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透子の章

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「城からは、連れ出した。」

 勇んであけの国を飛び出したが、結局、側仕えや護衛に助けられて耶麻やまへ着き、こちらでは刀戈とうかさまと深剣みつるぎの世話になっているばかり。情けない、と落ち込むと、待つことも兵法の一つだと諭された。あかつきの国の都に、より近い村で報せを待っていた。

皇子みこは衰弱していて長くは歩けない。女は、足が折れていて動けない。都で待つ、とのことだ。では、出るか。」

 あっさりと深剣みつるぎは言った。この耶麻やまの国の人々は、本当に身軽だ。驚いている間に、側仕えたちは手早く荷物を纏めていく。

刀戈とうかさまは?」
「ああ、帰った。じんが本気で動くなら任せると。」
じん?」
「言っていなかったか?刀戈とうかさまの第二子だ。今、学校は学年代わりの長休みで動きやすく、あいつが、皇子みこを保護している。」
「そう。小さいのに、すごいのね。」
「確かに小さいが、それを本人に言うなよ。特に透子とうこは。」
「え?どういうこと?私は年齢の話を……。」

 ははあ、と快璃かいりが言った。

「体格が小さめなのだな。」
「そういうことだ。」

 にやりと、深剣みつるぎが笑う。
 いらっとしたが、事実なので言い返せなかった。ふと、思う。透璃とうりはどうなのだろう。快璃かいりに似て標準的な体格だと良いな、と思った。

「どうした?怒ったのか?」

 快璃かいりが、黙りこんだ私の頭を撫でる。私は首を振って答えた。

透璃とうりは、どちらに似てるのかと考えてた。」
「そうか。顔は、俺に似てるみたいだからな。」

 二人で、何となくしんみりしていると、ぱん、と手を打った深剣みつるぎが、

「よし、会いに行くぞ。」

 と元気に言った。
 会いに、行く。私たちの、子どもに。
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