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玻璃の章
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透子が愛しい。
この気持ちはいつからだったろう。はっきり覚えていない。あまりに昔過ぎて覚えていないのか、術式の副作用だろうか。いや、自衛機能なのかもしれない。本来一度で過ぎていく筈の人生を、幾度も繰り返しているのだから。
この術式を教えてくれた者は、何と言っていただろうか。何度もやっていると、術者に大きな負担がかかるのだったか。
透子と快璃の婚姻の儀が近付いている。こんなに焦ったことは無かった。あの二人は、確かに互いを思い合ってはいたけれども、幾度も繰り返した人生で婚約などしていなかったのだから。
確かな思いの形を見せられて、少しずつ少しずつ冷静さは失われていく。
婚姻の儀に合わせて城へ来た透子の部屋に、認識阻害の術式をかける。それと分からないように、小さいものを少しずつ設置していく。その部屋が、まるで存在しないかのように皆が素通りしていくのを、楽しく見ていた。
快璃には、透子は体調を崩して到着が遅れているようだ、と連絡を入れる。政務部に所属しているので、手を加えるのは簡単だった。
透子は、本当に体調が良くないらしい。活発な彼女が、部屋に閉じ込められて文句も言わず大人しくしているようだ。食事もあまり食べられておらず、吐き戻す様子も見られると報告があった。
心配で様子を見に行くと、相変わらずの小さな体で具合悪そうに布団の中にいた。
医師を呼ぶかどうか迷うほどである。
大丈夫か、と声を掛けても返事は無かった。
部屋を去るときにようやく、
「快璃を呼んでください。」
という言葉が聞こえた。
もちろん、私から返事をすることは無かった。
この気持ちはいつからだったろう。はっきり覚えていない。あまりに昔過ぎて覚えていないのか、術式の副作用だろうか。いや、自衛機能なのかもしれない。本来一度で過ぎていく筈の人生を、幾度も繰り返しているのだから。
この術式を教えてくれた者は、何と言っていただろうか。何度もやっていると、術者に大きな負担がかかるのだったか。
透子と快璃の婚姻の儀が近付いている。こんなに焦ったことは無かった。あの二人は、確かに互いを思い合ってはいたけれども、幾度も繰り返した人生で婚約などしていなかったのだから。
確かな思いの形を見せられて、少しずつ少しずつ冷静さは失われていく。
婚姻の儀に合わせて城へ来た透子の部屋に、認識阻害の術式をかける。それと分からないように、小さいものを少しずつ設置していく。その部屋が、まるで存在しないかのように皆が素通りしていくのを、楽しく見ていた。
快璃には、透子は体調を崩して到着が遅れているようだ、と連絡を入れる。政務部に所属しているので、手を加えるのは簡単だった。
透子は、本当に体調が良くないらしい。活発な彼女が、部屋に閉じ込められて文句も言わず大人しくしているようだ。食事もあまり食べられておらず、吐き戻す様子も見られると報告があった。
心配で様子を見に行くと、相変わらずの小さな体で具合悪そうに布団の中にいた。
医師を呼ぶかどうか迷うほどである。
大丈夫か、と声を掛けても返事は無かった。
部屋を去るときにようやく、
「快璃を呼んでください。」
という言葉が聞こえた。
もちろん、私から返事をすることは無かった。
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