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透子の章
13
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それは、突然だった。頭の中に流れ込んでくる記憶。知っているのに、ひどく曖昧で、けれど確かにあったと思わせる何か。
その光景は、あまりに残酷で、私は気持ち悪さに吐き戻してしまいながら、意識を失った。
意識が戻った後も、目を開けると頭痛が酷い。すぐに目を閉じたが、覚醒したことは気付かれていたようだった。
「大丈夫か。」
その声を聞くと、安心する。
「ん。」
「どうした?」
口を動かしても頭に響く。これが、記憶を取り戻したことによる頭痛なら、快璃は大丈夫なのだろうか。
「透子。」
優しく頭を撫でてくれる手が心地好い。私は、大切なことを伝えなくてはならない。
「私たちに子がいたの。男の子。あなたにそっくりで。名前を二人で決めたくて、まだ決めていなかったから、みこと呼んでいた。」
ひと息に言って、息を深く吸い、細く吐き出す。目を閉じている私の頭を、快璃の手が撫で続ける。
「玻璃皇子に、奪われたわ。生きているのかどうかも分からない。」
思い出した小さな手。
「いつも、お腹を空かせて、か細く泣いていた。私の乳の出が悪かったのに、乳母を呼んでもらえなかった。代わりの乳も無くて、私に貰うご飯をふやかして吸わせていた。」
涙が頬を伝う。せめて、私の乳が出れば良かったのに。
「あなたの兄は、私の、私たちのみこを、おかしな術で穴に落とした。私の側仕えの鞠と共に。」
頭を撫でる手が止まり、その手は涙に濡れる頬を包み込む。
「私たちの元に、みこが還って来ない。今度こそ、腹一杯に乳を飲ませてやりたいのに。泣き顔と苦しげな寝顔しか見ないままに、別れてしまったあの子は、どうして私の腹に還って来てくれないのだろう。」
止まらない涙が、快璃の手を濡らす。
「すぐに、暁の国の学校へ通っている子どもを呼び戻そう。人質にされては、動きにくい。」
快璃の低い声が震えながら言った。
「俺たちが、この記憶を取り戻す何かがあったに違いない。それを探らなくては。」
そっと体を起こされて、抱き締められる。
「俺は、あいつを許さない。」
その光景は、あまりに残酷で、私は気持ち悪さに吐き戻してしまいながら、意識を失った。
意識が戻った後も、目を開けると頭痛が酷い。すぐに目を閉じたが、覚醒したことは気付かれていたようだった。
「大丈夫か。」
その声を聞くと、安心する。
「ん。」
「どうした?」
口を動かしても頭に響く。これが、記憶を取り戻したことによる頭痛なら、快璃は大丈夫なのだろうか。
「透子。」
優しく頭を撫でてくれる手が心地好い。私は、大切なことを伝えなくてはならない。
「私たちに子がいたの。男の子。あなたにそっくりで。名前を二人で決めたくて、まだ決めていなかったから、みこと呼んでいた。」
ひと息に言って、息を深く吸い、細く吐き出す。目を閉じている私の頭を、快璃の手が撫で続ける。
「玻璃皇子に、奪われたわ。生きているのかどうかも分からない。」
思い出した小さな手。
「いつも、お腹を空かせて、か細く泣いていた。私の乳の出が悪かったのに、乳母を呼んでもらえなかった。代わりの乳も無くて、私に貰うご飯をふやかして吸わせていた。」
涙が頬を伝う。せめて、私の乳が出れば良かったのに。
「あなたの兄は、私の、私たちのみこを、おかしな術で穴に落とした。私の側仕えの鞠と共に。」
頭を撫でる手が止まり、その手は涙に濡れる頬を包み込む。
「私たちの元に、みこが還って来ない。今度こそ、腹一杯に乳を飲ませてやりたいのに。泣き顔と苦しげな寝顔しか見ないままに、別れてしまったあの子は、どうして私の腹に還って来てくれないのだろう。」
止まらない涙が、快璃の手を濡らす。
「すぐに、暁の国の学校へ通っている子どもを呼び戻そう。人質にされては、動きにくい。」
快璃の低い声が震えながら言った。
「俺たちが、この記憶を取り戻す何かがあったに違いない。それを探らなくては。」
そっと体を起こされて、抱き締められる。
「俺は、あいつを許さない。」
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