【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

そして勇者は選んだ

38 言いがかり

　町を治めている貴族の館が接収され、王の居城となっている。町を治めていた領主はとても慕われていたので、いきなりやって来て、自分達の領主さまを家から追い出した王家や貴族家への町民の印象は最悪だった。騎士団も同じである。この町は、冒険者が多いにも関わらず乱暴な問題が少なく、騎士団と冒険者ギルドが上手く機能して助け合っていた。その、町の平和を守る騎士団を追い出した王都の騎士団とやらが、町のあちらこちらで無銭飲食を始めた。冗談ではない。
　王のお触れだか何だか知らないが、無料で渡していては料理屋の生活が成り立たない。更にその他の日用品などもお金を払わなくて良いと言っているらしい、と聞いて、店屋はとりあえず開けるのをやめたらしい。
　朝の騒ぎが落ち着いた料理屋も、問題の解決にはならないが、このままでは商売にならないと早々に店を閉めた。冒険者ギルドに護衛の依頼を出して警護を立てている所も、戦闘になって店が壊れてはたまらない、と店を閉めて、店の前に護衛を置いている。

「開けろ」

　と怒鳴り声を上げる騎士や貴族家の家人、それに対応する護衛の冒険者だけが見られるようになった町の中を『護るもの』パーティは歩いていた。
　やはりセナが王の元へ行くしかない、と結論が出たのは、昼。昼時には、開けていた料理屋も皆、店じまいしてしまい、自炊することなどほとんど無い冒険者たちは、ほとほと困ってしまったのだ。
　店の護衛のふりをして店に入り、持ち帰りの食事を作ってもらい金を払って裏口から出る、という手段であちらこちらの店から食事を集めては来たが、いつまでも取れる手段ではない。それに、一般の客はその手法を取れないので、本当に困ってしまう。
　というわけで『護るもの』パーティで王の元へと訪れた。
　あっさりと応接室へ通れたのは、城のように手順を踏むための人材がいないからか。城のような造りではない屋敷では、人を待たせる場所もあまりないからか。仕事がないからか。
　
「聖者……。お前、こんなところに……」

　四人でソファに腰を下ろして待っていると、宰相が現れた。久しぶりだな。
　俺たちが黙っていると、怒りを滲ませた言葉が漏れてくる。

「お前だ……。お前が王都から出たがために、王都はあのようなことになったに違いない」

　とんでもない言いがかりが始まったぞ……。