白兎令嬢の取捨選択

菜っぱ

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第一章 大領地の守り子

14この機会を逃すわけにはいきません

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 そんなことをしていたら一週間がすぐに過ぎました。
 八日ぶりに資料室に向かいます。
 そういえば、この世界の一週間は前の世界とは違って八日間あります。
 忍時代の月曜日にあたる、水の日から創の日、動の日、武の日、熱の日、無の日、粛の日、聖の日と続いて行きます。基本的に聖の日は日曜日の扱いになるので、みんな一律におやすみをとります。

 オルブライト領の多くの平民は粛の日もお店を閉めているみたいですね。人によっては無の日をお休みにして週休三日にしている人もいます。毎週三連休ですね。
 しかし、残念ながら、オルブライト家は聖の日しかお休みになりません。記憶を取り戻す前はそう言うものなのだ、と疑問にも思っていませんでしたが、週休二日が当たり前だった記憶を得てしまうとなぜなのだ……とお父様をつい呪ってしまいそうになります。

 でもその代わり、水の日は比較的ゆったりとした、カリキュラムが組まれているので、そこまでぎゅうぎゅうに予定を詰め込まれている感じはしません。体力的に余裕ができてありがたいですね。
 魔術教室の予定を入れるにあたって、水の日になったのは大変わたくしにとってありがたいことです。

 ……こんな感じでわたくしの都合を優先させていただきましたけど、先生は予定とか大丈夫なのでしょうか?

 先生はいつでもいいとおっしゃっていたけれど、今日もう一回聞いておかなければ。無理を言ってしまったかもしれませんし。わたくしは手帳を開いて次にお会いする時に聞くことリストにそのことを書き込みました。

 



 そして、今日は待ちに待った、先生の魔術教室の日です。
 今日はしっかり手土産を自分で用意しましたよ!

 今日の手土産はこちらでいうミントのような清涼感がある植物のお茶にしました。魔法陣は集中しないと書けないので、すっきりするこのお茶は勉強にぴったりだと思います。

 午前の授業を終え、昼食をとったあとわたくしは資料室に向かいます。以前先生の家で描いたわたくし専用の魔法陣は侍女などにみられるといけない(特にラマ、見つかるときっと追求が激しい)ので、資料室に置いていたのです。それを使って先生のいる街へ飛び立ちます。先生と一緒に作っただけあって転位の魔法陣は問題なく作動し、あっという間に先生の住む街、ミームに到着しました。

 転移場所はオルブライト家のものとは違い、先生の家により近い場所に設定してあったので、降り立ってすぐ先生の暮らすお店のような建物の前に着きます。

 あれ?ここからどうやって入ればいいのでしょう?

 この前は先生がいたから入れましたが、今日は一人での入店です。雑貨店の前で立ち尽くします。

 とりあえず、ドアノブを回すとガチャリと音を立てました。
 あ、良かった空いているようです。またあの暗い部屋に入ることができました。そのまま、グルグルと歩いて見ます。しかし一向にあの部屋にはたどり着けません。これは……どうしたものでしょう。

 これ以上歩いてもたどり着けそうにないので、試しに、以前先生がやって見せたように手を叩くと場面が変化し、気がついたら以前訪れたの部屋に立っていました。

「わ!」

 視界が切り替わったことに驚き瞬きをしていると、お茶の準備をしていたらしい先生の姿が映りました。

「よくきたね」
「先生、ここにくる方法を教えてくれたら良かったじゃないですか。戸惑っちゃいましたよ」
「魔法陣を描くには創意工夫が必要だからね。そういうことができるかちょっと君を試しちゃった、ごめんね」

 先生は悪戯な笑顔で笑います。

「魔法陣教室、って言っちゃったけどこんなふうに僕は全てを事細かく丁寧に教えることはやったことがないからできないと思うんだ。ヒントは与えられると思うけど。それでもいい?」

