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もう不幸が重なりすぎて死んだかと思った1
しおりを挟む極貧男爵家の令嬢、ノーチェはもう後がなかった。
婚約者であった伯爵家のゼダウスから、突然の婚約破棄を言い渡されたのだ。
「すまない。彼女を愛してしまったんだ」
貴族院の授業が終わった放課後、ゼダウスに急に呼び出されたノーチェは目を見開いてその光景を見つめていた。ゼダウスの腕には、なんとも可愛らしい守ってあげたいタイプの__しっかり者に見えてしまうノーチェとは真逆の少女がくっついていた。
(確か彼女は隣のクラスのリンデさんだったかしら?)
二人は腕を絡ませ、親密な視線を送りあい、なんとも仲睦まじそうな雰囲気を出していて、ノーチェは入り込む付きを全く感じられなかった。
(そんな……どうしよう……)
ノーチェは婚約者が他の女を好きになったショックよりも、実家の事業への援助者がいなくなったことに頭を抱えていた。
ノーチェの家は困窮していた。
伯父が事業に失敗し、その連帯責任者になっていたノーチェの父は多額の借金を抱えることになってしまった。
ノーチェの父は男爵家の当主だが働き者で、なんとか借金を返そうと懸命に働いているが、最近体調を崩して寝込むことが多くなってしまったのだ。
そんな時になんとか最後の希望の光として転がり込んできたのが、ゼダウスとの婚約だった。
それはノーチェの家族にとって最後の砦だった。
ゼダウスの家からは卒業とともに結婚をして、実家の援助をしてもらえるはずだった。
婚約破棄してしまえば、その援助も無効になってしまう。
このままでは自分自身はもちろん、ノーチェの家の存続が危うい。
ノーチェはその事実に頭を抱えるしかなかった。
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