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透子の章
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私の頭痛が治まるのを待って、私たち夫婦は暁の国と袂を分かちたいことを父や姉、姉の伴侶に伝えた。
快璃は、とうに皇子の身分を捨てているのだが、そういう話ではない。敵対する、とはっきり伝える。確かめたい事があり、それをすると暁の国にとって不都合なのだと。
もちろん、国に迷惑をかけたくはないので、自分たちだけで動くつもりであるし、縁切りもしてほしい、と告げる。
父は、突然のことに、ただただ戸惑っていた。
「何を言われても、何があっても、明の国は知らぬ存ぜぬで通してほしい。もう、この国とは何の関係もないと。」
「一体、そこまでの何を?」
「説明が難しいのです。ただ、こちらの国の方には一切、迷惑をかけたくない。学校に通っている子どもを、呼び戻してください。」
平伏して、父の言葉を待つ。
「そこまでするほどの、何があるのか、聞かせてほしい。」
私は、頭を上げた。
「私は、同じ年齢を何度か生きています。死んで戻ったこともあれば、翌日が数年前だったこともありました。その中で一度、男の子を生みました。死に戻った後で、同じ年齢を過ぎたのに、その子が私の腹に還って来ません。」
父は、呆気にとられている。それはそうだ。私だって、誰かにこんな話をされて、そうなのか、と頷ける訳がない。
「思い出したのです。その子を、私から玻璃皇子が奪い、何らかの術式を用いて何処かへ飛ばした。だから、還って来ないのだと。その子は、私の側仕えの鞠が抱いていて、二人で共に飛ばされた。二人を探したい。思い出したということは、何かあったと考えています。暁の国に探りを入れる。」
「鞠……。」
それは、姉の声だった。
「鞠は、透子の学校入学に合わせて一緒に、暁の国へ行った……。」
「はい、姉上。なのに、入学式の日に彼女はいなかった。誰がいないのかも、私は失念していました。共にいた護衛の啄木鳥も。十五年前、私は、何故側仕えがいないのか、考えても考えても分からなかった。連れて行かないなど、あり得ないから。」
「鞠……。そう、鞠は、あなたの側仕えだわ。」
やはり、間違いない。
鞠の存在を、姉も思い出した。
何かが、あったのだ。
快璃は、とうに皇子の身分を捨てているのだが、そういう話ではない。敵対する、とはっきり伝える。確かめたい事があり、それをすると暁の国にとって不都合なのだと。
もちろん、国に迷惑をかけたくはないので、自分たちだけで動くつもりであるし、縁切りもしてほしい、と告げる。
父は、突然のことに、ただただ戸惑っていた。
「何を言われても、何があっても、明の国は知らぬ存ぜぬで通してほしい。もう、この国とは何の関係もないと。」
「一体、そこまでの何を?」
「説明が難しいのです。ただ、こちらの国の方には一切、迷惑をかけたくない。学校に通っている子どもを、呼び戻してください。」
平伏して、父の言葉を待つ。
「そこまでするほどの、何があるのか、聞かせてほしい。」
私は、頭を上げた。
「私は、同じ年齢を何度か生きています。死んで戻ったこともあれば、翌日が数年前だったこともありました。その中で一度、男の子を生みました。死に戻った後で、同じ年齢を過ぎたのに、その子が私の腹に還って来ません。」
父は、呆気にとられている。それはそうだ。私だって、誰かにこんな話をされて、そうなのか、と頷ける訳がない。
「思い出したのです。その子を、私から玻璃皇子が奪い、何らかの術式を用いて何処かへ飛ばした。だから、還って来ないのだと。その子は、私の側仕えの鞠が抱いていて、二人で共に飛ばされた。二人を探したい。思い出したということは、何かあったと考えています。暁の国に探りを入れる。」
「鞠……。」
それは、姉の声だった。
「鞠は、透子の学校入学に合わせて一緒に、暁の国へ行った……。」
「はい、姉上。なのに、入学式の日に彼女はいなかった。誰がいないのかも、私は失念していました。共にいた護衛の啄木鳥も。十五年前、私は、何故側仕えがいないのか、考えても考えても分からなかった。連れて行かないなど、あり得ないから。」
「鞠……。そう、鞠は、あなたの側仕えだわ。」
やはり、間違いない。
鞠の存在を、姉も思い出した。
何かが、あったのだ。
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