 わからないことがあれば、質問しても構わない、と先生は笑います。先生の微笑みは本当に柔らかくて、優雅です。

「それは全く、構わないのですが……。わからないところを聞けるだけでもありがたいですし」

 目で盗めってことですね。ここはそういう流派のようです。わかりました。
 一見困難に見える条件ですが誰にも教えてもらえず、本だけを見てなんとなく魔法陣を読み取っていたわたくしに追っては目の前で実際に描いてもらえると言うことだけでもとってもありがたいことなのです。

 先生にお茶を渡して早速魔法陣を描く練習を始めます。

「リジェットはもう基本文字は知ってるんだね」
「ええ、一応。本で読みましたから」

 魔法陣は基本、円の中に特定の要素とそれに付随する模様を書き込むことで、発動します。
 要素は曜日と同じく、水、創、動、武、熱、無、粛、聖の八要素です。

「なんで、魔法陣の要素と曜日が一緒なんでしょう」
「曜日というものがそもそも、古典状での湖の女神の行動を表したものを当てはめたものだからね。
 湖の女神がハルツエクデンを作った経緯について書かれた古典文学とか読んだことない?」
「……ありません。勉強不足で申し訳ありません」

 不勉強が申し負けなくて眉を下げると先生は驚いた顔をしました。

「……あれそっか。
 大きな窪みを持つ土地に根付いた女神はその窪みに水を張った。
 水に満たされた窪みからやがて生命が創造される。
 生命が増え、湖の国は様々な動きを見せ始める。
 増えた生き物たちはそれぞれの利権を得るために武力での争いを始める。
 それを見た女神はお怒りになって、生き物たちを焼き払い、国は大いなる熱に包まれる。
 国には命がほとんど消え、無になってしまう。
 残った生き物たちは粛々と生き延びようとなんとか暮らし始める。
 そして国の復興を願い、女神に聖なる祈りを捧げる。
 この国はその繰り返しで成り立っている……って話聞いたことない?」
「……多分常識に近い知識なのだと思いますが、残念ながらわたくし存じ上げておりませんでした。勉強不足でお恥ずかしいです……」
「今は聖職者でもない限り、古典は重要視されないからね。知らないのも無理はないよ」

 先生はそう言いましたがわたくしはそうですか、と無邪気には言えませんでした。やっぱり家庭教師が指定してくる範囲のことのだけ勉強していたようでは知識に偏りが出てしまいますね。
 もう少し独自判断で知識を広げなければならないようです。

「わたくし、魔法陣を描くためにもっともっと勉強が必要ですね」
「でも、領主のお嬢さんともなると勉強することも多いだろうしなあ」
「でも時間を見つけて勉強すれば意外とできることも多いのですよ!
 わたくし、前回よりもマシな線が引けるようになったでしょう?
 これも夜通し鍛錬した成果なのですよ! ちょっと頑張りすぎて、小指の付け根や肘から出血をするという初めての体験をして、侍女のラマを驚かせてしまいましたが……」

 あの時のラマは本当に驚いていました。
 布団に入って大人しく寝ていると思った主人が夜な夜な線を引く練習を擦れて出血するまで繰り返していたことに気づいたラマはの嘆きはとても激しく、わたくしは早々に硝子ペンを取り上げられてしまいました。
 仕方がないので、今日までは剣の鍛錬中に中庭で拾った気を硝子ペンの形に削ったもので練習をしていたので感覚は鈍っていないと思うのですが……。

「主人のか弱いお嬢様が手から血を出しながら何か描いてたらそりゃびっくりするでしょう……」
「でも得たい結果のためならば、そのくらいの努力くらい当然するでしょう?」

 にこりと笑顔で言い放つと、心なしか先生が引きつった顔をしているような気がしました。

「思ってたよりまずい資質のもの引き受けちゃったかな……」
「何か言いましたか?」
「なんでもないよ……リジェット、硝子ペンはこの家に置いておこっか」
「え⁉︎  なんでですか!」

