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チャンスかもしれないし試練かもしれない2
しおりを挟む「そうか……。それはお気の毒だったね……」
全ての説明を聴き終わったジーナはノーチェの近況に深く同情してくれた。
時期も、状況も全てが全て間が悪い。ノーチェも話しながら、自分の悪運の強さに項垂れてしまった。
「もうこうなったら、家が取り潰しになることは避けられません。私、ジーナ様に憧れていたんです。いつも凛としていて、華やかで……私とは全然違って」
一言、二言、紡ぐように思いを口にする。それを聞いたジーナは驚いた顔をしてしまう。
嫌われ役だと思っていた自分に憧れる人間がいるなんて思ってもいなかったからだ。
そんなジーナの考えも知らずに、ノーチェは言葉を続ける。
「そんな憧れの方と話せただけで、この学校に入った意味があったな……と思えるほどです。これを大切な思い出に、これから頑張っていこうと思います」
ノーチェは精一杯の笑顔を作った。憧れの人に、自分の悩みを聞いてもらえた。それだけで十分だった。
そうこうしているうちに、日が落ちてきた。
更衣室には少し高い位置に窓がついていた。そこから漏れるオレンジ色の光がスポットライトを当てたように二人を照らす。夕陽に照らされたジーナはまるで宗教画のように美しかった。
さて、これから自分はどうなるのだろう。この無礼のおかげで、実家の取り潰しは少し早まってしまったかもしれない。
ノーチェはどんな処分でも受け入れる覚悟をして、ジーナに向かって頭を下げた。
「まだ悲観するのは早いかもよ?」
「え?」
思っても見ない言葉に、ノーチェは瞠目する。
「アンタに朗報だ。まだ卒業式にエスコートする者が決まっていない人間が一人いる」
ノーチェは学校中の貴族の顔を頭に思い浮かべた。
(そんな人知らない……でも)
「誰ですか!?教えてください!」
ノーチェは必死だった。すがる思いで、ジーナに問う。
「王子だよ」
「へ?」
なんの冗談か、と聞き返したくなる。
でも考えてみれば、ジーナは男だ。王子とて男と婚約するわけにはいかないだろう。相手が決まっていない、というのは決して間違えではないのだ。
「ちょうどいい、アンタ王妃になるか?」
「え?」
ノーチェはあんまりにも斜め上なジーナの発言に自分の耳を強く疑った。
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