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世界の平和を祈った聖者の話
9 今までは
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天気の良い午前中は、水汲みの依頼を受ける。
ガウナーは、水魔法で目の前に大きな皮袋三つ分くらいの水を浮かべて悠々と歩き、俺は皮袋二つを、光魔法で出した光の鞭を編み上げて浮かべ、運んでいる。マールクは、自分に身体強化を一定時間かけることができるので、皮袋二つを軽々と持っている。
もはやお散歩だ。
森の中は魔物と戦っている冒険者がたくさんいるので、邪魔にならないようにだけ気をつけている。
この森のなかにある滝の水は美味しいだけでなく、とても魔力を通しやすい水だったので、依頼されたよりたくさん運んでも、冒険者ギルドで高値で買い取ってくれた。教会に良く売れるらしい。光の魔力を通して聖水にするのだそうだ。
上質な光の魔力を通すと、体力が回復したり呪いを解いたりできるらしい。
それを聞いてうちの治療院の飲み水にも使っている。もちろん俺が光の魔力を通すので、最上級の聖水になっているはずだ、たぶん。今のところ、治療後に飲ませたり持ち帰らせたりするだけで売ってないけど。
それをやり出すと、はっきり証拠が残ってしまう。
俺が存在する、という証拠が。
今している程度の治療院なら、ある日突然消えていてもすぐに忘れてもらえると思うのだ。そんなのあったかな、というくらいの存在にしておきたい。
そのために、かつらまで被って丁寧な口調で話して頑張っている。酷い怪我の人を完治させたことは無いから、冒険者は廃業になる人が多いんだろう。怪我人を連れてきた者も、値段が高いことが分かっているのでまた来るようなことはない。
だから、冒険者活動をしている俺に気付く者もいなかった。
今までは。
午後、昼ごはんを食べてマールクとガウナーと別れ、治療院へ入る。マールクとガウナーは、その後も依頼が残っていれば受けて、王都と反対側の町へ向かう馬車の護衛などもしているらしい。
依頼が無ければ、ダンジョンという魔物がどんどん湧いて出る洞窟に潜って魔物を狩ってるんだって。倒した魔物が落とすアイテムが高値で売れるらしい。今度、天気の悪い午前中に俺も連れていってもらおうかなと思っている。
天気が悪い時は俺は、朝から治療院で薬草と聖水を混ぜて体力回復薬を作ったり、解毒薬を作ったりしている。図書館で本を借りて人体の構造を勉強しようとしたけど、俺は字を読むのが苦手でどうにも頭に入らなかった。薬の作り方も、図解の部分だけを見てやってるから適当。でも、冒険者ギルドに持っていったら買い取ってくれて、その後注文がきたので、それなりに効き目はあるようだ。良い稼ぎになっている。
そんな感じで、お金にも困らず、レベルも上げて人助けもできるという、俺なりに快適な生活を送っていた。
今までは。
今日も、教会横の治療院に行っていたら間に合わなかっただろうな、という怪我の冒険者を二人、命を繋ぐ程度に治した。そのくらいしかお金を持っていなかったからだ。冒険者に戻れる程度まで治したければ、お金を持ってまた来て、と言うと、偽聖女が、とかなんとか喚いて掴みかかってきた。
いつも通り、光の鞭を出して撃退しようとしていると、扉が開く。
入ってきた人物は、胸倉を掴まれた俺を見ると物凄い速さで近付いてきて相手の手を捻り上げた。
「いっ、なんだ、何を……。」
「聖女に乱暴するなんて、天罰が当たるぞ。」
少し怒った声音は、先日ちぎれかけた左腕をくっ付けてやったムスカだった。
ガウナーは、水魔法で目の前に大きな皮袋三つ分くらいの水を浮かべて悠々と歩き、俺は皮袋二つを、光魔法で出した光の鞭を編み上げて浮かべ、運んでいる。マールクは、自分に身体強化を一定時間かけることができるので、皮袋二つを軽々と持っている。
もはやお散歩だ。
森の中は魔物と戦っている冒険者がたくさんいるので、邪魔にならないようにだけ気をつけている。
この森のなかにある滝の水は美味しいだけでなく、とても魔力を通しやすい水だったので、依頼されたよりたくさん運んでも、冒険者ギルドで高値で買い取ってくれた。教会に良く売れるらしい。光の魔力を通して聖水にするのだそうだ。
上質な光の魔力を通すと、体力が回復したり呪いを解いたりできるらしい。
それを聞いてうちの治療院の飲み水にも使っている。もちろん俺が光の魔力を通すので、最上級の聖水になっているはずだ、たぶん。今のところ、治療後に飲ませたり持ち帰らせたりするだけで売ってないけど。
それをやり出すと、はっきり証拠が残ってしまう。
俺が存在する、という証拠が。
今している程度の治療院なら、ある日突然消えていてもすぐに忘れてもらえると思うのだ。そんなのあったかな、というくらいの存在にしておきたい。
そのために、かつらまで被って丁寧な口調で話して頑張っている。酷い怪我の人を完治させたことは無いから、冒険者は廃業になる人が多いんだろう。怪我人を連れてきた者も、値段が高いことが分かっているのでまた来るようなことはない。
だから、冒険者活動をしている俺に気付く者もいなかった。
今までは。
午後、昼ごはんを食べてマールクとガウナーと別れ、治療院へ入る。マールクとガウナーは、その後も依頼が残っていれば受けて、王都と反対側の町へ向かう馬車の護衛などもしているらしい。
依頼が無ければ、ダンジョンという魔物がどんどん湧いて出る洞窟に潜って魔物を狩ってるんだって。倒した魔物が落とすアイテムが高値で売れるらしい。今度、天気の悪い午前中に俺も連れていってもらおうかなと思っている。
天気が悪い時は俺は、朝から治療院で薬草と聖水を混ぜて体力回復薬を作ったり、解毒薬を作ったりしている。図書館で本を借りて人体の構造を勉強しようとしたけど、俺は字を読むのが苦手でどうにも頭に入らなかった。薬の作り方も、図解の部分だけを見てやってるから適当。でも、冒険者ギルドに持っていったら買い取ってくれて、その後注文がきたので、それなりに効き目はあるようだ。良い稼ぎになっている。
そんな感じで、お金にも困らず、レベルも上げて人助けもできるという、俺なりに快適な生活を送っていた。
今までは。
今日も、教会横の治療院に行っていたら間に合わなかっただろうな、という怪我の冒険者を二人、命を繋ぐ程度に治した。そのくらいしかお金を持っていなかったからだ。冒険者に戻れる程度まで治したければ、お金を持ってまた来て、と言うと、偽聖女が、とかなんとか喚いて掴みかかってきた。
いつも通り、光の鞭を出して撃退しようとしていると、扉が開く。
入ってきた人物は、胸倉を掴まれた俺を見ると物凄い速さで近付いてきて相手の手を捻り上げた。
「いっ、なんだ、何を……。」
「聖女に乱暴するなんて、天罰が当たるぞ。」
少し怒った声音は、先日ちぎれかけた左腕をくっ付けてやったムスカだった。
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