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小さな幸せを願った勇者の話
60 一般寮の食堂
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少しそれぞれの部屋に分かれて休んでから、四人で食堂まで出かけた。
特別寮は人の気配が少なく、この時間にも、食べ物の匂いがあまりしない。一番、出入り口に近い部屋で、近くの部屋に人の気配がないから、ということもあるのだろう。人と出会わずに出入りできたことに、正直ほっとした。こんな所に住む方々と出会っても、面倒の予感しかしない。
一般寮は、少し離れて建っているとはいえ魔法学校の敷地内にあるので、五分も歩けばたどり着いた。
こちらの寮は、ざわざわと人の気配が多く、食べ物の良い匂いが漂っている。
「ああ。落ち着く。」
セナが呟く。
同感だ。早々にこちらに入れてもらいたいもんだ。
管理人室があったので、食堂を利用してもよいかと再度確認して、四人で足を踏み入れた。
見知らぬ四人組、しかも二人はあきらかに学生ではない年齢の騎士服なので、そこにいた者たちが全てこちらを向いたのではないか、と思うほどに注目を浴びた。学生の食堂ならではの喧騒が止んで、しんと静まりかえる。
セナが俺の服をぎゅっと握るので、その手をぽんぽんと叩いて笑って見せる。
「どんなご飯かな?」
と言うと、ようやく力が抜けた。
行列になっているので、並んで前の人の真似をする。前世での食事の記憶が薄いのは、死なないために摂っていたから。味とか、どうでも良かったし、手早く摂れることを目的にしてたから、のんびり食べた記憶もあまりない。時々、セナが一生懸命食べている姿が脳裏に浮かぶだけ。……きっと、セナの食べるのを見守っていたことがあるのだろう。
もちろん、今世は食事は美味しくないと嫌だし、のんびり楽しむつもりなので、居心地が悪いのは勘弁願いたい。
盆を持つと、机に並んだおかずの皿やご飯の入った器をその上に乗せていく。なかなかボリュームがあるな。
「多いね。俺、食べきれるかな。」
セナがこちらを振り返ってこそこそと話してくる。
「余ったら、俺が食べるよ。入ると思う。たぶん……。」
後ろで監視の騎士が声をかけられていた。
「騎士のお兄さん達、仕事でしばらくここで暮らすんだって?学生の食事で足りるかい?」
「大盛りにできるなら、是非お願いしたいな、お姉さん。」
よく話す方の騎士が、調子良く返事をしている。どう見ても、お姉さんという年齢では無さそうだが、お姉さんと呼ばれた人は、にこにこと手を差し出した。
「あはは。どれ、器を貸してごらん。騎士様には足りないよねえ。」
「ありがとう。毎日大盛りにしてもらってたら、給料引かれないかな。」
「そんなみみっちい職場なら、やめてやるって言っておきな。」
「それもいいな。ありがとう。」
つまり、毎日大盛りで食べると宣言して、了承をもらったわけか。上手いもんだなあ。無口な方の騎士も、ちゃっかり一緒に器や皿を出している。
こういうやり取りも、見習わなければいけないな、と食事を受け取るだけのことに妙に感心しながら、四人掛けの席に着いた。
その頃には、こちらを伺っている者はいるが、食堂のざわざわとした雰囲気は戻っていた。
特別寮は人の気配が少なく、この時間にも、食べ物の匂いがあまりしない。一番、出入り口に近い部屋で、近くの部屋に人の気配がないから、ということもあるのだろう。人と出会わずに出入りできたことに、正直ほっとした。こんな所に住む方々と出会っても、面倒の予感しかしない。
一般寮は、少し離れて建っているとはいえ魔法学校の敷地内にあるので、五分も歩けばたどり着いた。
こちらの寮は、ざわざわと人の気配が多く、食べ物の良い匂いが漂っている。
「ああ。落ち着く。」
セナが呟く。
同感だ。早々にこちらに入れてもらいたいもんだ。
管理人室があったので、食堂を利用してもよいかと再度確認して、四人で足を踏み入れた。
見知らぬ四人組、しかも二人はあきらかに学生ではない年齢の騎士服なので、そこにいた者たちが全てこちらを向いたのではないか、と思うほどに注目を浴びた。学生の食堂ならではの喧騒が止んで、しんと静まりかえる。
セナが俺の服をぎゅっと握るので、その手をぽんぽんと叩いて笑って見せる。
「どんなご飯かな?」
と言うと、ようやく力が抜けた。
行列になっているので、並んで前の人の真似をする。前世での食事の記憶が薄いのは、死なないために摂っていたから。味とか、どうでも良かったし、手早く摂れることを目的にしてたから、のんびり食べた記憶もあまりない。時々、セナが一生懸命食べている姿が脳裏に浮かぶだけ。……きっと、セナの食べるのを見守っていたことがあるのだろう。
もちろん、今世は食事は美味しくないと嫌だし、のんびり楽しむつもりなので、居心地が悪いのは勘弁願いたい。
盆を持つと、机に並んだおかずの皿やご飯の入った器をその上に乗せていく。なかなかボリュームがあるな。
「多いね。俺、食べきれるかな。」
セナがこちらを振り返ってこそこそと話してくる。
「余ったら、俺が食べるよ。入ると思う。たぶん……。」
後ろで監視の騎士が声をかけられていた。
「騎士のお兄さん達、仕事でしばらくここで暮らすんだって?学生の食事で足りるかい?」
「大盛りにできるなら、是非お願いしたいな、お姉さん。」
よく話す方の騎士が、調子良く返事をしている。どう見ても、お姉さんという年齢では無さそうだが、お姉さんと呼ばれた人は、にこにこと手を差し出した。
「あはは。どれ、器を貸してごらん。騎士様には足りないよねえ。」
「ありがとう。毎日大盛りにしてもらってたら、給料引かれないかな。」
「そんなみみっちい職場なら、やめてやるって言っておきな。」
「それもいいな。ありがとう。」
つまり、毎日大盛りで食べると宣言して、了承をもらったわけか。上手いもんだなあ。無口な方の騎士も、ちゃっかり一緒に器や皿を出している。
こういうやり取りも、見習わなければいけないな、と食事を受け取るだけのことに妙に感心しながら、四人掛けの席に着いた。
その頃には、こちらを伺っている者はいるが、食堂のざわざわとした雰囲気は戻っていた。
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