22 / 31
いらないものは捨てましょう3
しおりを挟む
ゼダウスはどう見ても怒っているジーナの顔を見て、ぎょっと目を見開く。
「ジ、ジーナ様! 今日もお美しい……」
「御託は結構。わたくしたち、これから大事な用があるの。邪魔しないでくれる?」
ジーナは持っていた扇子でビシリとゼダウスの腕を叩いた。力具合は容赦なかったようで、鋭い良い音がバラ園中に響き渡る。
「うっ……! しかし、彼女は私に言いたいことがあるようなのです。彼女は私の昔の婚約者なのですが、私にまだ未練があるようなのです」
「ほおう? 未練ねえ」
ジーナはしもべを叱る、女王様のような発音で言った。
「本当に未練なんかあるのかしら?」
ジーナがノーチェの方をチラリと見た。ノーチェにはもちろん未練なんてこれっぽっちもないので、ぶんぶんと首を振る。
その様子を見た、ジーナは口角を上げた。
「ノーチェ。はっきりと言ってやりなさい。こういう勘違い野郎はきちんと言わないと永遠に勘違いしたままなのよ」
ジーナが後押しに勇気づけられ、ノーチェは今まで言えなかった本音を話し始める。
「我が家は本当に困窮していて……。あなたと婚約することであなたの実家が融資をしてくれると聞いて、本当に救われる思いだったの。これでお金の心配はしなくて良いって。だけど、あなたに婚約破棄をされてしまった……。私は本当に困ってしまったわ。これからどうやってお金を用意しようって……」
ぽつりぽつりと言いにくそうに語られる言葉には、お金のないノーチェの困窮具合がありありと織り込まれていた。
「それで私はまたお金の心配をして……。ねえ、気がついた? 私一度もこの婚約破棄であなた自身のことを考えたりしていないの。考えているのはお金の心配ばかり。
私、あなた自身のことはちっとも好きじゃなかったの。ごめんなさいっ!」
ジーナは今まで心のうちに仕舞い込んでいた本当の気持ちを目を瞑りながら一息で言い切った。
目を開けると、信じられないと言う表情をして脱力したゼダウスがこちらを見ていた。ゼダウスは自分が男性として魅力的だからではなく、ただの金蔓として求められていたことに唖然としていた。一緒に過ごしている時はゼダウスに好かれるようしおらしい姿を見せていたので、うまいこと誤解してくれていたのだろうが、ノーチェは家のことしか心配していない、守銭奴的なところがある。
「よかったわね。ノーチェ。あなたはちゃんといらないものを捨てられたのよ」
「そうですね。いらないものは捨てましょう!」
「こんな男はここに置いておいて、やっぱり今日は温室の方で食事を食べましょう?」
「はいっ! ジーナ様!」
二人は軽やかな足取りで、バラ園を後にした。
「ジ、ジーナ様! 今日もお美しい……」
「御託は結構。わたくしたち、これから大事な用があるの。邪魔しないでくれる?」
ジーナは持っていた扇子でビシリとゼダウスの腕を叩いた。力具合は容赦なかったようで、鋭い良い音がバラ園中に響き渡る。
「うっ……! しかし、彼女は私に言いたいことがあるようなのです。彼女は私の昔の婚約者なのですが、私にまだ未練があるようなのです」
「ほおう? 未練ねえ」
ジーナはしもべを叱る、女王様のような発音で言った。
「本当に未練なんかあるのかしら?」
ジーナがノーチェの方をチラリと見た。ノーチェにはもちろん未練なんてこれっぽっちもないので、ぶんぶんと首を振る。
その様子を見た、ジーナは口角を上げた。
「ノーチェ。はっきりと言ってやりなさい。こういう勘違い野郎はきちんと言わないと永遠に勘違いしたままなのよ」
ジーナが後押しに勇気づけられ、ノーチェは今まで言えなかった本音を話し始める。
「我が家は本当に困窮していて……。あなたと婚約することであなたの実家が融資をしてくれると聞いて、本当に救われる思いだったの。これでお金の心配はしなくて良いって。だけど、あなたに婚約破棄をされてしまった……。私は本当に困ってしまったわ。これからどうやってお金を用意しようって……」
ぽつりぽつりと言いにくそうに語られる言葉には、お金のないノーチェの困窮具合がありありと織り込まれていた。
「それで私はまたお金の心配をして……。ねえ、気がついた? 私一度もこの婚約破棄であなた自身のことを考えたりしていないの。考えているのはお金の心配ばかり。
私、あなた自身のことはちっとも好きじゃなかったの。ごめんなさいっ!」
ジーナは今まで心のうちに仕舞い込んでいた本当の気持ちを目を瞑りながら一息で言い切った。
目を開けると、信じられないと言う表情をして脱力したゼダウスがこちらを見ていた。ゼダウスは自分が男性として魅力的だからではなく、ただの金蔓として求められていたことに唖然としていた。一緒に過ごしている時はゼダウスに好かれるようしおらしい姿を見せていたので、うまいこと誤解してくれていたのだろうが、ノーチェは家のことしか心配していない、守銭奴的なところがある。
「よかったわね。ノーチェ。あなたはちゃんといらないものを捨てられたのよ」
「そうですね。いらないものは捨てましょう!」
「こんな男はここに置いておいて、やっぱり今日は温室の方で食事を食べましょう?」
「はいっ! ジーナ様!」
二人は軽やかな足取りで、バラ園を後にした。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる