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そして勇者は選んだ
71 神は勇者を殺したい
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セナは、ムスカの家を知っていたらしい。迷わずたどり着いたムスカの家は、小さいがしっかりとした作りの、とても居心地の良さそうな建物だった。
急いで鍵を開けて入ると、苦しそうなうなり声が聞こえてくる。
声の聞こえる扉を開けると、一人用には見えない大きいベッドの上で、クロが小さく丸まって、うなされていた。
「クロ!」
セナが、目を閉じたままのクロの手を取って、光の魔力を少しずつ注ごうとした。だが、薄い膜で覆われているかのように、光はクロの手の中には入らず、さらさらと零れていく。
「ユーゴーは、これで少し治まったのに」
焦って、更に光の魔力を注ごうとするセナの背中を、ぽんぽんと叩いた。
「セナ、無理だ。クロは、光の属性をこれっぽっちも持っていない」
軽い鑑定くらいならできる俺の言葉に、セナは落ち着くどころか更に焦りを滲ませた。
「そ、んな……」
ふ、とクロが目を開けた。眉根を寄せたまま、額には脂汗も浮かんでいる。
目が、合った。
「が、あ、あ……」
獣のような声を上げて、クロが飛びかかってくる。あまりの速さに避けきれず、背中から倒れた。頭を打たないように、咄嗟に腹に力を入れながら、のし掛かっているクロの脇腹を掴んだ。
クロは両手を振り上げて、止まる。
俺の顔を見て、いやいや、と首を振る。
「ああ。あああ」
目に涙を浮かべながら、両手が俺の首に下りてきた。
ああ、そうか。
神は、俺を殺してやり直したい。直接の攻撃は、禁止されている。
だから、クロにやらせようと?
腹のそこから怒りが湧いてくる。嫌がるクロを操るのは、禁止事項に触れないのか?それはもはや、直接の攻撃じゃないか。
「やめて。クロ、やめて!」
セナの声に、我に返る。
素早く自分の腕の、光の腕輪を外した。
脇腹から手を外されたクロが、俺の首に両手を当てて力を入れ始めた。
外した光の腕輪を、クロの腕に付ける。これなら、光の属性がなくても、光の魔力を纏うことができるんじゃないだろうか。今朝も、たくさんセナに注いでもらった光の魔力。それがたっぷりと貯められている腕輪。
この人生が始まってからずっと、俺を守ってくれたもの。
うっすらと光った腕輪は、何かに反応するようにしばらく光を放ち、やがてクロの、俺の首を掴んでいた手から力が抜けた。
「あ、ああ。ああああ」
クロは、俺の上に乗ったまま大声を上げて泣き始めた。
大丈夫。大丈夫だよ。
クロがやったなんて、思ってない。
俺が、体を起こして、ぎゅうと抱きしめると、しがみついて泣いた。
ムスカがシャンフウを連れて帰ってきた時には、泣き疲れて寝ていた。
水分を取らせなかったことを、シャンフウに怒られた。
急いで鍵を開けて入ると、苦しそうなうなり声が聞こえてくる。
声の聞こえる扉を開けると、一人用には見えない大きいベッドの上で、クロが小さく丸まって、うなされていた。
「クロ!」
セナが、目を閉じたままのクロの手を取って、光の魔力を少しずつ注ごうとした。だが、薄い膜で覆われているかのように、光はクロの手の中には入らず、さらさらと零れていく。
「ユーゴーは、これで少し治まったのに」
焦って、更に光の魔力を注ごうとするセナの背中を、ぽんぽんと叩いた。
「セナ、無理だ。クロは、光の属性をこれっぽっちも持っていない」
軽い鑑定くらいならできる俺の言葉に、セナは落ち着くどころか更に焦りを滲ませた。
「そ、んな……」
ふ、とクロが目を開けた。眉根を寄せたまま、額には脂汗も浮かんでいる。
目が、合った。
「が、あ、あ……」
獣のような声を上げて、クロが飛びかかってくる。あまりの速さに避けきれず、背中から倒れた。頭を打たないように、咄嗟に腹に力を入れながら、のし掛かっているクロの脇腹を掴んだ。
クロは両手を振り上げて、止まる。
俺の顔を見て、いやいや、と首を振る。
「ああ。あああ」
目に涙を浮かべながら、両手が俺の首に下りてきた。
ああ、そうか。
神は、俺を殺してやり直したい。直接の攻撃は、禁止されている。
だから、クロにやらせようと?
腹のそこから怒りが湧いてくる。嫌がるクロを操るのは、禁止事項に触れないのか?それはもはや、直接の攻撃じゃないか。
「やめて。クロ、やめて!」
セナの声に、我に返る。
素早く自分の腕の、光の腕輪を外した。
脇腹から手を外されたクロが、俺の首に両手を当てて力を入れ始めた。
外した光の腕輪を、クロの腕に付ける。これなら、光の属性がなくても、光の魔力を纏うことができるんじゃないだろうか。今朝も、たくさんセナに注いでもらった光の魔力。それがたっぷりと貯められている腕輪。
この人生が始まってからずっと、俺を守ってくれたもの。
うっすらと光った腕輪は、何かに反応するようにしばらく光を放ち、やがてクロの、俺の首を掴んでいた手から力が抜けた。
「あ、ああ。ああああ」
クロは、俺の上に乗ったまま大声を上げて泣き始めた。
大丈夫。大丈夫だよ。
クロがやったなんて、思ってない。
俺が、体を起こして、ぎゅうと抱きしめると、しがみついて泣いた。
ムスカがシャンフウを連れて帰ってきた時には、泣き疲れて寝ていた。
水分を取らせなかったことを、シャンフウに怒られた。
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