! 今日もお美しい……」
「御託は結構。わたくしたち、これから大事な用があるの。邪魔しないでくれる?」

 ジーナは持っていた扇子でビシリとゼダウスの腕を叩いた。力具合は容赦なかったようで、鋭い良い音がバラ園中に響き渡る。

「うっ……! しかし、彼女は私に言いたいことがあるようなのです。彼女は私の昔の婚約者なのですが、私にまだ未練があるようなのです」
「ほおう? 未練ねえ」

 ジーナはしもべを叱る、女王様のような発音で言った。

「本当に未練なんかあるのかしら?」

 ジーナがノーチェの方をチラリと見た。ノーチェにはもちろん未練なんてこれっぽっちもないので、ぶんぶんと首を振る。
 その様子を見た、ジーナは口角を上げた。

「ノーチェ。はっきりと言ってやりなさい。こういう勘違い野郎はきちんと言わないと永遠に勘違いしたままなのよ」 

 ジーナが後押しに勇気づけられ、ノーチェは今まで言えなかった本音を話し始める。

「我が家は本当に困窮していて……。あなたと婚約することであなたの実家が融資をしてくれると聞いて、本当に救われる思いだったの。これでお金の心配はしなくて良いって。だけど、あなたに婚約破棄をされてしまった……。私は本当に困ってしまったわ。これからどうやってお金を用意しようって……」

 ぽつりぽつりと言いにくそうに語られる言葉には、お金のないノーチェの困窮具合がありありと織り込まれていた。

「それで私はまたお金の心配をして……。ねえ、気がついた? 私一度もこの婚約破棄であなた自身のことを考えたりしていないの。考えているのはお金の心配ばかり。
 私、あなた自身のことはちっとも好きじゃなかったの。ごめんなさいっ!」

 ジーナは今まで心のうちに仕舞い込んでいた本当の気持ちを目を瞑りながら一息で言い切った。

 目を開けると、信じられないと言う表情をして脱力したゼダウスがこちらを見ていた。ゼダウスは自分が男性として魅力的だからではなく、ただの金蔓として求められていたことに唖然としていた。一緒に過ごしている時はゼダウスに好かれるようしおらしい姿を見せていたので、うまいこと誤解してくれていたのだろうが、ノーチェは家のことしか心配していない、守銭奴的なところがある。

「よかったわね。ノーチェ。あなたはちゃんといらないものを捨てられたのよ」
「そうですね。いらないものは捨てましょう!」
「こんな男はここに置いておいて、やっぱり今日は温室の方で食事を食べましょう?」
「はいっ! ジーナ様!」

 二人は軽やかな足取りで、バラ園を後にした。


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