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11 その名はジェネス

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友よ 君はいつだって 僕の道標だった
強く 気高く そして優しく
例え遠く離れたとして 君を思う気持ちは変わらない
今君は どこで何をしているのだろうか
できることならもう一度 君に会いたいよ
幼きあの日のように 他愛ない話をしたい



「ん……」
小さく声を漏らし、僕の眼は少しづつ開いてゆく。窓から差し込む日の光に目を眩ませつつも、僕は大きく伸びをし、ベッドから降りる。
「おはよう、随分眠っておったのう」
朝食の準備をしながら、リリンさんは言った。
結局、1日中探したものの竜人族の村は発見できず、エルフの村へと僕らは一度引き返した。
「おはようございます、リリンさん」
「うむ、まぁとりあえず食事としよう。腹が減っては、とはよく言うからの」
「そうですね」
そう返して、食卓に着く。

――ところで、昨日まで火山地帯にいた僕らがなぜ村へと帰ってきているのか?
その答えは単純。『転移』のスキルを使ったのだ。
マーキングを施した空間と空間――今の例で言えば、火山地帯とリリンさんの家――とを繋ぎ合わせ、一瞬のうちに移動してしまうスキル。
都市伝説としてしか耳にしたことのないスキルを、彼女はさぞ当たり前のように使うことができるのだ。
体力の消耗が激しいため使えても1日に2、3回程らしいが、それでも僕が驚くには十分だった。
もっともそれを彼女に伝えると、「『進化』に辿り着いたお主のほうがよっぽどすごいと思うがの」と返されてしまったが。そういうものだろうか?

しかし、この力についてはまだまだ謎が多い。
昨夜あの短剣を改めて調べるべく変身してみた。
新たにわかったことと言えば、
・剣全体の形は変身した僕の姿の頭部と胸部回りを模している
・鍔にあたる部分の中心が何かをはめ込むようにひし形に窪んでおり、よく見るとその窪みの下にスリットが設けられている
・変身時、何処からともなく『エヴォリューション』という声が聞こえ、続いて『ジェネス ウェイクアップ』というコールが聞こえる
ということぐらいだ。
特に最後のは意味が分からない。どこから聞こえているのだろうか?そもそもなぜ声が必要なのか?
疑問は尽きないが、声については深く考えないことにしよう。きっとそのほうがいい。

「おーい、目が遠いぞ」
リリンさんの声で、はっと意識を戻す。また、悪い癖が出てしまっていたようだ。
「まったく、考え事に没頭しがちな男じゃのう」
「ご、ごめんなさい」照れくさくなって頭を掻いた。
「支度が済んだら出発するつもりだが、どうじゃ?」
「大丈夫です。今日こそ見つけましょう!」
「うむ」



そして2時間ほど経った後。僕らは再び、火山地帯にやってきた。
早速捜索再開――といきたかったが、ここで異変が起きた。

「危ない!」
突然の閃光。直後、近くの岩が砕ける音とともに、勢いよく爆ぜた。咄嗟にリリンさんを庇う形で覆いかぶさる。
何とか岩の破片には当たらなかったが、何者かからの攻撃を受けたのは明らかだ。
警戒して周囲を見渡す。すると――

「おい、あれを見ろ!」
リリンさんが叫ぶ。背後を振り返ると、そこには。

光球を吐きながら岩肌を駆け降りるトカゲのような怪物と、
「くそっ!うあぁっ!」
それに追い立てられる、白いシャツを身にまとった少女の姿。
その頭には、2対の角が生えている。

「あれってまさか!」
「ああ、竜人族だ!」
まさに探し求めていた存在に遭遇した僕らだったが、喜んでいる場合ではない。今はあの娘を助けなければ!
僕は迷わず短剣を取り出し、トリガーを押して叫ぶ。
「ジェネェーース!」

『エヴォリューション! ジェネス・ウェイクアップ!』コールとともに、僕の体が光り輝く。
腕が、足が。体全てが変質し、力がみなぎる。
「セアッ!」
掛け声とともに僕は飛び立ち、怪物と少女との間に割って入る。打ち出された光球を手のひらで受け止めると、爆風が辺りを包んだ。
煙が晴れると、そこには何だお前は、と言わんばかりに僕を睨む怪物の姿。
僕はそれを受けて、高らかに叫ぶ。

「僕の名は……ジェネス!光を纏い、闇を討つ!」
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