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小さな幸せを願った勇者の話
22 勇者の告白
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「俺も行く。」
食事をしっかりと食べ、ケーキをそれぞれの前に切り分けたタイミングで、話を切り出した。
「……お前はまだ成人前で、魔法の素養が認められていない。王立魔法学校に入学はできない。」
「魔法の素養を見せれば良いのなら、見せるけど?」
俺は入学の条件も知らなかったので、セイマ父さんの言葉を聞いて、それなら簡単だと思った。
セイマ父さんが、はっとした顔をする。セイン兄さんが成人したときのことを思い出したのかもしれない。俺が、火の魔力を簡単に操れることを。あの事件から後は、魔法を使うようなことは何もおこらなかったから、記憶の隅に押しやっていたのだろう。
「迎えの馬車に俺も乗って行って、入学試験とやらを受けるよ。」
「そんな簡単に……。」
サラ母さんが、疲れた顔で呟く。
「簡単だよ。俺は勇者なんだから。」
俺は、何でもないことのように言った。この人生で、最初で最後の告白にするつもりの言葉。特別な意味は何も持たせない。ただの事実なのだから。
「勇者……?」
「そう、勇者。だから、全属性の魔力を持っているし、使える。剣も扱える。セナは、俺を助ける聖者なんだから一緒に居なくちゃ駄目だろ。」
「…………。」
ぽかんと口を開ける家族に、にっと笑ってみせる。
「でも、魔王は倒しに行かない。だってもう、一回倒したし。今度はセナと長生きするんだ。」
「まて。話が見えない。」
俺は説明した。魔王と相討ちして終わったこと。終わったと思った途端に、十歳に戻されたこと。ちゃんと倒したのに、俺が生きていないと終わらないらしいこと。
「その時はもう、セナも死んじゃってて。セナのいない世界に残されても、俺は困るだけだ。」
「ユーゴー……。」
信じてくれなくてもいい。俺は、家族に本当のことを伝えたかっただけなのだから。俺のことを大切にしてくれた家族に。
「何てことだ。神様は、何故魔王ごと時間を……。」
「俺が魔王を倒しに行かなければ世界は滅ぶのかな。それでも、楽しく生きて終りたいって思う俺は、酷い奴なんだろうなあ。」
「本当に、勇者さま……。」
「できればここだけの話にして欲しいな。俺は、鑑定の儀を受けない。勇者は現れない。セナの鑑定を止められなくてごめん。聖者も現れないままで良かったのに。」
「いや。セインの時と同じように、村の中だけの秘密にするつもりだったんだ。セナが治癒を持っていることは分かっていたんだから。何とかなると思っていた。俺もセインも男だから放っておかれている面もあったしな。セナもそうなるだろうと。聖女のイメージが強いから、男の治癒魔法使いはあまり注目されない。それで俺は、長生きできたんだから。なのに神託だなんて……。」
「セナは俺が守る。」
「聖者が勇者を助けるんじゃなく?」
くすっと、ずっと黙って聞いていたセナが笑った。
「ああ、そうだよ。俺は、セナとこの家族だけを大切に生きるんだ!」
食事をしっかりと食べ、ケーキをそれぞれの前に切り分けたタイミングで、話を切り出した。
「……お前はまだ成人前で、魔法の素養が認められていない。王立魔法学校に入学はできない。」
「魔法の素養を見せれば良いのなら、見せるけど?」
俺は入学の条件も知らなかったので、セイマ父さんの言葉を聞いて、それなら簡単だと思った。
セイマ父さんが、はっとした顔をする。セイン兄さんが成人したときのことを思い出したのかもしれない。俺が、火の魔力を簡単に操れることを。あの事件から後は、魔法を使うようなことは何もおこらなかったから、記憶の隅に押しやっていたのだろう。
「迎えの馬車に俺も乗って行って、入学試験とやらを受けるよ。」
「そんな簡単に……。」
サラ母さんが、疲れた顔で呟く。
「簡単だよ。俺は勇者なんだから。」
俺は、何でもないことのように言った。この人生で、最初で最後の告白にするつもりの言葉。特別な意味は何も持たせない。ただの事実なのだから。
「勇者……?」
「そう、勇者。だから、全属性の魔力を持っているし、使える。剣も扱える。セナは、俺を助ける聖者なんだから一緒に居なくちゃ駄目だろ。」
「…………。」
ぽかんと口を開ける家族に、にっと笑ってみせる。
「でも、魔王は倒しに行かない。だってもう、一回倒したし。今度はセナと長生きするんだ。」
「まて。話が見えない。」
俺は説明した。魔王と相討ちして終わったこと。終わったと思った途端に、十歳に戻されたこと。ちゃんと倒したのに、俺が生きていないと終わらないらしいこと。
「その時はもう、セナも死んじゃってて。セナのいない世界に残されても、俺は困るだけだ。」
「ユーゴー……。」
信じてくれなくてもいい。俺は、家族に本当のことを伝えたかっただけなのだから。俺のことを大切にしてくれた家族に。
「何てことだ。神様は、何故魔王ごと時間を……。」
「俺が魔王を倒しに行かなければ世界は滅ぶのかな。それでも、楽しく生きて終りたいって思う俺は、酷い奴なんだろうなあ。」
「本当に、勇者さま……。」
「できればここだけの話にして欲しいな。俺は、鑑定の儀を受けない。勇者は現れない。セナの鑑定を止められなくてごめん。聖者も現れないままで良かったのに。」
「いや。セインの時と同じように、村の中だけの秘密にするつもりだったんだ。セナが治癒を持っていることは分かっていたんだから。何とかなると思っていた。俺もセインも男だから放っておかれている面もあったしな。セナもそうなるだろうと。聖女のイメージが強いから、男の治癒魔法使いはあまり注目されない。それで俺は、長生きできたんだから。なのに神託だなんて……。」
「セナは俺が守る。」
「聖者が勇者を助けるんじゃなく?」
くすっと、ずっと黙って聞いていたセナが笑った。
「ああ、そうだよ。俺は、セナとこの家族だけを大切に生きるんだ!」
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