 いただいたものを取り上げられるのを避けたくて、わたくしは聞き返します。

「なんだか会ったことないけど、その侍女の子がかわいそうになってきちゃったから」
「先生までラマの味方をするのですか!」
「いやあ……。思ったより見た目と中身が違うなあと思って。……もしかして君、オルブライト家の御息女?」
「……え? 今更何を言っているのですか?
 そうに決まっているでしょう?」
「うん……。そうなんだけど、第一印象で感じた五倍はオルブライトの系譜だなあ……と思って。なんていうか、あの家の人たちって脳みそが筋肉でできてる傾向があるよね……。ユリアーンとヨーナスはそうでもないけど、セラージュとかへデリーとかもうほんともろにその系統が出てるよね。君はそっちに近いよ」

 __オルブライト家らしい。先生のいうそれが武の領地オルブライト家としての素質がある、という意味だったのならば両手を上げて喜べたのですが、そういう意味ではないでしょう。脳筋と言われて喜ぶ乙女がいると思っているのでしょうか。

 しかもよりにもよって、強引、傲慢がデフォルトのヘデリーお兄様に似ているですって! そんなことありません!

「え……。そ、そんなことありませんよ?
 お父様はまだしも、へデリーお兄様と似ていると言われるのは屈辱です」
「いや、へデリーのあのいうこと聞かず腕っ節の腕力だけで話通そうとしてくる感じと、君のやり方、結構似てるよ」
「というか、先生は上のお兄様方二人とも面識があるのですね」
「ああ、王都にいた頃にね。少し関わる機会があったから……。結構ユリアーンとは気が合って話すことが多かったかな」

 ユリアーンお兄様はオルブライ家の家の中でも珍しい温和な気質を持った方です。無口であまり話をしないタイプですが、お花を育てるのが好きだったり小動物に弱かったりと結構可愛いところがある方なのです。
 まあ、見た目ゴリゴリのマッチョなんですけどね……。

 へデリーお兄様はユリアーンお兄様とは真逆で、お父様に似ています。上の三人兄弟の中でも一番、剣の腕が優れていて、お母様曰くその強引な性格は、まるでお父様若い頃をそのまま再現したような性格だそうです。

 屋敷の中ではユリアーンお兄様より、へデリーお兄様の方がオルブライト家の次期当主にふさわしいのではないか、という意見はありますが、今の時点ではユリアーンお兄様が家督を継ぐことになっています。
 今後どうなるかはわかりませんが……。というのもお父様はより強いものが家を継げば良いと考えているようで、もしへデリーお兄様がユリアーンお兄様に討ち入るようなことがあってもそれはそれで、道理だと考えているようです。

 兄弟同士で争わせるなんてなんて恐ろしいく非生産的なことを、と考えてしまいますが、この国の貴族たちの中ではよくあることだそうです。

 今、ちょっと心配なのはお二人がもし争った時にどちらの陣営に入れられてしまうか、ということなのですよね。基本的にはわたくしは王家の剣として王都に所属したいと考えているので当主争いなんかみじんも興味がないのですが、万が一巻き込まれてしまうと、騎士としての武力だけでなく、せっかく学んだ魔法陣もどうでもいい争いのために使われてしまう危険性があるのです。なんとか穏便に済めばいいとは思っているのですが……。

「先生はオルブライト家のイザコザに巻き込まれないでくださいね」
「え、なんの話?」
「あ……。すみません独り言です……」

 いけないいけない。線を引く練習に慣れてくると変なことを考える余裕も出てしまいますね。慌てて会話の流れを変えるべく、穏やかな雰囲気の話題を先生に投げかけます。

「先生はこの一週間どう過ごしましたか?」
「いつもと変わらないよ」

 そう言われてわたくしはそもそも先生がいつも何をやって過ごしているか全く知らないことに気が付きました。

「いつも通りって、例えばどんなことをなさっているのですか?」
「うーん。そうだなあ。魔法陣を書いたり、それを書物に直したりして過ごすことが多いかな。
 魔法陣関係の本も暇つぶしに書いているからその原稿を進めたり……」
「え! 先生は本も書いているのですか?」
「ああ、皆が魔法陣を使えるように簡単に展開できそうなものをまとめたり、初等魔術の本を書いたりしているんだ」
「えっ! もしかしたら先生が書いた本をわたくしは読んだかもしれません」

