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もう不幸が重なりすぎて死んだかと思った2
しおりを挟む「もう、誰でもいいからうちの家を援助してくれて、わたくしと結婚してくださる方はいないのかしら」
ため息ばかり出てしまうが、そんなに都合のいい人間がそうそう簡単に見つかるわけがない。
婚約者をこれから決めるのは、もう時間的に難しいかもしれない。卒業式まで、あと三ヶ月を切っていた。
ノーチェが通う貴族学校では卒業パーティーの準備が進められている。
貴族の子供たちは卒業パーティーで婚約を発表する。婚約者にエスコートを任せることで、それは公のものとなり二人の家の結びつきが社交界に知らしめられるのだ。
周りを見渡せば婚約を済ませた男女ばかり。
余っているのはきっと自分くらいだろう。
(ああ、もう少し婚約破棄が早い時期だったら一人くらい余っている人がいたかもしれないのに)
途方に暮れながら、学内のカフェテリアでぼんやりとしていると、目の前に華やかな人だかりを見つける。
そこにはこの国の第二王子とその婚約者であるジーナを中心とする取り巻きが賑わいを見せていた。
どうやら、王子に近づこうとした、女学生をジーナが弾弓しているらしい。
「あなたのような人間が、王子の周りをうろつくなんて百年早いのよ!」
(今日も威勢がいいなあ……)
なんだかその鋭い咆哮にノーチェは惚れぼれしてしまう。
ジーナは子供の頃から、王子の婚約者を務めているからか、いつでも凛としてはっきりと意見を述べる。
自分を差し置いて、王子に近づこうものがあれば、その度に糾弾し高笑いを見せることから、学校の女子たちの間で悪役令嬢とこっそり呼ばれていることをノーチェは知っていた。
しかし、ノーチェの目にはそんなジーナの姿が美しく映る。
あのくらいはっきりと婚約者に近づく人間を排除できたのならば、自分も婚約者を失わずに済んだのかもしれない……。ノーチェはそう思ったがもうゼダウスは遠くへ行ってしまった。
他の女性のところへと旅立ってしまったのだ。
こんな卒業間近な時期にどうして? と内心腹立たしく思ったが、ゼダウスは悪びれもせず、恋に落ちてしまったのだから仕方がない、と言い放った。
それを言われた瞬間、私の婚約者はこんな人間だったのだ、と言うことにがっかりもしたが、内心婚約が決まるまでに本性がしれてよかった、と言う気持ちも持ってしまっている。
(今思うと私は本当に彼への好意があったかも定かではないけれど……)
それでもノーチェにとって自分の家を援助してくれる予定だったゼダウスを失うのはなんとも痛い失態だった。
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