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あまりにも突飛な提案にロザンヌは思わず目をひん剥く。
「はい姫様。この国の王ございます。
……姫様のこの国の王が所有することのできる叡智の王冠の存在はご存知ですね?」
叡智の王冠、それはこの国の王を象徴である。手に入れなければ王として認められない。
「前王が死去してから見つかっていないと言うこの国の秘宝ですね。不思議な王冠で持ち主が死ぬと姿を消し、新たな王が王として相応しければ存在を表す不思議な王冠です」
「王子達は今それを血眼になって探していらっしゃいますよね。わたくしの耳にもそのくらい届いておりますし、存じ上げております」
その王冠の存在は大々的には明かされていないがロザンヌは自前の情報網でその存在を知っている。まさかルミールがその存在を知っているとは思わなかったが。
……いや自分よりも優秀なルミールがそれを知っているのは当たり前のことか。どちらにせよその情報網の広さと深さにロザンヌは頭を痛めた。
「私が調べたところによるとその叡智の王冠という秘宝は、この国を収めるだけの知識と聖魔術師による、具現化の魔法であることがわかりました。あの王冠は現物として存在をしていないのです。作られた魔術具であって、その条件を満たせばだれでも作ることができることが判明いたしました」
ルミールはとんでもないことを軽々と言い放つ。
「そんなの国家機密じゃない!」
「そうですね。トップシークレットでございますね」
深まったルミールの笑顔にロザンヌは嫌な予感しかしない。
なんだかどんどん冷や汗が出てくる気がした。その予想は見事的中した。
「それを実際に作ったものがこちらの王冠ございます」
まるで3分クッキングのごとく目の前に現れたのは、紛れもなく本物の叡智の王冠だった。
ロザンヌは思わず息を飲む。こんな恐ろしいことがあってたまるか。男爵家の令嬢ごときががこの手にとってはならない秘宝が目の前に存在するなんて。
「さあこれを被ればあなたが次の王ですよ」
「被るわけないでしょ!王族に対して不敬だわ!」
そういうルミールはキョトンとした顔でこちらを見てくる。叡智の王冠を手にすることのできない王子たちが愚図なのであって、自分の手の者を使って王冠を手にした姫様が正当な王の資格を持つものなのではないか、という謎理論を繰り出してくる。
「とにかく、わたくしは王になどなるつもりはございません」
ぜえぜえ息をあげてと宣言すると、姫様はこの情報がいらないのですか、残念です。と本当に残念そうにルミエールは言う。
「では私を買ったものが次の王ですね。果たしてこの国に私を購入してくださる貴族の方がいらっしゃるでしょうか?」
「はあ!?そんな物騒なもの買う人物がこの国にいると思って?」
「ふふふ、今のこの情勢ではいないでしょうねえ」
ルミールはうれしそうに微笑んでいる。王族の争いごとに進んで巻き込まれたがる酔狂な貴族はいない。
「でも王族に買われれる、という選択肢もあなたにはあるでしょう?」
「おやおや、姫様は自分の教育の範囲をご存知ないのでしょうか?」
一瞬、どういう意味かわからなかったが、ルミールはちゃんと説明を加えてくれる。
「私はあくまで貴族に仕えるための教育を施された執事です。王族の方に仕えるなんて恐れ多い。あまりの恐れの多さに、王子の一人や二人、殺してしまいそうです」
こいつはやる。
絶対にやる。
ロザンヌにはその確信が持ててしまった。ルミールはそれをできるだけの知識と技量を持っている。なんなら証拠を残さず始末することだってできる筈だ。
それがたとえ王族だとしても。
そんな彼が証拠を残すと言っている。これはロザンヌへの遠回しの脅しだろう。王族を殺す人間を輩出した男爵家はすぐさま取り潰しになってしまう。
もうダメだこんな国の機密情報まで知っているルミールを売りに出せない。売りに出したらこの国が揺らいでしまう。
危険だ、危険すぎる。
ロザンヌは今までルミールの何も見ていなかったことに気づく。その危うさに彼女はやっと気づいたが何もかもが遅すぎる。ロザンヌはもうどうすればいいかわからなかった。
不思議でたまらない。どうしてこんなにルミールは力を求めるのだろう、一体何のために。
