【完結】おお勇者よ、死んでしまうとは情けない、と神様は言いました

かずえ

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小さな幸せを願った勇者の話

54 新生活(予定)

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 王が興味を失っても、宰相が俺たちを忘れてくれるわけはなかった。王女の部屋での惨劇。正当防衛を主張してもいいと思うのだが、護衛騎士の恨みは深いだろうな。

「予定通り、魔法学校へ入ってもらう。寮は一部屋しか準備していない。」

 宰相は、俺の方をにらみながら言った。

「問題ない。俺たちはずっと一つの布団で寝てた。」
「一人分の物しか支給しない。」
「分けあうよ。洗い替えの下着とか、もらえるんだよね?ユーゴーが制服を着るわけにはいかないかな。あ、俺に小遣いのような特待生の支給金があるんだっけ?」
「無かったら、昼ごはんを食べられないんだろ?文房具も買えないし。」
「じゃあ、それでユーゴーを雇おう。そしたら、ユーゴーにお給料って形で渡せるね。」
「そうだな。冒険者ギルドに登録してくるか。」
「で、俺が冒険者ギルドに護衛の依頼を出せばいいんだよね。そうしたら、ちょっとギルドにお金を持っていかれるけど、正式に雇ってるから堂々と一緒にいられるし。」
「それがよさそうだ。」

 俺たちが、これからの予定を話し合っていると、宰相が呆れたような顔で言った。

「ギルドに護衛依頼など出したら、昼ごはんも食べられず、文房具も買えないことだろう。」
「あまりに生活が大変そうなら、魔法学校なんて行かずに帰るよ。」
「な、に……?」
「だから、村に帰るって。ずっと言ってるじゃないか。二人でいられないなら、帰る。その理由がお金が無いってことになるだけ。」
「セナも冒険者ギルドに登録して、授業の後や休みの日に、一緒に薬草摘みにでも行かないか?」

 俺が誘うと、嬉しそうな顔で手を叩く。

「そうする。そうするよ。一緒にいられるし、お金も稼げるし、一石二鳥だ。」
「監視はつけさせてもらう。」

 そんなものをつける金があるなら、セナの昼ごはん代に回してほしいもんだ。

「何を監視するの?」
「何を、って……。」
「俺たちの何を監視するのかな、と思って。」
「それは……。」
  
 セナに真っ直ぐ尋ねられて、宰相は言葉を詰まらせた。

「寮の部屋、一人用に俺とユーゴーで住むんでしょ?その上、監視の人が入ってきたら狭いよね?」
「まさか、そんなとこまで入ってくるのか?」
「んー?じゃあ、学校?でも、授業をしてるのに何を監視するの?」
「さあ?」 
「あ、冒険者ギルドの依頼を受けた時かな?でも、薬草摘みに行くだけだよね?」
「もちろん。俺たちにできるのってそんくらいだろ?」

 下手に魔物討伐とかして、レベル上げたくない。今でも、小さい魔法を使えなくて苦労してるのに。いや、これは逆にレベルが上がったらできるようになるのかな?
 まあ、セナと一緒に行くならやっぱり薬草摘むのが一番だな。

「まあ、好きに監視してください。俺たちも好きにさせてもらうので!」

 新しい生活にうきうきし始めた俺たちは、監視という者が何をするのか考えるのをやめた。
 
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