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快璃の章
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「つまり、記憶は同じ……ということか。」
「私と快璃皇子の覚えていることが同じですね。」
「三回目、と言ったな。」
「はい。その前があります。私は十五、快璃は十七で戦場で共に死んだ筈が、入学式に戻っておりました。」
快璃と呼び捨てにされたのが心地好い。無意識に口をついて出たということは、その一回目も俺達は恋仲だったのだろうか。嬉しい気持ちで見つめると、すぐに目が合う。
「皇子が戦場で死ぬなんて。そんな危ない所に配属されることがおかしいのではないかしら?」
華子が冷静に分析した。確かに。軍属したとして、皇族を死ぬ目に合うような前線に配備するだろうか。跡取りでないとはいえ、直系の皇子を?そして、一国の姫である透子を?だいたいにして、女は軍属できない筈だ。そもそも戦争は、起こっていない。
「戦場とは、どこで?」
「東夷と。」
「いまさら?」
「ええ。あちらは、自国領で薬草を集めていた子どもがこちらの軍の兵隊に殺されたと。こちらは、こちらの領内に鎌を持った子どもが入り込んでいたので注意したら、鎌を振り上げて走ってきたのでやむ無く切ったと。」
「ああ、国境ではよくある話だな。」
「そう。いつもなら、賠償金を払い、謝り合って兵士を処分して終わる話です。けれど、終わらなかった。子どもの父親が、賠償金を持って行ったこちらの使者を切った、と。ちっとも謝る態度では無かったとも、死んだ子どもを冒涜したとも言われていますが、真実は分かりません。こちらの国境警備隊が怒って押し掛け、その村の者が次々に武器を手にし……。」
「そのまま国同士の争いになったということか。」
「はい。」
それでも、何故?という疑問は消えない。我が国は、周辺国を次々と属国にして治めているが、三方を山に囲まれ国境が一方しかない東夷国は攻めきれず、互いに対等な同盟契約を結んで、落ち着いた関係を築いていた。
「学校を卒業した快璃が、軍で修行することになった辺りから、周辺国で小競り合いが起こっていました。まるで、どこかと戦がしたいかのように……。」
「私と快璃皇子の覚えていることが同じですね。」
「三回目、と言ったな。」
「はい。その前があります。私は十五、快璃は十七で戦場で共に死んだ筈が、入学式に戻っておりました。」
快璃と呼び捨てにされたのが心地好い。無意識に口をついて出たということは、その一回目も俺達は恋仲だったのだろうか。嬉しい気持ちで見つめると、すぐに目が合う。
「皇子が戦場で死ぬなんて。そんな危ない所に配属されることがおかしいのではないかしら?」
華子が冷静に分析した。確かに。軍属したとして、皇族を死ぬ目に合うような前線に配備するだろうか。跡取りでないとはいえ、直系の皇子を?そして、一国の姫である透子を?だいたいにして、女は軍属できない筈だ。そもそも戦争は、起こっていない。
「戦場とは、どこで?」
「東夷と。」
「いまさら?」
「ええ。あちらは、自国領で薬草を集めていた子どもがこちらの軍の兵隊に殺されたと。こちらは、こちらの領内に鎌を持った子どもが入り込んでいたので注意したら、鎌を振り上げて走ってきたのでやむ無く切ったと。」
「ああ、国境ではよくある話だな。」
「そう。いつもなら、賠償金を払い、謝り合って兵士を処分して終わる話です。けれど、終わらなかった。子どもの父親が、賠償金を持って行ったこちらの使者を切った、と。ちっとも謝る態度では無かったとも、死んだ子どもを冒涜したとも言われていますが、真実は分かりません。こちらの国境警備隊が怒って押し掛け、その村の者が次々に武器を手にし……。」
「そのまま国同士の争いになったということか。」
「はい。」
それでも、何故?という疑問は消えない。我が国は、周辺国を次々と属国にして治めているが、三方を山に囲まれ国境が一方しかない東夷国は攻めきれず、互いに対等な同盟契約を結んで、落ち着いた関係を築いていた。
「学校を卒業した快璃が、軍で修行することになった辺りから、周辺国で小競り合いが起こっていました。まるで、どこかと戦がしたいかのように……。」
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