 資料室で読んだ本の中にあった魔法陣の意匠が先生の描いたものに似ていたのを思いだし、タイトルを伝えると、やはりそれは先生が書いたものだったようです。難しく書いてある本が多い中、あの本だけは内容も理解しやすく、とっても役に立ちました。この前、帰った後も魔法陣の復習をすべくかなり読み込んでいたのです。こんな綺麗な魔法陣がいつか描けるようになりたいと、憧れを持っていたのですが……。
 まさか憧れの著者が目の前にいるなんて!

「やぱりわたくしの読んだ本でした! ファンです!」

 つい勢い余って大きな声で言うと、先生はなんだか驚いた顔をしていたけれど、嬉しそうです。

「嬉しいなあ。あれを読んでくれるなんて。ああいった入門編を読んで、魔法陣を描く人が増えたらいいなって思ってたんだ。……最終的には僕を頼る人がいなくなるくらいになるのが僕の夢なんだけど、なかなかね……。
 残念ながら、あまり魔法陣描きの人口は増えていないけど」

 どうしてみんな僕に仕事を振ってくるのかなあ、と先生は嘆くように呟いています。先生は暇、と言っていますが、本当はすごく忙しいのでしょうか。けれども、本当に魔法陣を描く人って少ないんですよね。うちにいる使用人たちはもちろん描ける人なんて一人もいませんし、お父様がいうにはオルブライト領に至っては魔法陣を描ける人間は先生ともう一人、オルブライト直轄の街に住む古くから魔術師を生業にしているご老人の計二名しかいないそうです。いくらなんでも少なすぎやしませんか?

「どうしてみんなこんな面白いものを勉強しないんですかね?」
「さあ? なぜだろう。でも昔知り合いに魔法陣の書き方を教えようとしたら、見ようとすると見えないって言われたことがある。理解しようとしながら見ると、靄がかかって詳細が見えなくなるらしい。
 描ける、描けないにはもしかしたら、何か適性のようなものがあるのかもしれない。
 僕は最初から見えたし、描けたからそれがなんだかわからないけれど」

 なんだか最後の方のセリフが天才っぽくて嫌味に聞こえましたが……。きっと、どんな魔法陣だって開発してしまう大魔術師である先生には凡人の気持ちなんて全く理解できないのでしょう。
 でも、もしそんな風に適正というものが本当にあるとしたら、わたくしと先生には共通点があるということになります。

 先生と共通点……。あるのでしょうか?
 生まれた土地も違うでしょうし、見た目も、髪色だって異なります。
 ファンタジーなことがホイホイおこる世界ですから、神様に特別愛されているーとか、ご都合主義的なことがあるのでしょうか。でも、わたくし神様に会ったことなんてないですし……。
 まあ、その辺のことは考えても仕方ありませんね。わたくしは今、目の前にあることに集中するべきです。





「今日は何を教えてくださるのですか?」

 ワクワクしながら先生の顔を覗き込みます。

「そうだねえ。防衛の魔法陣の詳しい仕組みとかどう?」
「わあ! この前描き写したものですね!
 あの時はただただ描き写すだけでしたから仕組みがわかったらいいなと思っていたところだったんです」
「仕組みがわかると自分で必要な要素を加えたり、減らしたりすることができるようになるからね。……まあそれには深い理解が必要になるからすぐにってわけにはいかないけれど」
「そんなことができたら夢のようですね……。そうなるために頑張ります!」

 そうして先生は原理や書き込む言葉を教えてくれました。魔法陣に描き込む文字は全て古代文字です。この国の成り立ちを表した古典文学も知らなかったわたくしにとってはもちろん初めて見る文字ばかりなので、すぐに覚えるのは難しそうです。

