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世界の平和を祈った聖者の話
12 気持ちを知る
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冒険者のランクは最上級はSであるらしい。今現在、存在していない。昔、鑑定の儀が行われていない時代に居たことがあると伝わっている。今は、鑑定の儀で素晴らしい力を持っていることが分かると王家の騎士団に所属させられるので、Aランクの冒険者ですらほとんど存在しない。ムスカは数少ないソロのAランク。知らない冒険者はいないほどの者だった。王都にいると騎士団からの勧誘がうるさいので、この隣町に拠点を置いて活動している。
マールクとガウナーは最近評判のBランク冒険者で、実力はすでにAランクだと噂されていた。冒険者になってからの期間が短いため、そんなすぐにAランクに上げては駄目だ、と反対意見が出てもう少し実力を確かめることになった、と言われている。全部聞いた話だけど。
お互いに知り合いでも何の不思議もない。
それに、パーティ『護るもの』は結成時からAランクというとんでもないパーティ。知られていない方がおかしいと言えた。
「ムスカさん?先日も大怪我をしたと聞きましたが、また何か?」
マールクは部屋に入ってきて、ムスカがいることに驚きの声を上げた。
「いや、怪我はしていない。マールク、君こそ怪我か?」
うわ、この人意地が悪い?俺が『護るもの』のセナだと気付いたんだから、パーティメンバーのマールクとガウナーがここに訪ねてくるのは怪我が理由じゃないだろう?
「ああ、いえ。この子は俺たちと暮らしているので、迎えに。」
「ムスカさんは怪我がないなら、何故ここに?」
マールクが平然と答え、ガウナーが淡々と尋ねるとムスカは溜め息を吐いた。
「何だ。慌てもしないんだな。」
「…………。」
「ここの治癒師に治療してもらってから、体の調子が良い。最近衰えてきたからあんな怪我をしたというのに、怪我の後、まるで全盛期のように絶好調だ。」
「それは何より。あなたは貴重な方ですから。」
「引退を考えて仕事は減らしていた。その上で怪我をしたから、もう完全に気持ちは切れた。」
「ああ、成る程。」
のんびりと付き添い人用の椅子に腰掛けながらムスカが言うと、マールクは固い声で返事をした。
たぶん、ムスカの衰えだけじゃない。魔物が強くなっている。それを冒険者たちは肌で感じている。
世代交代が上手くいかないまま魔物は強くなって、世界は静かに滅びへの道をたどる。
「余生をのんびり過ごしたいと思ったときに、ここの治療師が浮かんでな。腕が良いのに何故教会に捕まっていないのかとか、一人でやってて危険は無いのかとか、気になったから様子を見にきた。」
「お気遣いありがとうございます。一応、彼自身もBランク冒険者なので大丈夫ですよ。」
俺は、掃除を終えると甕に無造作に入れてある高級だろう聖水をコップに汲んだ。
「これ飲んで帰って。」
マールクとガウナーにもコップを渡す。一日、冒険者活動をしてきたのだから疲れただろう。俺の聖水は体力回復にもってこいだ。
「これは、また……。」
聖水を飲んだムスカが何か言いたそうにしているけど、この人が何か言えば言うほど、自分が一緒にいたい人が誰かをはっきり自覚してしまう。
「心配してくれてありがとう。俺に守り手は必要ないし、共に戦う仲間はとっくにいるんだ。」
マールクとガウナーは最近評判のBランク冒険者で、実力はすでにAランクだと噂されていた。冒険者になってからの期間が短いため、そんなすぐにAランクに上げては駄目だ、と反対意見が出てもう少し実力を確かめることになった、と言われている。全部聞いた話だけど。
お互いに知り合いでも何の不思議もない。
それに、パーティ『護るもの』は結成時からAランクというとんでもないパーティ。知られていない方がおかしいと言えた。
「ムスカさん?先日も大怪我をしたと聞きましたが、また何か?」
マールクは部屋に入ってきて、ムスカがいることに驚きの声を上げた。
「いや、怪我はしていない。マールク、君こそ怪我か?」
うわ、この人意地が悪い?俺が『護るもの』のセナだと気付いたんだから、パーティメンバーのマールクとガウナーがここに訪ねてくるのは怪我が理由じゃないだろう?
「ああ、いえ。この子は俺たちと暮らしているので、迎えに。」
「ムスカさんは怪我がないなら、何故ここに?」
マールクが平然と答え、ガウナーが淡々と尋ねるとムスカは溜め息を吐いた。
「何だ。慌てもしないんだな。」
「…………。」
「ここの治癒師に治療してもらってから、体の調子が良い。最近衰えてきたからあんな怪我をしたというのに、怪我の後、まるで全盛期のように絶好調だ。」
「それは何より。あなたは貴重な方ですから。」
「引退を考えて仕事は減らしていた。その上で怪我をしたから、もう完全に気持ちは切れた。」
「ああ、成る程。」
のんびりと付き添い人用の椅子に腰掛けながらムスカが言うと、マールクは固い声で返事をした。
たぶん、ムスカの衰えだけじゃない。魔物が強くなっている。それを冒険者たちは肌で感じている。
世代交代が上手くいかないまま魔物は強くなって、世界は静かに滅びへの道をたどる。
「余生をのんびり過ごしたいと思ったときに、ここの治療師が浮かんでな。腕が良いのに何故教会に捕まっていないのかとか、一人でやってて危険は無いのかとか、気になったから様子を見にきた。」
「お気遣いありがとうございます。一応、彼自身もBランク冒険者なので大丈夫ですよ。」
俺は、掃除を終えると甕に無造作に入れてある高級だろう聖水をコップに汲んだ。
「これ飲んで帰って。」
マールクとガウナーにもコップを渡す。一日、冒険者活動をしてきたのだから疲れただろう。俺の聖水は体力回復にもってこいだ。
「これは、また……。」
聖水を飲んだムスカが何か言いたそうにしているけど、この人が何か言えば言うほど、自分が一緒にいたい人が誰かをはっきり自覚してしまう。
「心配してくれてありがとう。俺に守り手は必要ないし、共に戦う仲間はとっくにいるんだ。」
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