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小さな幸せを願った勇者の話
23 出発
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王都からこの村までの距離は、馬車で走って二週間くらいだったと思うのだが、十日ほどで迎えの馬車はやって来た。よほど飛ばしてきたのか、疲れた様子の御者も馬車に乗っていた人も、とても不機嫌な様子だった。
「こんな辺鄙な場所に少しの間もとどまるつもりはない。聖者さまとやら、早くお乗りください。」
挨拶も何もなく、慇懃な態度で口を開く。
「突然参られてその言は如何なものか。」
一応荷造りはしていたが、出迎えた司祭も納得がいかなかったらしく、声を上げてくれた。
「黙れ、田舎者。早くお連れしろと言われておるのだ。こちらは職務を果たしておるまで。」
「こんにちは。お世話になります。」
あまり激しい言い争いになることは避けたかったのか、セナがにこにこと挨拶をした。
「荷物はそれだけか?」
セナの背負った荷物を一瞥して迎えの使者が言う。
「はい。」
「では、お乗りください。」
全く友好的ではないが、セナへ対する言葉遣いだけは丁寧である。神託の子へ、無礼な態度を取るわけにも行くまい。
俺も荷物を背負って、セナの後に続いた。司祭は驚いた顔をしたが何も言わなかった。
「おい、お前は何だ。」
「聖者さまの護衛です。俺も共に王立魔法学校へ参ります。」
「は?」
「聖者さまを一人で行かせるわけには参りませんので、家族の方と相談して俺を護衛として雇ってもらいました。」
「お前のような餓鬼が?」
「俺は強いですよ。試されますか?」
目を合わせて、少しずつ威圧を流し込む。
「まあいい。こちらは、聖者を連れてこいと言われている。途中で放り出されても知らんぞ。」
俺の威圧に耐えきれなくなって目をそらした男に、魔物が出る街道を通って、よくここまで来られたものだと逆に感心した。
意外にあっさりと、俺は馬車の中に乗り込む。
「ユーゴー。」
セナが嬉しそうに笑った。あの後、王立魔法学校のことに詳しかったセイマ父さんと色々話し合った結果、同じように生徒として入学するより護衛としていた方が側にいられることに気付き、護衛になることにしたのだ。
俺は、学校の授業を受けたい訳ではないし、魔法の使い方も剣の扱いも覚えている。
やりたいことはセナの側にいて楽しく過ごすことなんだから、これでいい。
俺たちは、渋面の男の向かい側にくっついて並んで座った。
小さな窓から外を見る。
二人で、心配そうな顔の家族に手を振った。
大丈夫。
俺たちは二人でいればきっと……大丈夫。
「こんな辺鄙な場所に少しの間もとどまるつもりはない。聖者さまとやら、早くお乗りください。」
挨拶も何もなく、慇懃な態度で口を開く。
「突然参られてその言は如何なものか。」
一応荷造りはしていたが、出迎えた司祭も納得がいかなかったらしく、声を上げてくれた。
「黙れ、田舎者。早くお連れしろと言われておるのだ。こちらは職務を果たしておるまで。」
「こんにちは。お世話になります。」
あまり激しい言い争いになることは避けたかったのか、セナがにこにこと挨拶をした。
「荷物はそれだけか?」
セナの背負った荷物を一瞥して迎えの使者が言う。
「はい。」
「では、お乗りください。」
全く友好的ではないが、セナへ対する言葉遣いだけは丁寧である。神託の子へ、無礼な態度を取るわけにも行くまい。
俺も荷物を背負って、セナの後に続いた。司祭は驚いた顔をしたが何も言わなかった。
「おい、お前は何だ。」
「聖者さまの護衛です。俺も共に王立魔法学校へ参ります。」
「は?」
「聖者さまを一人で行かせるわけには参りませんので、家族の方と相談して俺を護衛として雇ってもらいました。」
「お前のような餓鬼が?」
「俺は強いですよ。試されますか?」
目を合わせて、少しずつ威圧を流し込む。
「まあいい。こちらは、聖者を連れてこいと言われている。途中で放り出されても知らんぞ。」
俺の威圧に耐えきれなくなって目をそらした男に、魔物が出る街道を通って、よくここまで来られたものだと逆に感心した。
意外にあっさりと、俺は馬車の中に乗り込む。
「ユーゴー。」
セナが嬉しそうに笑った。あの後、王立魔法学校のことに詳しかったセイマ父さんと色々話し合った結果、同じように生徒として入学するより護衛としていた方が側にいられることに気付き、護衛になることにしたのだ。
俺は、学校の授業を受けたい訳ではないし、魔法の使い方も剣の扱いも覚えている。
やりたいことはセナの側にいて楽しく過ごすことなんだから、これでいい。
俺たちは、渋面の男の向かい側にくっついて並んで座った。
小さな窓から外を見る。
二人で、心配そうな顔の家族に手を振った。
大丈夫。
俺たちは二人でいればきっと……大丈夫。
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