8 / 9
第7話 芽生えた疑問……! の巻
しおりを挟む
「スリャ!」
そこから、私の反撃が開始した。
まずは側頭部への右の回し蹴り—
「げっ」
命中。
「スリャッ!」
次に脇腹への横方向の手刀—
「うぐ」
命中。
「スリャリャーーッ!」
そして軽く飛び上がり、両足を揃えての胸元目掛けた飛び込み蹴り—
「うおぉっ」
失敗。腕で防がれてしまった。しかし体勢を崩し、大きく後退させることはできた。
「調子に乗りおって……」
苦々しく吐き捨てる彼女の態度をよそに。私にはある違和感が芽生えていた。
先ほどネックフォール・ダウンを押し返した時には気づき始めていたが、何かがおかしい。
私はそれを確信に変えるため、次なる行動に出る。
「この首を落とすんじゃなかったのかい?」
私はここで、あえて煽って見せた。わざとらしく、首まで指差して。
(どうだ……?)
一瞬の静寂が訪れる。
「こんの、小童がぁ~~っ!」
賭けは当たったようだ。彼女はそう怒鳴り散らしながら、
「ならば望み通りにしてくれるわあぁぁーーっ!」
「『赤き影』の!」
彼女が腕を広げると、4つの燭台に火が灯り、人型の炎が形作られる。
「『四重奏』――ッ!」
合図とともにその全てが一斉に動き出す。
「……」
それらは瞬く間に私の背後へと回り、私の両手両脚をガッチリと押さえてしまう。
しかし、これもまたわざとだ。
ネック・フォールダウンを誘発させるための撒き餌に過ぎない。
「ふははは、どうじゃ!動けまい!」
「喰らえぃ!ネックフォール・ダウンーーーッ!」
彼女は私を嘲笑うような声色で叫びながら、またもや突進を仕掛けてくる。
(かかった)
私はそう思い、じっと彼女の接近を待つ。そして。
「ムゥン!」
「何じゃと!?」
再び力づくで『捕縛』をかき消す。
焦って急ブレーキをかけた彼女だったが、間に合わず真正面から受け止められてしまう。
技が不発に終わった上、威力を自分で殺してしまった—最悪のパターンだ。
「スリャアアアーッ!」
私はその隙を逃さず、彼女の左腕を軸にして巨体を放り投げる。
この時、先ほど芽生えた疑問は確信へと変わった。
「レイア。その身体—」
私は彼女を指差し、言い放つ。
「君のものではないね?」
「!!」
一瞬だけぎくり、という風に身体を震わせた彼女だったが、
「ほざけ、どこにそんな証拠が—」
そう言って否定する。
「証拠はその腕にある」
「なぬ!?」
しかし、私は続けた。
「その腕、鎧にしては重すぎる」
「まるで、『人が着るスペースが無い』みたいだ」
「だからなんだと言うのだ!!」
「巨大なその全身は見せかけ、本体の君は胴の部分に身を隠していると見た!」
私は握り拳を作り、力強く叫んだ。すると—
「くくっ、ふはは……」
彼女が突然、笑い出す。
「よもやばれてしまうとはのう。その通り」
「わらわのこの身体は仮のもの!」
「これぞ秘術、『操演撃』!!」
彼女はバレてしまっては仕方ないとばかりに、大仰な動作で力説を始めた。
だが、そんなことはどうでもいい。重要なのは—
「そうか……安心したよ
「なぬ?」
「その身体が偽物なら」
私はそう言うと、再び戦闘体勢を取り直す。
面の左右からフェイスガードが展開し、鼻と口元を覆い隠す。
同時に、私の体を包んでいた白い光が消失する。
「思いっきりやっても問題はなさそうだ」
私は彼女を—否、あれを睨みつけ、そう言い放った—
そこから、私の反撃が開始した。
まずは側頭部への右の回し蹴り—
「げっ」
命中。
「スリャッ!」
次に脇腹への横方向の手刀—
「うぐ」
命中。
「スリャリャーーッ!」
そして軽く飛び上がり、両足を揃えての胸元目掛けた飛び込み蹴り—
「うおぉっ」
失敗。腕で防がれてしまった。しかし体勢を崩し、大きく後退させることはできた。
「調子に乗りおって……」
苦々しく吐き捨てる彼女の態度をよそに。私にはある違和感が芽生えていた。
先ほどネックフォール・ダウンを押し返した時には気づき始めていたが、何かがおかしい。
私はそれを確信に変えるため、次なる行動に出る。
「この首を落とすんじゃなかったのかい?」
私はここで、あえて煽って見せた。わざとらしく、首まで指差して。
(どうだ……?)
一瞬の静寂が訪れる。
「こんの、小童がぁ~~っ!」
賭けは当たったようだ。彼女はそう怒鳴り散らしながら、
「ならば望み通りにしてくれるわあぁぁーーっ!」
「『赤き影』の!」
彼女が腕を広げると、4つの燭台に火が灯り、人型の炎が形作られる。
「『四重奏』――ッ!」
合図とともにその全てが一斉に動き出す。
「……」
それらは瞬く間に私の背後へと回り、私の両手両脚をガッチリと押さえてしまう。
しかし、これもまたわざとだ。
ネック・フォールダウンを誘発させるための撒き餌に過ぎない。
「ふははは、どうじゃ!動けまい!」
「喰らえぃ!ネックフォール・ダウンーーーッ!」
彼女は私を嘲笑うような声色で叫びながら、またもや突進を仕掛けてくる。
(かかった)
私はそう思い、じっと彼女の接近を待つ。そして。
「ムゥン!」
「何じゃと!?」
再び力づくで『捕縛』をかき消す。
焦って急ブレーキをかけた彼女だったが、間に合わず真正面から受け止められてしまう。
技が不発に終わった上、威力を自分で殺してしまった—最悪のパターンだ。
「スリャアアアーッ!」
私はその隙を逃さず、彼女の左腕を軸にして巨体を放り投げる。
この時、先ほど芽生えた疑問は確信へと変わった。
「レイア。その身体—」
私は彼女を指差し、言い放つ。
「君のものではないね?」
「!!」
一瞬だけぎくり、という風に身体を震わせた彼女だったが、
「ほざけ、どこにそんな証拠が—」
そう言って否定する。
「証拠はその腕にある」
「なぬ!?」
しかし、私は続けた。
「その腕、鎧にしては重すぎる」
「まるで、『人が着るスペースが無い』みたいだ」
「だからなんだと言うのだ!!」
「巨大なその全身は見せかけ、本体の君は胴の部分に身を隠していると見た!」
私は握り拳を作り、力強く叫んだ。すると—
「くくっ、ふはは……」
彼女が突然、笑い出す。
「よもやばれてしまうとはのう。その通り」
「わらわのこの身体は仮のもの!」
「これぞ秘術、『操演撃』!!」
彼女はバレてしまっては仕方ないとばかりに、大仰な動作で力説を始めた。
だが、そんなことはどうでもいい。重要なのは—
「そうか……安心したよ
「なぬ?」
「その身体が偽物なら」
私はそう言うと、再び戦闘体勢を取り直す。
面の左右からフェイスガードが展開し、鼻と口元を覆い隠す。
同時に、私の体を包んでいた白い光が消失する。
「思いっきりやっても問題はなさそうだ」
私は彼女を—否、あれを睨みつけ、そう言い放った—
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる