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そして勇者は選んだ
44 本棚を守れ
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「な、な、なん……なんという……」
王は、言葉もろくに喋れなくなったようだ。騎士たちも、剣を構えてはいるが向かってくる気配はない。もし向かってきたとしても、迷いのある剣に遅れをとる者は、こちら側にはいなかった。
「そなたをこの町の領主として任命したのは、陛下である。そなたは、陛下の命に従わねばならん」
宰相が、慌てて口を開いた。
「ええ、任命書がある限り、私はこの町の責任者です。解任なさるなら、その旨を記した書類を頂きたい。そして、次の領主へ、しっかりと仕事を引き継いでからこちらを去ろうと思います。それまでは、私が領主です」
「か、解任する。お前などこの町の領主ではない」
王の言葉に領主は即答する。
「ええ、分かりました。書類をいただき次第、そのように致しましょう。そして次の方へ引き継ぎを致します。まずは、この部屋をそろそろお返し頂きたい。または、入室の許可を頂きたい。仕事の資料や大切な書類のひな型は、ここの本棚にあるのだと再三申し上げておる筈です。運び出すにも数日はかかるというのに、中へ入る許可すら得られないのでは、町の運営に支障が出てくる」
会話を聞いて、騎士たちが顔を見合わせる気配があった。廊下には、どんどんと騎士が増えている。これだけの騒ぎなら、駆け付けて当然だろう。
「父上。何の騒ぎですか!?」
第二王子まで駆け付けてくるとは思わなかったが。
「レストレイジ、ちょうどよい。こやつら全て反逆者だ。お前のその剣士のスキルで捕らえよ。殺しても構わん」
「あ、自称勇者の人」
セナが思わず、といった感じで呟いた。俺もずっとそう呼んでたよ。やっぱり、その呼び名になるよな。
「お、前……。自称聖者。あの時はよくも……」
え?セナを自称聖者だって?セナは自分で名乗ったりしないぞ?
「レストレイジ殿下!彼は神託の聖者です。滅多なことを口にされるとまた、天罰が……」
レストレイジは、宰相の言葉に、頭に血を上らせた。
「あれは天罰などではない!必ず犯人を捕まえて八つ裂きにしてくれるわ!」
『ばちんっ』
レストレイジが勇ましく抜き放った剣に、雷が落ちる。
「うわあああああ!」
「懲りない奴……」
「前もやったのか?」
俺の呟きに、領主が反応した。
「あ、はい。本棚は守ります」
と言えば、一度動きを止めてから、頼むよ、と言った。そして、きりっと前を向く。頼りになりそうな中年の男性を見たのは初めてかもしれない。
「宰相閣下。ご決断を。お触れを撤回しない、このままの状態を続けられるというのなら、私は反逆者にでもなりましょう」
王は、言葉もろくに喋れなくなったようだ。騎士たちも、剣を構えてはいるが向かってくる気配はない。もし向かってきたとしても、迷いのある剣に遅れをとる者は、こちら側にはいなかった。
「そなたをこの町の領主として任命したのは、陛下である。そなたは、陛下の命に従わねばならん」
宰相が、慌てて口を開いた。
「ええ、任命書がある限り、私はこの町の責任者です。解任なさるなら、その旨を記した書類を頂きたい。そして、次の領主へ、しっかりと仕事を引き継いでからこちらを去ろうと思います。それまでは、私が領主です」
「か、解任する。お前などこの町の領主ではない」
王の言葉に領主は即答する。
「ええ、分かりました。書類をいただき次第、そのように致しましょう。そして次の方へ引き継ぎを致します。まずは、この部屋をそろそろお返し頂きたい。または、入室の許可を頂きたい。仕事の資料や大切な書類のひな型は、ここの本棚にあるのだと再三申し上げておる筈です。運び出すにも数日はかかるというのに、中へ入る許可すら得られないのでは、町の運営に支障が出てくる」
会話を聞いて、騎士たちが顔を見合わせる気配があった。廊下には、どんどんと騎士が増えている。これだけの騒ぎなら、駆け付けて当然だろう。
「父上。何の騒ぎですか!?」
第二王子まで駆け付けてくるとは思わなかったが。
「レストレイジ、ちょうどよい。こやつら全て反逆者だ。お前のその剣士のスキルで捕らえよ。殺しても構わん」
「あ、自称勇者の人」
セナが思わず、といった感じで呟いた。俺もずっとそう呼んでたよ。やっぱり、その呼び名になるよな。
「お、前……。自称聖者。あの時はよくも……」
え?セナを自称聖者だって?セナは自分で名乗ったりしないぞ?
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「あれは天罰などではない!必ず犯人を捕まえて八つ裂きにしてくれるわ!」
『ばちんっ』
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「うわあああああ!」
「懲りない奴……」
「前もやったのか?」
俺の呟きに、領主が反応した。
「あ、はい。本棚は守ります」
と言えば、一度動きを止めてから、頼むよ、と言った。そして、きりっと前を向く。頼りになりそうな中年の男性を見たのは初めてかもしれない。
「宰相閣下。ご決断を。お触れを撤回しない、このままの状態を続けられるというのなら、私は反逆者にでもなりましょう」
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