8 / 20
08 光の勇者、ふたたび
しおりを挟む
僕が目を開くと、そこには異様としか言い表せない景色が広がっていた。
水面のような文様が渦巻く、銀色の空間。
しかし、不思議と不快感はない――むしろ、体中に力がみなぎるようだ。
僕は、それにあの少女はいったいどうなってしまったのだ?
その疑問は、すぐに解けた。
「!」
水面に映った、その姿。
人に近しい顔ながら、額に位置するクリスタルから伸びる鶏冠のような部位が目を引く頭部。
首から肩の付け根を覆う防具。胸元や腹、足に走る灰色のライン。
そして胸に輝く、青い発光体。
銀と黒に彩られた『何か』――少女を抱きかかえながら宙に浮かぶそれは。
「僕……なのか」
紛れもなく、自分が変化した存在であった。
僕は、人ならざる姿に変わっていたのだ。
眼下には、目を見開く村人たち――それに、リリンさん。
どうやら無意識のうちに、僕はここまで少女を連れてきていていたようだ。
状況がある程度呑み込めたところで、一旦驚きの感情を頭の隅へと追いやる。
僕が何者であっても構わない。今やるべきことは一つ――村を救うことだ。
静かに着地し、少女を受け渡すと僕は彼女らを見つめ、ただ頷いた。
「もう大丈夫」、そんな思いを込めて。
そして振り返り、村の方角へとすぐさま飛び立った。
※
風を切り裂きながら飛ぶと、みるみるうちに村が近づいてきた。いまだ、巨人たちは民家をなぎ倒し、畑を踏み荒らし――破壊の限りを尽くしていた。
「デァッ!」
僕はさらに加速をつけると、急降下。その勢いに任せ、強烈な蹴りをサイクロプスの横っ面に浴びせる。
その巨体は悲鳴を上げるよりも先に大きく吹き飛び、2度、3度回転してから地面に激突。
「ウガ!?」
「ギギ!?」
それを遅れて知覚した巨人たちが、何事だと言わんばかりに目を見開き、着地した僕の方向を向く。
「フゥン……ッ!」
僕は左腕を曲げて引き、右腕を突き出した構えを取り、腰を落として奴らを見据える。
「フンガ―ッ!」
敵。仲間の仇。そんな感情をむき出しに、一人の巨人が僕目掛けて走り出した。巨体故の歩幅の大きさで、瞬く間に僕の眼前に迫りくる。
そして怒りのままに、僕をその足で踏みつけようとした――が。
「ググ……!?」
その足が地面と僕とを挟みつぶすことはなかった。僕はその足を片手で受け止めると、
「ダッ!」
掛け声とともに、空いたもう片方の手のひらから光弾を放つ。
瞬間。血の一滴すらまき散らさずに、サイクロプスの巨体は消し飛んだ。
「「「ヌッ……ヌガァーー!」」」
その光景を見て、巨人たちは危機を感じたのか、一斉に襲い掛かる。
再び空へと飛び立つことで攻撃を回避すると、奴らはその口から炎を吐き出した。
放たれた5つの火炎は一つとなり、巨大な1つの炎となって僕に迫る。だが。
「チャッ!ハアァァ……!」
僕は落ち着いて両腕を胸の前で交差、力を溜め――
「セェヤァ――ッ!」
解き放った。光の奔流が炎をかき消し、そのまま巨人たちに直撃する。
爆発とともに、光の柱が雲を貫いた。
煙が晴れたとき。そこに悪しき者たちの姿は、もうどこにもなかった。
僕は地面に降り立ち、力を抜く。
割れた窓ガラスに映っていたその姿は、よく知る自分の姿へと戻っていた――
※
「ふん……もう片付けちまったか」
一方。彼の戦いを陰より見つめていた者がいた。
黒い装束を纏い、フードで顔を隠した男。彼は手を掲げ、何かを待っていた。
すると、その手の周りに紫色の粒子が集まってゆき――
「ま、こんな雑魚相手に手こずられても困るがな?」
一つの鍵のような物体が生成される。それにはなんと――
『Cyclops』
先ほど村を襲った、あの巨人の横顔が描かれていた。
男はそれををねっとりと観察してから懐へしまい、空を見上げ――
「戦いはまだ、始まったばかりだ……見せてもらうぜ?お前の『光』がどんなものか」
「ああ~、楽しみだ……」
「なぁ?ハ~ジメ……フフッ♪」
口元をゆがめて、懐かしむように呟いた。
水面のような文様が渦巻く、銀色の空間。
しかし、不思議と不快感はない――むしろ、体中に力がみなぎるようだ。
僕は、それにあの少女はいったいどうなってしまったのだ?
