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12 降臨せし者

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ジェネスと怪物――爆砲獣ボマードは互いを見据え、睨みあう。相手の出方をうかがい、緊張の糸をぴんと張る。
両者は一定の距離を保ったままじりじりと足を動かし、互いが互いの背後を取ろうと円を描くように移動。
そしてちょうど位置が先ほどと反対に来た時。糸は断ち切られた。

先に動いたのはジェネス。前方に駆け、ボマードに掴みかかった。
「テアッ!テアッ!」首を左脇に抱えると、頭部へ手刀の連打を浴びせる。

「お主!今のうちじゃ!」
その隙を狙い、岩陰からすかさずリリンが少女にこちらへ来るよう促す。
「悪い、助かった!」
少女はその言葉に素直に従い、急いで身を隠す。
それを確認したハジメは心の中でよし、と頷き、首元のロックを外して両腕でその頭を掴み、力いっぱい背後に投げる。地面に叩きつけられ、グェ、と呻きを漏らすボマード。
だが彼もただやられるばかりではない。頭から手が離されたその瞬間、口を大きく開けると光球を吐き出す。
防御が間に合わず、ジェネスの胸元で小さな爆発が起きる。よろめいて2歩ほど後退してしまう。
それに調子づいたのか、ボマードは追撃の光球を3連続で打ち出す。
「チャッ!」
しかし同じようにはいかなかった。すぐに体勢を整えなおしたジュネスは、右手から半月状の小さな光弾、『ハンディシュート』を打ち出して全てを相殺。
「タアッ」
そして爆風に紛れて前転をしながら跳躍、背後に降り立つとその長い尻尾をつかみ取り、回転を加えてから投げ飛ばさんとする。
対するボマードは尾を自らの意思で切断し、完全に投げ飛ばされてしまう前に離脱。着地と同時に攻撃を仕掛ける。
ジェネスは尻尾を放り捨てて光球にぶつけ、身を守る。
まさに一進一退。互いに譲らぬ攻防を繰り広げる両者。
その光景を、固唾をのんで見守るリリンと少女、そして――

「へぇ……いーい戦いぶりじゃないか、ハジメ?」
あの、黒衣の男。
彼は手に持った杖に映し出された映像に、感心した様子でつぶやく。
「だがこんなものは小手調べ……お楽しみはここからだ♪」
そう言って、男は杖の先端部中央に空いた穴に、『キー』をセット。
『デモンズキー!』禍々しい音声が洞穴内に響き渡り、リング状の部位が紅く発光。
続いて上方に掲げ、柄に付いたトリガーを押す。
『サモン・マグニス!』音声とともに魔法陣が展開され――

「!?」
ハジメたちが戦うその上空に、同様の魔法陣が出現。そして――

「嘘だろ……あれって!」
その中から現れた人型の影に、竜人族の少女が狼狽する。
荘厳な装飾の鎧を着込み、揺らめく炎に瞳が浮かぶ頭部を持ったそれは、地上に向かって手をかざす。
瞬間。ジェネスとボマードの足元で、大爆発が起こされた。
「ハジメーッ!」叫ぶリリン。

「ウウ……」
何とか耐えきったものの、地面に這いつくばるジェネス。ボマードの姿はそこにはもうない。

「さぁ行け……!炎の守護神、マグニス!」男が叫ぶ。
祠に祀られていた彼女らの『守り神』が。
なんと、『敵』として降り立った――!
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