26 / 96
快璃の章
12
しおりを挟む
「透子は何故、戦場に?女は軍属できまい?」
「あなたの身が危ないと聞いて、駆けつけました。」
「駆けつけられるものなのか?」
透子は首を傾げて、頭を振った。覚えていないのか、説明するつもりがないのかは分からなかった。
「結局、あなたを守れませんでしたが、最後に共に居られて、幸せでした。」
「なら、俺も幸せだったんだろうな。」
くす、と笑い合っていると、呆れたような顔で華子が見ている。
「死んでは、元も子もありません。それは悪夢です。」
「ふむ、確かに。俺達は今、生きているのだから、そのような夢を語ってはいけないな。」
はあー、と大きな溜め息が聞こえた。深剣が頭を抱えている。
「何にも分からねえ。」
「すまない。おかしな話をしたな。」
「とりあえず、現在の話をしましょう。」
華子の言葉に、
「そうしてくれると、助かる。」
と深剣が答えた。
「後出しでも構わないから、婚約の話を父上に提言しよう。たぶん、話は簡単に進むと思う。前回は、玻璃に気付かれないうちにと話を進めたが、今回はしっかりと話し合う。後出しとはいえ、こちらが有利なことは変わらない。」
「そうですね。求婚の儀もすんでおりますし、問題はありません。」
華子が頷いて、方針は決まった。過ぎたことを考えても仕方がない。
「俺にできることは、あるか?」
深剣が真剣な顔でこちらを見てくる。その言葉だけで、十分ありがたかった。
「今のまま、友人でいてもらえたら、ありがたい。それが一番だ。」
「あなたの身が危ないと聞いて、駆けつけました。」
「駆けつけられるものなのか?」
透子は首を傾げて、頭を振った。覚えていないのか、説明するつもりがないのかは分からなかった。
「結局、あなたを守れませんでしたが、最後に共に居られて、幸せでした。」
「なら、俺も幸せだったんだろうな。」
くす、と笑い合っていると、呆れたような顔で華子が見ている。
「死んでは、元も子もありません。それは悪夢です。」
「ふむ、確かに。俺達は今、生きているのだから、そのような夢を語ってはいけないな。」
はあー、と大きな溜め息が聞こえた。深剣が頭を抱えている。
「何にも分からねえ。」
「すまない。おかしな話をしたな。」
「とりあえず、現在の話をしましょう。」
華子の言葉に、
「そうしてくれると、助かる。」
と深剣が答えた。
「後出しでも構わないから、婚約の話を父上に提言しよう。たぶん、話は簡単に進むと思う。前回は、玻璃に気付かれないうちにと話を進めたが、今回はしっかりと話し合う。後出しとはいえ、こちらが有利なことは変わらない。」
「そうですね。求婚の儀もすんでおりますし、問題はありません。」
華子が頷いて、方針は決まった。過ぎたことを考えても仕方がない。
「俺にできることは、あるか?」
深剣が真剣な顔でこちらを見てくる。その言葉だけで、十分ありがたかった。
「今のまま、友人でいてもらえたら、ありがたい。それが一番だ。」
60
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る
小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」
政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。
9年前の約束を叶えるために……。
豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。
「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。
本作は小説家になろうにも投稿しています。
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
はずれのわたしで、ごめんなさい。
ふまさ
恋愛
姉のベティは、学園でも有名になるほど綺麗で聡明な当たりのマイヤー伯爵令嬢。妹のアリシアは、ガリで陰気なはずれのマイヤー伯爵令嬢。そう学園のみなが陰であだ名していることは、アリシアも承知していた。傷付きはするが、もう慣れた。いちいち泣いてもいられない。
婚約者のマイクも、アリシアのことを幽霊のようだの暗いだのと陰口をたたいている。マイクは伯爵家の令息だが、家は没落の危機だと聞く。嫁の貰い手がないと家の名に傷がつくという理由で、アリシアの父親は持参金を多めに出すという条件でマイクとの婚約を成立させた。いわば政略結婚だ。
こんなわたしと結婚なんて、気の毒に。と、逆にマイクに同情するアリシア。
そんな諦めにも似たアリシアの日常を壊し、救ってくれたのは──。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる