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小さな幸せを願った勇者の話

6 目標は二十歳

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 セナの光の魔力が心地よい。目を覚ますと学校のベッドの上だった。俺はまた、はしゃぎすぎて倒れたらしい。滅多に使う者のいなかった学校のベッドは、すっかり俺の物になっている。くくっと笑うと、俺が起きたことに気付いたセナが、きっと睨み付けてきた。握っていた俺の手を離してペチリと俺の額を叩く。

「もう。本当に、いい加減にして!」
「でも、セナがいたら大丈夫。」
「大丈夫じゃないじゃないか!ほんの少し離れただけで倒れちゃうなんて。」
「そんなことない。俺は毎日楽しい。」

 へらっと笑うと、目に涙を浮かべたセナに抱きつかれる。
 ああ、気持ちいい魔力。
 ふわふわと笑っていると、セナの涙声が聞こえてきた。

「ユーゴー。」
「んー?」
「明日も一緒にいようね。」
「うん。」
「その次の日も。その次も。」
「もちろん。」

 俺から離れるなんてあり得ない。セナがいいのなら、ずっと側にいる所存だ。ある程度の年齢まで生きられるのなら、セナが結婚して子どもが生まれたりするのを、すぐ近くで見守りたいと思っている。
 
「長生きするんだよ?」

 セナの念押しするような声に、二十歳はたちは超えたいなと思った。
 人の気配に顔を上げるとセナの父さんがベッドに近付いてくる。

「ユーゴー。具合はどう?」
「父さん。」

 セナの父さんの手が俺の額に触れて、探るような魔力が巡る。セナの父さん、セイマさんは、俺の知る限りこの世界一番の治癒魔法の使い手だ。勇者である俺を助ける聖者であったセナは、治癒も結界張りも付与魔法も、色んな種類の光魔法が人並み以上に使えたが、治癒だけならセイマさんの方がレベルは上で、結界張りだけなら、セナの母さん、サラさんの方が上だろう。それほどに、セイマさんとサラさんは、凄い魔法士だった。何故こんな二人がこんな辺境の地で隠れ住んでいるのか、と思うほどに。きっと何か物語があるのだろう。それとも、神の思し召しだろうか。
 聖者セナを勇者の幼馴染みとするために、セナの親をここに置いたのだと言われたら、ああそう、と納得するかもしれない。
 すべては、やつの手の平の上。
 でも、俺は勇者をしてやらない。他を当たってくれ。
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