「はい姫様。この国の王ございます。
……姫様のこの国の王が所有することのできる叡智の王冠の存在はご存知ですね?」
叡智の王冠、それはこの国の王を象徴である。手に入れなければ王として認められない。
「前王が死去してから見つかっていないと言うこの国の秘宝ですね。不思議な王冠で持ち主が死ぬと姿を消し、新たな王が王として相応しければ存在を表す不思議な王冠です」
「王子達は今それを血眼になって探していらっしゃいますよね。わたくしの耳にもそのくらい届いておりますし、存じ上げております」
その王冠の存在は大々的には明かされていないがロザンヌは自前の情報網でその存在を知っている。まさかルミールがその存在を知っているとは思わなかったが。
……いや自分よりも優秀なルミールがそれを知っているのは当たり前のことか。どちらにせよその情報網の広さと深さにロザンヌは頭を痛めた。
「私が調べたところによるとその叡智の王冠という秘宝は、この国を収めるだけの知識と聖魔術師による、具現化の魔法であることがわかりました。あの王冠は現物として存在をしていないのです。作られた魔術具であって、その条件を満たせばだれでも作ることができることが判明いたしました」
ルミールはとんでもないことを軽々と言い放つ。
「そんなの国家機密じゃない!」
「そうですね。トップシークレットでございますね」
深まったルミールの笑顔にロザンヌは嫌な予感しかしない。
なんだかどんどん冷や汗が出てくる気がした。その予想は見事的中した。
「それを実際に作ったものがこちらの王冠ございます」
まるで3分クッキングのごとく目の前に現れたのは、紛れもなく本物の叡智の王冠だった。
ロザンヌは思わず息を飲む。こんな恐ろしいことがあってたまるか。男爵家の令嬢ごときががこの手にとってはならない秘宝が目の前に存在するなんて。
「さあこれを被ればあなたが次の王ですよ」
「被るわけないでしょ!王族に対して不敬だわ!」
そういうルミールはキョトンとした顔でこちらを見てくる。叡智の王冠を手にすることのできない王子たちが愚図なのであって、自分の手の者を使って王冠を手にした姫様が正当な王の資格を持つものなのではないか、という謎理論を繰り出してくる。
「とにかく、わたくしは王になどなるつもりはございません」
ぜえぜえ息をあげてと宣言すると、姫様はこの情報がいらないのですか、残念です。と本当に残念そうにルミエールは言う。
「では私を買ったものが次の王ですね。果たしてこの国に私を購入してくださる貴族の方がいらっしゃるでしょうか?」
「はあ!?そんな物騒なもの買う人物がこの国にいると思って?」
「ふふふ、今のこの情勢ではいないでしょうねえ」
ルミールはうれしそうに微笑んでいる。王族の争いごとに進んで巻き込まれたがる酔狂な貴族はいない。
「でも王族に買われれる、という選択肢もあなたにはあるでしょう?」
「おやおや、姫様は自分の教育の範囲をご存知ないのでしょうか?」
一瞬、どういう意味かわからなかったが、ルミールはちゃんと説明を加えてくれる。
「私はあくまで貴族に仕えるための教育を施された執事です。王族の方に仕えるなんて恐れ多い。あまりの恐れの多さに、王子の一人や二人、殺してしまいそうです」
こいつはやる。
絶対にやる。
ロザンヌにはその確信が持ててしまった。ルミールはそれをできるだけの知識と技量を持っている。なんなら証拠を残さず始末することだってできる筈だ。
それがたとえ王族だとしても。
そんな彼が証拠を残すと言っている。これはロザンヌへの遠回しの脅しだろう。王族を殺す人間を輩出した男爵家はすぐさま取り潰しになってしまう。
もうダメだこんな国の機密情報まで知っているルミールを売りに出せない。売りに出したらこの国が揺らいでしまう。
危険だ、危険すぎる。
ロザンヌは今までルミールの何も見ていなかったことに気づく。その危うさに彼女はやっと気づいたが何もかもが遅すぎる。ロザンヌはもうどうすればいいかわからなかった。
不思議でたまらない。どうしてこんなにルミールは力を求めるのだろう、一体何のために。
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