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第十章 されど幸せな日々
69 いいような気がしないでもない? 成人
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本物のお茶が出てくる前にすぐ謁見に呼ばれた晦たちは、殿たち歓迎してくれて良かったな、と笑顔で執務室に戻ってきた。竹光や鶴丸に、四人がこちらに来たことを喜んでもらったんだな。うん、分かる。信頼できる人が城の中に増えるのは心強い。皆強いしね。もう少し経験を積めば、その辺の一ノ瀬はかわせる気がする。
にこにこで戻ってきた四人は、でも、執務室で待ち構えていたおーちゃんにまた正座させられた。そのまま、お説教開始。お説教って何か知らなかったけど、見ていたら、これがお説教か、ってすぐ分かった。叱られるやつね。口でたくさん説明されながら叱られるやつ。
おーちゃんのお説教は、お昼ご飯まで続いた。おーちゃん、よく喋るなあ。俺が本物のお茶を差し入れると、恐縮です、と言いながらごくごく飲んだ。晦たちも、びっくりした顔をしながら受け取ってごくごく飲んだ。末良のくれるお茶や食べ物は、飲めないし食べられないからね。あんなに喋っていたら喉が渇くから、お茶を飲んでおかないと。
お昼ご飯ですよー、って、廊下から声がかかると、皆ほっとした顔をした。乙羽の声だ。
お説教を受けていた人だけじゃなく、部屋にいた人皆、ほっ。聞こえるもんね、お説教の声。同じ部屋にいたらさ。仕事したり、末良と亀吉の遊びに付き合っていても、ずっと何だか気になる。
おーちゃん、お説教は、ほどほどがいいと思うよ。ほどほどって大事。
そんなに喋ることがあるのか、すごいって思ってちょっと耳を澄ませて聞いてみた。……同じ話を色んな言い方で繰り返してた。それ、さっき聞いたからもういいや、って途中で聞くのをやめた。きっと、晦たちもそう思っていると思う。そんな顔してる。でも、おーちゃんは気づかずに一生懸命喋っていた。
お説教って、短いとお説教にならないのかな? ここが駄目だったから直しなさい、って簡単に伝えたんじゃ駄目なのかな? そっちの方がちゃんと言いたい事が伝わりそうだけどな。ま、いっか。とりあえず今度から、お説教する時は別の部屋でしてもらおう。
俺、お説教、あんまり好きじゃない。
「ありがと、乙羽」
「はーい」
「ありがとうございます! 頂きます!」
晦が大きな声で返事をして足を崩した。
「あ、足が痺れた」
「うちも」
「俺もです……」
「……うぅ」
ええ? 今、襲撃されたら大変だ。お説教の時は正座って決まりがあるならそれも良くないよ、おーちゃん。すぐに動けないような状態になる姿勢は駄目だ。晦たちは、動くのが仕事なんだから。
「こら。まだええ言うとらん」
「ご飯は食べなきