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快璃の章

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 視線を向けられていなくとも、そつなく兄へ挨拶をする華子はなこを見守っていると、明るい挨拶の声が聞こえた。

「おはようございます、玻璃皇子はりのみこ快璃かいり皇子みこ透子とうこ細流せせらぎもおはよう。そちらの見知らぬ美人はどなた?」
「今日から通わせて頂きます。あけの国の華子はなこでございます。よろしくお願い致します。」
「はじめまして。耶麻やまの国の深剣みつるぎです。なんて、美人なんだ。いやー、綺麗な姉上だなあ、透子とうこ。」

 深剣みつるぎは、にこにこと華子はなこに挨拶を交わし、透子とうこにも話しかけた。
 最近では玻璃はりを怖れて、透子とうこに話しかけない者も多いが、我が親友はそんなことは気にしない。
 姉が大好きな透子とうこも、姉を褒められて嬉しそうに深剣みつるぎに笑って頷いた。
 玻璃はりの顔がまた能面のようになることは気付かないふりで、授業準備のために全員で教室へと入った。
 
 その日から、透子とうこは更に可愛さを増した。元々、とても可愛らしいのではあるが、肩からすっと力が抜けたようである。ずっと一人で頑張っていたし、寂しい気持ちを誤魔化していたのだろう。今の年齢が、本来は入学の年齢なのであるのだから。華子はなこが来て、存分に甘えているようで、幼さを取り戻したような、力の抜けた笑顔は、もう可愛いとしかいいようがなく、俺は、やっぱりどうしようもなく透子とうこが好きだと思った。
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