【完結】何度でもやり直しましょう。愛しい人と共に送れる人生を。

かずえ

文字の大きさ
上 下
81 / 96
透子の章

25

しおりを挟む
あかつきは、すっかり平和ボケしているということだろうか。」
「いや、うーん、どうだろう。圧倒的な人間の数があるからな。こちらは、色んなことに備えているだけだ。敵国に子どもが一人で来るわけだからな。油断はしない。」
「そうか……。そうだな。」

 快璃かいりはすっかり考え込んでしまった。耶麻やまの国は味方にすると、とても心強いが、元あかつき皇子みことしては、かなり思うところがあるだろう。

まりさんは、歩けるようになるまでここで預かれると思う。さて、話の続きをしよう。死んだ人間が、何故ここにいる?」

 じんという少年は、体格も小さく、まだ子どもっぽい顔つきであるのに、非常に冷静だった。

「分からない。私は、私たちは人生を何度か繰り返している。確かに死んだ記憶があるのに、ここにいる。そして、それは初めてじゃない。今の私は、子どもを生んでいない。けれど、記憶の中の私が、その子を、みこを私の子だと訴えている。」
「姫様……。」
「俺たちの考えでは、やり直す前に異界へ移動したまりと赤ん坊はそのままの時を生き、俺たちは戻ったことで年の差が出たのではないかと思っている。」
「その、やり直すというのは、どういうことなんだ。死んだ記憶のあるまま生き直すのか。それは、どの規模で?」
「記憶は、ひどく曖昧だ。この世界すべてが戻っていると考えている。俺は、前回の分はそれほど覚えていないが、その更に前のものは、ほどほど覚えている。学校の入学式に戻るんだ。俺は十歳。」
「私は、事情があって八歳で入学したから八歳に戻ります。私も、前回のものは曖昧です。ただ死ぬ少し前の、男の子を生んだこと、みこと呼んでいたこと、側仕えのまりとみこが、異界への穴に落とされたことを唐突に思い出しました。二十日ほど前です。」
「術士が、この二人を城に呼び出した頃だな。」
「思い出したら、まりの不在にも気付きました。ずっと、私の世話をしてくれていたまりのことが頭から抜けていた。入学式の日に側仕えがいなかった。一緒にあかつきの国まで来たのに、いない。けれど、それがどんな人かも思い出せない。学校で、側仕えを借りて過ごしていたのです。十五年経って、やっと思い出せた。探さなければと思い、動いたら、こんなにすぐに……。」

 私は、胸が詰まってまりを見た。まりも涙を浮かべている。

透璃とうりを育ててくれたのね。こんなに、立派に。ありがとう。ありがとう、まり。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...