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鬼の指導かと思ったらご褒美だった3
しおりを挟むまあ、結論を言えば、そんな心配はしなくてもよかったのだが。
__ノーチェの目の前には見たことのない御馳走が並んでいた。
案内された、食事室には事前に連絡が入っていたのか、二人分の席が用意されていた。
ハーブで香り付けが施された鶏肉のグリル、天の川のように美しくソースで飾りづけされたオードブル、宝石のように輝く果物……。
テーブルにのりきらないほど大量の料理が、机に並べられていく様子を見て、ノーチェは目を輝かせた。
「美を保つためには、栄養バランスが大切。さ、これも食べて」
そう言って手渡されたサラダには瑞々しい野菜たちが彩りよく乗せられていた。それはノーチェが日頃食べている、しなびたきゅうりとは比べ物にならない輝きを放っていた。
「こ、これは……素晴らしいですけど……。どうしてこんなにも?」
「王のご好意で料理人も王城からこちらに派遣されているからね。どれも美味しいでしょう?」
と言うことはここに並ぶ料理は宮廷料理人の料理なのか……。そう思うとこの美味しさも納得である。ノーチェはもう二度と味わえないかもしれない料理たちの味を堪能しようと心に決め、その料理たちに手を伸ばした。
「ほら、鶏肉。美容にいいからこれも、あとアボカドも! 豆のスープも体があったまるから食べて!」
その後もジーナは見たこともない美味しそうなものをたくさんお皿に乗せてくれた。それをノーチェはワンコ蕎麦のように頂いていたが小食に慣れた小さな胃袋はすぐに限界を迎える。
ジーナはまだ食べて欲しそうな目でノーチェをじっと見たが、苦しそうなノーチェの様子を見て無理強いはしなかった。
「久しぶりにたくさん食べました……。しばらく動けそうにありません」
満腹を感じたのはいつぶりだろう。ノーチェはお腹いっぱいになったことで多幸感に包まれていた。
どうして自分は校内で有名な悪役令嬢様にお茶をぶちまけてこんなに美味しいお料理を食べているんだろう。意味がわからない展開だけれども、幸運だったと割り切ってこの幸福を噛み締めるのが正解なのだろう。
ノーチェはまだ混乱しているが、状況を必死に受け入れようとしていた。
しかし、訳のわからない展開は続くのだ。
「そうだね……。でも私は君の体質改善のためにも毎日ご飯を食べさせるからね。
そうだ! 毎日通うのもきっと大変だろうからここに住んだら? 部屋も余っているし!」
「はあ⁉︎」
驚きのあまり、ノーチェは淑女らしからぬ野蛮な声を出してしまった。
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