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世界の平和を祈った聖者の話
24 扉の向こう
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結界を外すと、扉の向こうの音が聞こえてくる。はっきりとした言葉などは聞き取れないが、たくさんの人がいる気配は感じた。ざわざわとした声は止んでいない。扉への物理攻撃は諦めたようで、すぐに扉が破壊されて崩れることは無かった。
「開けるぞ。」
「いや、待て。いきなり攻撃されると面倒だ。あちらから開けさせよう。」
すぐに扉に手をかけたガウナーをマールクが止める。俺は、部屋を囲っていた結界を外した後で、一人一人への結界を張った。
『縦の糸は金の糸。横の糸は銀の糸。織り重なりて姿を隠し、この部屋の人を囲め。』
光の糸が、部屋の中の聖女とマールク、ガウナー、自分にも降り注ぎ、縦に横に紡がれる様子が目に映った後で消えた。
「いいよ。」
俺が言うと、側にいた年若い聖女が感嘆の声を上げる。
「なんて綺麗な光の魔力。そして心地好いのね。きっとあなたに治療される方は幸せね。」
「え?」
「こんな気持ちの良い魔力で癒されたら、きっと心まで届くはずだもの。」
「そう?ありがとう……。」
俺が、もらった対価分しか治療しないと知ったら彼女は軽蔑するだろうか?同じくらいの年齢の聖女の顔を見つめて、複雑な返事をする。
その時、扉がバキン、と吹き飛んだ。扉前にいたガウナーを掠めて扉が吹き飛んでいった。結界が作動したので、体に当たることはなかったようだ。誰かが蹴り飛ばしたらしい。おおお、とざわめきが聞こえて、扉近くの者がお互いに臨戦体勢を取った。すぐに踏み込んでくることはなく、警戒している。
様子を伺えば、扉を蹴り飛ばしたのは冒険者のようだった。周りに警備隊の制服を着た五人ほどが警棒を構えて立っていた。制服ではないので見分けが難しいが、冒険者も幾人かいる。
その後ろでは人々が神官を取り囲み、治療を迫っているのが見えた。扉を閉める前と違うのは、警備隊と冒険者がいることだけ。何も変わらないことに落胆しながら声を上げる。
「聖女は、治療することを望んでいる。あまりに衰弱が激しかったので癒しの魔法をかけたら寝てしまったのだ。ごはんを食べてから治療を開始するので、食べ物が欲しい。」
俺の言葉に、え?と反応したのは聖女たちだった。
「聖者さま。食べてから治療すると粗相をすることがあるのです。」
「なので私たちはあまり食べません。」
俺は首を横に振った。
「人は、食べなきゃ死ぬんだよ。」
「夜に少し頂くこともあります。」
「食べずに、魔力以上の治療を続けるのは死にたいから?」
こちらの話は聞こえていたらしい。扉を蹴り飛ばした冒険者が部屋へと入ってきた。この町で一番強い冒険者は、大した警戒もなく近寄ってくる。
「食べ物をここへ運ばせたらいいのか?」
面白そうな顔をしたムスカが言った。
「開けるぞ。」
「いや、待て。いきなり攻撃されると面倒だ。あちらから開けさせよう。」
すぐに扉に手をかけたガウナーをマールクが止める。俺は、部屋を囲っていた結界を外した後で、一人一人への結界を張った。
『縦の糸は金の糸。横の糸は銀の糸。織り重なりて姿を隠し、この部屋の人を囲め。』
光の糸が、部屋の中の聖女とマールク、ガウナー、自分にも降り注ぎ、縦に横に紡がれる様子が目に映った後で消えた。
「いいよ。」
俺が言うと、側にいた年若い聖女が感嘆の声を上げる。
「なんて綺麗な光の魔力。そして心地好いのね。きっとあなたに治療される方は幸せね。」
「え?」
「こんな気持ちの良い魔力で癒されたら、きっと心まで届くはずだもの。」
「そう?ありがとう……。」
俺が、もらった対価分しか治療しないと知ったら彼女は軽蔑するだろうか?同じくらいの年齢の聖女の顔を見つめて、複雑な返事をする。
その時、扉がバキン、と吹き飛んだ。扉前にいたガウナーを掠めて扉が吹き飛んでいった。結界が作動したので、体に当たることはなかったようだ。誰かが蹴り飛ばしたらしい。おおお、とざわめきが聞こえて、扉近くの者がお互いに臨戦体勢を取った。すぐに踏み込んでくることはなく、警戒している。
様子を伺えば、扉を蹴り飛ばしたのは冒険者のようだった。周りに警備隊の制服を着た五人ほどが警棒を構えて立っていた。制服ではないので見分けが難しいが、冒険者も幾人かいる。
その後ろでは人々が神官を取り囲み、治療を迫っているのが見えた。扉を閉める前と違うのは、警備隊と冒険者がいることだけ。何も変わらないことに落胆しながら声を上げる。
「聖女は、治療することを望んでいる。あまりに衰弱が激しかったので癒しの魔法をかけたら寝てしまったのだ。ごはんを食べてから治療を開始するので、食べ物が欲しい。」
俺の言葉に、え?と反応したのは聖女たちだった。
「聖者さま。食べてから治療すると粗相をすることがあるのです。」
「なので私たちはあまり食べません。」
俺は首を横に振った。
「人は、食べなきゃ死ぬんだよ。」
「夜に少し頂くこともあります。」
「食べずに、魔力以上の治療を続けるのは死にたいから?」
こちらの話は聞こえていたらしい。扉を蹴り飛ばした冒険者が部屋へと入ってきた。この町で一番強い冒険者は、大した警戒もなく近寄ってくる。
「食べ物をここへ運ばせたらいいのか?」
面白そうな顔をしたムスカが言った。
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