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透子の章

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 みことまり耶麻やまの国の方々に任せて、私と快璃かいりは自分の仲間と合流する。
 移動は真夜中に行った。玻璃皇子はりのみこと術士をぐるぐる巻きにして四人で移動する。怪我の酷い真鶴まなづるかくは、潜角せんかくさんには申し訳なかったが置いていかせてもらった。真鶴まなづるは、自分も付いていくと言い張ったが、実際問題動けなかった。
 頼りになる仲間と合流して、ほっと肩の力が抜ける。連れていた玻璃皇子はりのみこと術士に驚いていたが、無事を喜んでくれた。一枚だけ貰ってきたみこの絵姿を見せながら、事の次第を説明する。皆、精密なそれに釘付けだった。

「間違いなく、快璃かいりさまのお子でございますねえ。」   

 白露しらつゆが、絵姿を食い入るように見つめながら呟いた。

「そうだろう?」

 快璃かいりが嬉しそうに笑う。みこの前では冷静に振る舞っていたが、今はでれでれだ。あまりに冷静だから、やはり赤ん坊の姿を見ていないと、我が子としての実感が湧かないのかと思っていたのに。
 私は、みこと似ていると言われて喜ぶ快璃かいりが嬉しくて笑った。

「城へ、行かれるのですか。」
「ああ。」

 白露しらつゆは、側仕えとして感情を隠すことはやめたらしい。否定的な顔でこちらを見た。

「すべてを、みかどにご報告申し上げる。しゅをかけた犯人を見つけた、と。」
「……私は、反対です。」

 珍しく反論までしてきた。

「もし、それらの言を信じてもらえたとして、玻璃皇子はりのみこが廃嫡となれば、快璃かいりさまが皇家に戻らされる可能性が高い。透子とうこさまと離縁させられ、新しい奥方があてがわれるでしょう。みこさまは、解呪のために監禁される。信じてもらえなかった場合、命が危ういです。こちらに利がありません。」
「私も、そう思います。」

 葉室はむろも賛成した。側仕え二人の冷静な判断。

「……。玻璃はりの不在は、すぐに気付かれるだろう。捕らえていたみこがいないことも。追っ手がかかり、耶麻やまにいると、または、あけにいると知られた場合、戦になる。それは、避けたい。みこに、もう二度と怖い思いをさせたくない。」

 ひどく怯えていたみこを思う。

白露しらつゆ。俺はあかつきに戻るつもりは全くない。透子とうこと離れる気も全くない。命を粗末にするつもりも、ない。」

 そう、今度こそ。
 長生きして、そんなこともあったねと笑いあおう。
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