上 下
23 / 29

再会の二人

しおりを挟む
《呆けている場合じゃないぞ、アサヒ!》
「お、おう!」
まさかの再会に呆然とする彼を、ソルが引き戻す。我に返ったアサヒは再びウィンザードを見据え腕をL字に組むと、

(プロミネンスストライク!)

必殺の熱線を発射。砲撃に釘付けにされていた魔鳥は回避することすらままならず直撃を浴び、轟音とともに爆風が海面を揺らした。

それを見届け、すぐに船の甲板へ降り立つソル。
何だ何だと警戒の色を見せる船員たちをよそにアサヒの姿へ戻り、カグヤのもとへと駆け寄った。

「やっほー。久しぶり、アサヒ!」
ようやく再開した彼女の第一声は、緊張感の欠片もないものだった。
「何だよそれ、こっちは心配してたってのに!」
呆れと安堵とが入り混じった表情で文句を口にする彼だったが、その声色は明るい。
何はともあれ、相変わらずな彼女の様子に心底ほっとしていた証拠だ。
「えへへ、ごめんね?心配かけちゃって」
ウィンクをしながら悪戯そうに笑う彼女に、まったく、といった風に頭を掻くアサヒ。
「でもまぁ、無事で何よりだ」
「残念。あたしはそう簡単にはくたばりませんよーだ」
「ったく、よく言うぜ。あんだけ不安そうだったくせに!」
「へー、誰がいつそんなことしてたっけ?」

「おい……」
「ああ……」
二人の世界が展開される中、周囲の船員たちは口々にざわついていた。そして――

「姐さん!」
「あ、姐さん!?」
一人の船員が叫び、会話に割って入る。その呼び方に驚くアサヒ。
そんな彼をよそに、船員は話を続ける。

「その……お知り合いで?」
至極まっとうな質問が投げかけられる。いきなり現れた未知の人型生物が人間の姿になり、彼女と親し気に会話をかわしているのだ。そんな光景を見れば、誰でも困惑するのは当然のことだった。

「うん。ほら、いつか話したことあったでしょ?あたしの幼なじみ」
「えっ……!それじゃ、その人が……!」
目を丸くしてカグヤとアサヒを交互に見つめる船員。そして何かに納得したように首を何度も縦に振った直後、集まっていた仲間達のもとへと駆け出すと――

「お前ら急げ、祝杯の準備だーーっ!」
心の底から嬉しそうに、叫んでいた。

「……何だあれ」
「面白いでしょ」
「いや、全然わかんねぇ」
そんな様子に困惑するアサヒと、からからと笑うカグヤ。

「あのさ。なんでお前、こんなところに……」
話を仕切り直したアサヒが、一番気になっている疑問を投げかけようとした。
そんな時だった。

カッ、と眩い光を放つ海面。船員たちとともに、彼らも船外をのぞき込む。そこには――

「魔法陣っ!?」
見覚えのある巨大な魔方陣が、船の真下に展開されていた。
直後。

「きゃっ!」
「カグヤ!」

急激な浮遊感とともに、衝撃が彼らを襲う。アサヒは咄嗟にカグヤを抱きかかえ、かばう姿勢を取る。
事態の把握もままならぬうちに、彼らの体は船を離れ空へと投げ出されていた。
竜巻だ。水面から突如発生した巨大な竜巻が、船を襲ったのだ。
しかし彼らがそれを理解した時にはもう、手遅れだった。
風の渦に飲み込まれた船はバラバラに引き裂かれ、いくつもの木片と化していた。

「ア……アサヒさぁぁーーん!」

絶叫が響き渡る。
参事の光景は、遠くから近づきつつあったユウキたちの乗る船からもはっきり見えていた。
果たして、彼らの運命やいかに――?
しおりを挟む

処理中です...