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もう不幸が重なりすぎて死んだかと思った3
しおりを挟むノーチェは滅多に人が足を運ぶことがない、学園の裏庭で一人紅茶を飲みながら途方に暮れていた。
上級階級の皆様は、こういう時も侍女が側に支えていて、豪華なティーセットで何もしなくともお茶を用意されたりするのだろうが、残念ながらノーチェの家にはそんな余裕はない。
悲観しても仕方がないので、ノーチェは自作の保温ボトルを持ち歩いている。お茶を入れるガラス瓶を包み込むように毛糸を使って編んだケースはなかなかの出来だとノーチェは思っていた。
(あれ? 私ったら、ボトルは持ってきたのにカップを忘れてしまったわ)
いくらノーチェが貧乏貴族だろうと、ボトルのまま口をつけてお茶をいただくのは、はしたない。きっと教室に置いてきてしまったのだ、と思ったノーチェは保温ボトルの口を閉めぬまま、立ち上がってしまった。
ボトルに視線を落としながらそのまま進むと、ドンと柔らかいものに当たった感覚がした。
人にぶつかってしまったようだ。
「きゃっ!」
ごめんなさいと謝ろうとして顔をあげたノーチェは顔から血の気を失ってしまった。
ぶつかってしまったのはあの、鋭い咆哮を上げていたジーナ様だった。
しかも運悪く、ノーラが持っていた保温ボトルから、紅茶がこぼれ、ジーナの服に大きな染みを作っている。
「ひえええ! も、申し訳ございませんっ! ジーナ様のお召し物が……。あああ!」
ガクガクと震えながら、ノーチェはジーナの顔を見上げた。
(絶対に起こっている! どうしよう! 殺される! 王族の特殊部隊に秘密裏に処分されてもおかしくない!)
嫌な想像ばかりが頭をよぎり、もう死んでもおかしくない……。と半ば倒れそうになってしまうが、当人であるジーナは涼やかな表情で言い放つ。
「はあ。大きい声出さないでちょうだい。着替えれば大丈夫よ」
思ったよりもあの、ジーナが優しいことに驚きつつも、ノーチェは落ち着くことなどできない。
「ぬ、脱いでください! お召し物のお着替えをお手伝いいたしますわ!」
「は⁉︎」
ノーチェは近くにあった更衣室にジーナを押し込んで、服をひん剥こうとする。
ジーナは慌てて拒否したが、ノーチェはそれを静止することはなかった。
多分ノーチェはこのとき、相当気が動転していたのだと思う。
ジーナのドレスを脱がすと、そこには平らな胸が広がっていた。正確には薄い胸筋がお目見えしていた。
それはどう見ても貧乳と言うそれではない。よく見るとドレスで隠れていたジーナの腕にも、うっすらと筋肉がついているように見える。
「ジーナ様……?え?男?」
ノーチェはこの短時間で何が起こったのか、理解することができない。
(え? あの悪役令嬢と名高いジーナ様が……。お、男⁉︎)
項垂れた様子のジーナは頭を抱えていた。
「ついにバレたか……」
なんと、ノーラの憧れだった気高く勝気なご令嬢は男だったのだ。
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