「仕組みは理解できるのですが、何せ文字にまだ馴染みがないので、自由に動かすのは難しそうですね」
「古代文字の基本文字は全部で二十八文字あるからこれを覚えるところから始めるといいんじゃない?
「じゃあ、次に来るまでに覚えてきますね!」
「あんまり無理しないようにね。頑張りすぎちゃダメだよ」
「はい! でもわたくし頑張りすぎてなんていませんよ? 張り切っているだけです」
「そうして、周りが止められないくらいに暴走するのが、君の資質か……」
「え? なんですって?」
「なんでもありませんよ」

 ニッコリ端正な微笑みを見せた先生はその会話を素早く切り上げました。
 黙って、紙に映すことを要求されたので、仕方なく作業を進めます。

 しばらく作業をすると、先生がお茶とお菓子を用意してくれました。以前と同じくテーブルにはティーポットが置かれています。

「あ、今日はマグカップなんですね」

 以前使った花柄のティーカップとはまた違う、青地に大きめの白の水玉模様とラインが描かれた可愛らしいマグカップが目の前に置かれます。

「うん。今日は手を動かしている時間が長かったから、喉乾いたかな? と思って。たくさん飲めるマグカップにしてみました」
「わあ! 嬉しいです! わたくしマグカップ大好きなんですよね! いっぱい飲めますもの! ……ただ、我が家では品が良くないと言って導入されていないのですが……」
「え? 家にないのになんで知ってるの?」
「え、ええっ」

 いけません! マグカップが大好きだったのは忍であってわたくしではありませんでした。ああ……、最近忍の記憶がわたくしの頭の中に滲み出てくる……というかごちゃりと混ざることがあって、困ってしまうのですよね……。思い出した初期の頃はきちんと分離できていたのですが、困ったものです。

「多分、お店で飲んだんだと思います。屋敷からあまり出ないとは言っても、たまには出かけることがありますもの!」
「ふうん。そうなんだ?」

 なんとか会話を取り繕えて安心したわたくしはいただいたお茶を一口飲みます。一緒に出されたクッキーはバターが効いていてサクサクで、とっても美味です。

 落ち着いたところで、聞かなければいけないことを思い出します。手帳に書いた、聞かなければいけないことリストの存在を記憶の隅から思い出します。

「先生、聞いてもいいですか?」
「ん?なんだい?」

 ここにかようにあたって、気になっていたことがあるのです。

「どうして先生はわたくしにこんなによくしてくれるのですか? わたくしは雇い主の娘ですから先生にとって無碍にできない立場でしょう? だから無理を言ってしまっているのではないかと思ってちょっと心配なんですが……。通う曜日もこちらに合わせていただいてしまってますし」

 以前聞いた時一人が寂しいから、暇だから大丈夫、なんて前言っていましたが、それは本当なのでしょうか。

「大丈夫、私は特に無理はしていないよ。」
「……本当に?」
「うーん疑り深いなあ。リジェット、君は自分の家にかわいい白ウサギが迷い込んできたときどうする?
 しかもその白ウサギは自分に懐いている。
 そんな素敵な動物を可愛がらないなんて選択肢なでしょう?」
「先生まで、わたくしのことを白ウサギ扱いしますか」
「配色が完璧だからね。
 それに私は君の持つ資質で気になる点がある。
 それがわかるまでは、君に知識を与えるのも悪くないかと思ったんだよ」

 そうか、先生がわたくしに魔法陣を教えてくださるのはなんの含みもなく、本当にそのままの意味で暇つぶしなのですね。
 まあ理由がなんであれ、先生が嫌悪感をわたくしに抱かないのであれば儲け物でしょう。

「では先生がわたくしに飽きる前に、魔法陣を一人で描けるようにならなくちゃですね!」
「そうしてくれると助かるな。僕も飽きてしまったものに対して、いつまでもケアができるほどできた人間じゃないからね」

 気まぐれな先生の暇なシーズンに家に入り込むことができたわたくしはとっても運がよかったのでしょう。
 こうしてわたくしは心置きなく魔法陣を覚え始めたのです。
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