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小さな幸せを願った勇者の話
28 話し合い
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「俺も、あんなに上等な食事と布団は初めてだったよ。」
にっこりと返事をする。丁寧な言葉遣いも面倒になってきた。
御者が苦しそうに腹を押さえる。食事と聞いて腹が空腹を訴えたのだろう。昨夜と今朝と食べていないからな。
「後で、昨日まで俺たちに買ってくれていた肉と野菜を挟んだパンを買ってやるよ。屋台が開くまで待ってて。」
「う……。」
「こんな感じで俺たちを王都に運ぶ予定だったんだ?」
「すまない……。」
「な、腹が減るだろ?足りないって言ったじゃん?」
「すみません……。」
「これで馬車があんだけ揺れたら体調崩すの当たり前だと思うんだ。」
「すみません……。」
話にならない。謝られても面倒なだけだ。さっさと結論を言うことにする。
「俺たちはここからは二人で旅をしようと思うんだが、お前たちはどうする?」
俺の言葉に、御者が弾かれたように顔を上げた。
「あ、あの、でも……。」
「うー、ううう、ううっ。」
床に転がしたままの男が、声を上げる。うるさいな。
「時間がない。帰りが遅いと聖者さまが心配するから、もう詳しい話はどうでもいいや。」
「俺たちがいなくても心配するんじゃ……。」
それを言われると弱い。どう誤魔化そうかと悩んでるってのに。
はあ、とため息をついた。
「別に王都になんて行きたくもないんだよな。王命に背くのが面倒で、あんたらに付いてきたけど。」
二人に驚いた顔を向けられるが、当たり前だろう?
「王立魔法学校に入学できるんだぞ、しかも特待生で。なのに、行きたくない?」
「田舎者すぎて、その価値が分からない。」
「すごいことなんだぞ。魔法学校に入学できるだけですごいのに、特待生だなんて。」
「どうせ田舎者と馬鹿にされるだけだし、ただ神託だけで本人も本人の魔力も見ずに特待生って言われても他の者が納得していないから、居心地よく過ごせる訳がない。」
「神託は絶対だ。」
「聖者さまを倉庫で寝かせようとした奴の言葉がそれかあ。天罰を待つんだな。」
はっとした顔で怯えだしたが、本当に馬鹿と話すのは疲れる。
でも今、ここでこいつらを置いて行くのは不自然すぎるのは確かだ。
拘束されて床に転がっているのに、いまだにこちらを睨み付けている男の手を取った。弱い火の魔力を流し込み体内でくすぶるように置いて手を離す。
「あ?あああ。」
くぐもった声は、あついとでも言いたいのだろう。体温が上がっても元気だな?
体の力は抜けた様子なのでシーツを切って拘束を解く。
「貴様、何をした…。」
ふらふらと体を起こした男の声は弱々しい。成功かな?
「体温をほんの少し上げておいた。」
「は?」
「常に発熱している状態。これでしばらく行動してもらおうかな。」
「何を言って……?」
「荷物を持ってくるから、今日も移動するなら準備してくれ。体調が悪いなら出発については考えるよ。」
酷く怯えた顔が二つ、こちらを見ている。
物理的に傷付けず、軽い不調ですむ程度の攻撃にしたというのに、なんでそんな目でこちらを見ているんだ?
優しさに感動するとこだと思うんだが?
にっこりと返事をする。丁寧な言葉遣いも面倒になってきた。
御者が苦しそうに腹を押さえる。食事と聞いて腹が空腹を訴えたのだろう。昨夜と今朝と食べていないからな。
「後で、昨日まで俺たちに買ってくれていた肉と野菜を挟んだパンを買ってやるよ。屋台が開くまで待ってて。」
「う……。」
「こんな感じで俺たちを王都に運ぶ予定だったんだ?」
「すまない……。」
「な、腹が減るだろ?足りないって言ったじゃん?」
「すみません……。」
「これで馬車があんだけ揺れたら体調崩すの当たり前だと思うんだ。」
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話にならない。謝られても面倒なだけだ。さっさと結論を言うことにする。
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俺の言葉に、御者が弾かれたように顔を上げた。
「あ、あの、でも……。」
「うー、ううう、ううっ。」
床に転がしたままの男が、声を上げる。うるさいな。
「時間がない。帰りが遅いと聖者さまが心配するから、もう詳しい話はどうでもいいや。」
「俺たちがいなくても心配するんじゃ……。」
それを言われると弱い。どう誤魔化そうかと悩んでるってのに。
はあ、とため息をついた。
「別に王都になんて行きたくもないんだよな。王命に背くのが面倒で、あんたらに付いてきたけど。」
二人に驚いた顔を向けられるが、当たり前だろう?
「王立魔法学校に入学できるんだぞ、しかも特待生で。なのに、行きたくない?」
「田舎者すぎて、その価値が分からない。」
「すごいことなんだぞ。魔法学校に入学できるだけですごいのに、特待生だなんて。」
「どうせ田舎者と馬鹿にされるだけだし、ただ神託だけで本人も本人の魔力も見ずに特待生って言われても他の者が納得していないから、居心地よく過ごせる訳がない。」
「神託は絶対だ。」
「聖者さまを倉庫で寝かせようとした奴の言葉がそれかあ。天罰を待つんだな。」
はっとした顔で怯えだしたが、本当に馬鹿と話すのは疲れる。
でも今、ここでこいつらを置いて行くのは不自然すぎるのは確かだ。
拘束されて床に転がっているのに、いまだにこちらを睨み付けている男の手を取った。弱い火の魔力を流し込み体内でくすぶるように置いて手を離す。
「あ?あああ。」
くぐもった声は、あついとでも言いたいのだろう。体温が上がっても元気だな?
体の力は抜けた様子なのでシーツを切って拘束を解く。
「貴様、何をした…。」
ふらふらと体を起こした男の声は弱々しい。成功かな?
「体温をほんの少し上げておいた。」
「は?」
「常に発熱している状態。これでしばらく行動してもらおうかな。」
「何を言って……?」
「荷物を持ってくるから、今日も移動するなら準備してくれ。体調が悪いなら出発については考えるよ。」
酷く怯えた顔が二つ、こちらを見ている。
物理的に傷付けず、軽い不調ですむ程度の攻撃にしたというのに、なんでそんな目でこちらを見ているんだ?
優しさに感動するとこだと思うんだが?
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