悪役令嬢が男だった場合のハッピーエンドルート

菜っぱ

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これは得意なやつかもしれない3

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 ジーナは出来る限りをノーチェに教え込んでいく。
 ノーチェもジーナの教えを貪欲に吸い込んでいく。

 二人は性別は違っていたが理想の子弟関係を築けるようになっていた。

「ジーナ様は私が覚えが良いと言ってくださいますがジーナ様の教え方がわたくしを素敵なレディに仕立ててしまうくらい素晴らしいのですよ」
「え?」

 目を見開いた時ジーナにノーチェは微笑みながら告げた。

「ジーナ様は私をたくさん褒めてくださいますもの。私……ここにくるまで、あまり褒められたりしてなかったんだな……と今になって気づいたのです」

 ノーチェの父は男爵家を共に支えてくれたノーチェに感謝はしていたが、それが当たり前になっていくうちに、親子間の関係は、父と娘ではなく、共に家を支える戦友に成り代わっていた。
 父に頼られている……。それを嬉しく思うのと同時にノーチェは寂しさを覚えていた。周りのご令嬢は学校でいい成績を取るだけで褒めてもらえていた。しかし、自分は特待生になれる成績を修めて、かつ家業も手伝っても、それがスタンダードで誰にも褒めてもらえない。

 多分、みんな麻痺してしまったのだろう。

 ノーチェが努力して、努力してなんとか功績を積み上げていることを忘れて、それが当たり前になってしまった。

 そんなノーチェにとって、姿勢をよく保っただけで褒めてくれる、ジーナは神様のような存在だった。

「誰かが、自分を褒めてくれるってすごく、尊いことですよね。当たり前ではないのです」

 ジーナの口が、ああ君もか、と動いた気がした。

「私も同じように褒められることなんてなかったからね。自分がやって欲しかったことを人に積極的にやるようにしてるんだよ」

(ああ。ジーナ様も同じように努力をしてきた方だもの……)

 きっと、悪役に徹するということ……しかも性別偽ってまでそれを完遂させるためには並大抵の努力ではなし得ないだろう。

 それを息を吸うように、いとも簡単になし得ているように見せかけているのだ。

「ジーナ様、日々いろんなことを教えてくださってありがとうございます」
「唐突だね」

 ジーナは困ったように顔をクシャリとさせた。
 どうしてか瞳の奥が泣きそうに見える。

「私、何もできませんから、人に感謝することはとっても得意なんですよ」

 ジーナはその言葉に息を飲む。

 王族という立場は、国民への感謝がなければ、成り立たない。権力を振りかざすような人間には務まらないのだ。

 それが、自然にできているノーチェは……。信じられないくらい王妃向きの性格なのだ。

 やはり……。自分の人選に間違いはなかった。

「それは王妃になるに当たって一番大事な心構えかもしれないね」
 
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