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真鶴の章

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 玻璃皇子はりのみこ快璃かいり皇子みこが並んで座っている。本当によく似た御二人は、本人達がそうしようと思えば、容易く入れ替わることができた。皆が、髪紐の色でしか見分けられていないのだから、髪紐を入れ替えて口調を揃えられれば、どちらが玻璃皇子はりのみこで、どちらが快璃かいり皇子みこなのか分かる筈もなかった。お小さい頃から側にいる私と白露しらつゆも、よく騙されたものである。
 けれど、と私は視線を移す。一際小さな姫君。あの悪夢の中で、あの姫君は、一度たりとも御二人を間違えはしなかった。そして、その事に玻璃皇子はりのみこは惹かれたのだ。
 はじめはきっと、可愛らしい初恋であったのだろう。優しく話しかけられるのを、微笑ましく見守っていた。
 しかし、私の主は次期みかどであった。近寄りたい者はあまりに多く、また、主が気にかける者を追い払いたがった。なかなか玻璃皇子はりのみこが仲良くなれぬままに、いつの間にか仲良くなっていたのは快璃かいり皇子みこであった。
 せめて、かの姫君の恋の相手が他の者であってくれれば、と幾度思ったことか。
 同じ顔、同じ体格の、生まれがほんの数刻違っただけの弟君でさえ無ければ。
 主は、淡い初恋を良い思い出としてくれたのかもしれない。何も違わないのに、何故、あいつなのだと思わなくてすんだのかもしれない。
 二人の仲睦まじい姿を見るたびに、悲しく暗い影が瞳に差すのを止められなかった。
 姫君は、間違えない。決して御二人を間違えることはなかった。では、主の恋が実ることは無いのだろう。
 ならば私にできることは、何だ。あの悪夢を繰り返さないために。
 この人生を恙無く送って頂くために。
 式の間中、私は悪夢に捕らわれ、頭を悩ませていた。
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