【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ

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小さな幸せを願った勇者の話

72 冒険者ギルドの事情

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 昼食後、掲示板を見に行く。いつでも募集、のE、Dランク向けの薬草採取の依頼と、Aランク向けの魔物討伐の依頼が三件。Cランク向けの、水質の良い湖の水を汲んでくる依頼が二件。先程のCランク向けの魔獣の角を採取する依頼はもう、この四人で行くことにして申請したから、残っているものはそれだけだった。

「このAランクの依頼は受けたら駄目かな。」

 この依頼一つで小金貨一枚もらえるらしい。つまり、銀貨五十枚!
 
「うーん。俺たちなら倒せると思うけど、Dランクが受けていいのか?」

 王都の北門を出てすぐ横に広がる森の魔物ではなく、森から少し離れた水質の良い湖付近に出没するようになった魔物だそうだ。湖の水を汲んでくる、というクエストができなくなって困っているらしい。だから、Cランク向けの水汲みも残っているのか。では、倒して水を汲んできたら荒稼ぎできる?

「魔獣の角の件を受けてしまったから、とりあえずそちらをやってしまおう。」
「でも、一件だけじゃもったいない。どうせ出るなら二つ三つ一気にやりたい。」

 聞いてみたら、ランク違いの依頼は本来、断るけれど、全責任を自分達で取る、と一筆書いてくれるならやってもらいたい、とのことだった。

「高ランクのパーティがほとんどいなくてね。高ランク向けの依頼が溜まっていくばかりなの。」

 受付のお姉さんは、困ったように笑う。

「十五年前に鑑定の儀が始まってからだな。強い力の治癒魔法の使い手が全て、教会と王家に連れていかれるようになった。そして、どんどん死んじまう。……あいつら、分かってて使い潰してやがる。治癒や回復の使い手がいなけりゃ、冒険者のパーティが高ランクになるのは難しい。思いきって突っ込めないからな。だから、冒険者ギルドは廃れる一方さ。最近じゃ、冒険者ギルドじゃなくて便利屋だ、なんて呼ばれてる。」

 カードを作ったときにも様子を見に来て、今回の昇格試験の試験官もしてくれた壮年の男性が、独り言のように言った。この大きな冒険者ギルドの責任者であるらしい。マスター、と受付のお姉さんに呼ばれている。

「治癒魔法のこと、ご存知なんですか。」
「聖女は寿命が短いってデマは、反吐が出そうな気分で聞いてるよ。」

 セナと顔を見合わせた。
 俺たち家族以外にも、知っている人がいた!
 色々と話を聞いてみたい。
 だが、まずは金だ。

「マスター。Aランクの依頼、受けます。水も汲んできます。馬車は幾らで借りられますか?」
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