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チャンスかもしれないし試練かもしれない3
しおりを挟むえ? 以上の言葉が出ない。当たり前だろう。なんでこんな展開になったのだろう。ノーチェは今までに経験したことのないほどに混乱していた。
その混乱は婚約者であったゼダウスに婚約破棄をされた衝撃を大きく上回る。
「今までいろんな女を見て、王子にふさわしい人間か精査してきた。
ただ周りにはろくな人間がいなくてな。
今まで見た女の中でお前が一番まともに見える」
まとも、というのはどういう基準なのだろう。ノーチェは困ってしまったが、そういえば王子の周りに近づく女子生徒たちは粘着質で、パッと見ただけでもめんどくさいな、と思ってしまうようなタイプが多かった気がする。
「でもわたくしは婚約破棄されたような人間ですよ?」
自分に自信が持てないノーチェはおずおずと絞り出すように声を発した。
「破棄した男は見る目がなかったんだな。アンタは磨けば光るよ。十分かわいい」
そんな少し恥ずかしいくらいの言葉をジーナは真っ直ぐにノーチェを見ながら、真面目な顔をして言い放つ。
その言葉にノーチェは思わずどきっとしてしまった。
ノーチェは婚約者にもかわいいと言われたことがなかった。
ちゃんと家のことを考えられるノーチェはしっかりものだ、と言われたことはたくさんあった。だがそれは、男爵家の子女としての振る舞いを褒められただけだ。
誰もノーチェを女の子として見てくれたことはなかった。
(やだ……。頬赤くなってないよね)
急な褒め言葉にノーチェは赤面してしまう。
「俺が王妃に仕立てるんだから、完璧な王妃様に仕立ててやるよ」
「え……」
「タイムリミットは婚約破棄まで、それまでにアンタを王妃様に見立てるんだ」
嫌な予感しかしない。ジーナの方を見れば、ハッとするほど美しくも、同時に凶悪に見えるほほえみを浮かべている。
まるで、彼女が婚約者として王子の周りにいる女の子を弾糾する時のような恐ろしい笑顔だ。
これから何が始まるんだろう……。想像もつかないが、もう逃れることはできない。これを逃せば、もう二度とチャンスはないだろう。どうなったって言い。それで家が助かるならノーチェはどんな試練でも受け入れる覚悟を決めた。
「お手柔らかにお願いいたします……」
消えそうな声でノーラは力なく返事をした。
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