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そして勇者は選んだ
20 未来を見据えて
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「冒険者ギルドは、自治を貫く。今まで通りだ。」
おおお、と部屋がどよめく。賛同と称賛の声が耳をついた。少し落ち着いた所に、騎士団長が声を上げる。
「騎士団は、王の命令に従わなくてはならない。」
一度落ち着いた建物内に、なんだって?敵対すんのか?出てけ!といった荒っぽい声が上がった。
「だが、命令に従い、我らの屯所と寄宿舎を明け渡した時に、代わりの我らの居場所の提示が無かった。」
騎士団長は、気にせず続ける。
「上の方からの指示は、王都の騎士団の命令に従え、とのことであったが、この後の我らの所属について尋ねた所、こちらだけで十分に事足りるため、お前らはいらない、と言われた。」
ざわざわざわ、と荒っぽい言葉は消えていく。
「つまり我々は、騎士団をくびになったということだ。俺の力が足りず申し訳ない。」
深々と頭を下げる騎士団長を、皆が呆然と見つめる。
「各人、生活もあろう。俺にできる範囲で力にはなりたいと思う。とりあえず、金を稼いで住む場所を確保しなくてはならない。ギルドマスター、我々を冒険者として登録させてくれ。」
一度頭を上げてギルドマスターの方を向き、もう一度頭を下げた。
「頭を上げろ、ザイオン。冒険者になるのは、国民全員に与えられた権利だ。誰だって登録して仕事できるさ。」
「すまん。突然大勢で詰めかけて。君たちの仕事を奪おうという訳ではないんだが。」
「いーや、大歓迎だ。あっという間に皆Bランクさ。」
ぱちん、とウインクしながらギルドマスターが答える。
Bランク。
「あはははは。」
ムスカの笑い声がした。
「Bより上になったら、騎士団に戻れるな。」
「戻りたい者には配慮する。Aランクの称号を貰えるように協力しよう。」
騎士団長のどこまでも真面目な物言いに、ムスカが空気を読んで口をつぐむ。
話は纏まったようだ。
「で、どうする、マスター?急にやってきて威張り散らしてる奴らを放っておくのか?」
「人間同士で争ってる場合じゃない。」
騎士団の冒険者登録が始まって、受付の近くから避けた先で、上位ランクの冒険者たちが話している。
確かにそうだ。王都の連中は、大量に出た魔物を倒さずに逃げてきた。逃げる手段の無い人々を囮にしてきたのだとして、王都の餌が無くなれば、その魔物たちはその後、どうするだろう?
「結界を、町に張ろうか?」
セナが強い目でギルドマスターを見る。
「いや、この町だけを守っていても、その魔物は更に餌を求めて移動するのじゃないか?」
「あ……。」
周りの町や村がどんどんと魔物で溢れて、人が消えて、そんな中、結界で守られた町はそこだけで存在し続ける。
小さな国の周りには魔物しかいない。
そして、セナの魔力が尽きた時に、国は滅ぶのだ。
そんな未来を、聞いていた者は垣間見たのだろう。
「迎え撃つしかねえな。」
「全部倒せば、しばらく食い物にも困らんだろ。」
わはははは。
明るい笑い声に、救われる。
この人たちとなら、共に戦ってもいい。
俺が、ぐっと拳を握った時だった。
ざわっと建物内がざわめく。
冒険者ギルドの扉から、王都の騎士服を身に付けた騎士が入ってきた。
「結界術に優れた冒険者がおると聞いた。王命である。今すぐ御前に参れ。」
おおお、と部屋がどよめく。賛同と称賛の声が耳をついた。少し落ち着いた所に、騎士団長が声を上げる。
「騎士団は、王の命令に従わなくてはならない。」
一度落ち着いた建物内に、なんだって?敵対すんのか?出てけ!といった荒っぽい声が上がった。
「だが、命令に従い、我らの屯所と寄宿舎を明け渡した時に、代わりの我らの居場所の提示が無かった。」
騎士団長は、気にせず続ける。
「上の方からの指示は、王都の騎士団の命令に従え、とのことであったが、この後の我らの所属について尋ねた所、こちらだけで十分に事足りるため、お前らはいらない、と言われた。」
ざわざわざわ、と荒っぽい言葉は消えていく。
「つまり我々は、騎士団をくびになったということだ。俺の力が足りず申し訳ない。」
深々と頭を下げる騎士団長を、皆が呆然と見つめる。
「各人、生活もあろう。俺にできる範囲で力にはなりたいと思う。とりあえず、金を稼いで住む場所を確保しなくてはならない。ギルドマスター、我々を冒険者として登録させてくれ。」
一度頭を上げてギルドマスターの方を向き、もう一度頭を下げた。
「頭を上げろ、ザイオン。冒険者になるのは、国民全員に与えられた権利だ。誰だって登録して仕事できるさ。」
「すまん。突然大勢で詰めかけて。君たちの仕事を奪おうという訳ではないんだが。」
「いーや、大歓迎だ。あっという間に皆Bランクさ。」
ぱちん、とウインクしながらギルドマスターが答える。
Bランク。
「あはははは。」
ムスカの笑い声がした。
「Bより上になったら、騎士団に戻れるな。」
「戻りたい者には配慮する。Aランクの称号を貰えるように協力しよう。」
騎士団長のどこまでも真面目な物言いに、ムスカが空気を読んで口をつぐむ。
話は纏まったようだ。
「で、どうする、マスター?急にやってきて威張り散らしてる奴らを放っておくのか?」
「人間同士で争ってる場合じゃない。」
騎士団の冒険者登録が始まって、受付の近くから避けた先で、上位ランクの冒険者たちが話している。
確かにそうだ。王都の連中は、大量に出た魔物を倒さずに逃げてきた。逃げる手段の無い人々を囮にしてきたのだとして、王都の餌が無くなれば、その魔物たちはその後、どうするだろう?
「結界を、町に張ろうか?」
セナが強い目でギルドマスターを見る。
「いや、この町だけを守っていても、その魔物は更に餌を求めて移動するのじゃないか?」
「あ……。」
周りの町や村がどんどんと魔物で溢れて、人が消えて、そんな中、結界で守られた町はそこだけで存在し続ける。
小さな国の周りには魔物しかいない。
そして、セナの魔力が尽きた時に、国は滅ぶのだ。
そんな未来を、聞いていた者は垣間見たのだろう。
「迎え撃つしかねえな。」
「全部倒せば、しばらく食い物にも困らんだろ。」
わはははは。
明るい笑い声に、救われる。
この人たちとなら、共に戦ってもいい。
俺が、ぐっと拳を握った時だった。
ざわっと建物内がざわめく。
冒険者ギルドの扉から、王都の騎士服を身に付けた騎士が入ってきた。
「結界術に優れた冒険者がおると聞いた。王命である。今すぐ御前に参れ。」
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