その疑問は、すぐに解けた。
「!」
水面に映った、その姿。
人に近しい顔ながら、額に位置するクリスタルから伸びる鶏冠のような部位が目を引く頭部。
首から肩の付け根を覆う防具。胸元や腹、足に走る灰色のライン。
そして胸に輝く、青い発光体。
銀と黒に彩られた『何か』――少女を抱きかかえながら宙に浮かぶそれは。
「僕……なのか」
紛れもなく、自分が変化した存在であった。
僕は、人ならざる姿に変わっていたのだ。
眼下には、目を見開く村人たち――それに、リリンさん。
どうやら無意識のうちに、僕はここまで少女を連れてきていていたようだ。
状況がある程度呑み込めたところで、一旦驚きの感情を頭の隅へと追いやる。
僕が何者であっても構わない。今やるべきことは一つ――村を救うことだ。
静かに着地し、少女を受け渡すと僕は彼女らを見つめ、ただ頷いた。
「もう大丈夫」、そんな思いを込めて。
そして振り返り、村の方角へとすぐさま飛び立った。
※
風を切り裂きながら飛ぶと、みるみるうちに村が近づいてきた。いまだ、巨人たちは民家をなぎ倒し、畑を踏み荒らし――破壊の限りを尽くしていた。
「デァッ!」
僕はさらに加速をつけると、急降下。その勢いに任せ、強烈な蹴りをサイクロプスの横っ面に浴びせる。
その巨体は悲鳴を上げるよりも先に大きく吹き飛び、2度、3度回転してから地面に激突。
「ウガ!?」
「ギギ!?」
それを遅れて知覚した巨人たちが、何事だと言わんばかりに目を見開き、着地した僕の方向を向く。
「フゥン……ッ!」
僕は左腕を曲げて引き、右腕を突き出した構えを取り、腰を落として奴らを見据える。
「フンガ―ッ!」
敵。仲間の仇。そんな感情をむき出しに、一人の巨人が僕目掛けて走り出した。巨体故の歩幅の大きさで、瞬く間に僕の眼前に迫りくる。
そして怒りのままに、僕をその足で踏みつけようとした――が。
「ググ……!?」
その足が地面と僕とを挟みつぶすことはなかった。僕はその足を片手で受け止めると、
「ダッ!」
掛け声とともに、空いたもう片方の手のひらから光弾を放つ。
瞬間。血の一滴すらまき散らさずに、サイクロプスの巨体は消し飛んだ。
「「「ヌッ……ヌガァーー!」」」
その光景を見て、巨人たちは危機を感じたのか、一斉に襲い掛かる。
再び空へと飛び立つことで攻撃を回避すると、奴らはその口から炎を吐き出した。
放たれた5つの火炎は一つとなり、巨大な1つの炎となって僕に迫る。だが。
「チャッ!ハアァァ……!」
僕は落ち着いて両腕を胸の前で交差、力を溜め――
「セェヤァ――ッ!」
解き放った。光の奔流が炎をかき消し、そのまま巨人たちに直撃する。
爆発とともに、光の柱が雲を貫いた。
煙が晴れたとき。そこに悪しき者たちの姿は、もうどこにもなかった。
僕は地面に降り立ち、力を抜く。
割れた窓ガラスに映っていたその姿は、よく知る自分の姿へと戻っていた――
※
「ふん……もう片付けちまったか」
一方。彼の戦いを陰より見つめていた者がいた。
黒い装束を纏い、フードで顔を隠した男。彼は手を掲げ、何かを待っていた。
すると、その手の周りに紫色の粒子が集まってゆき――
「ま、こんな雑魚相手に手こずられても困るがな?」
一つの鍵のような物体が生成される。それにはなんと――
『Cyclops』
先ほど村を襲った、あの巨人の横顔が描かれていた。
男はそれををねっとりと観察してから懐へしまい、空を見上げ――
「戦いはまだ、始まったばかりだ……見せてもらうぜ?お前の『光』がどんなものか」
「ああ~、楽しみだ……」
「なぁ?ハ~ジメ……フフッ♪」
口元をゆがめて、懐かしむように呟いた。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
召喚された聖女? いえ、商人です
kieiku
ファンタジー
ご依頼は魔物の回収……転送費用がかさみますので、買取でなく引取となりますがよろしいですか?
あとお時間かかりますので、そのぶんの出張費もいただくことになります。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
転移術士の成り上がり
名無し
ファンタジー
ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
異世界召喚されたと思ったら何故か神界にいて神になりました
璃音
ファンタジー
主人公の音無 優はごく普通の高校生だった。ある日を境に優の人生が大きく変わることになる。なんと、優たちのクラスが異世界召喚されたのだ。だが、何故か優だけか違う場所にいた。その場所はなんと神界だった。優は神界で少しの間修行をすることに決めその後にクラスのみんなと合流することにした。
果たして優は地球ではない世界でどのように生きていくのか!?
これは、主人公の優が人間を辞め召喚された世界で出会う人達と問題を解決しつつ自由気ままに生活して行くお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる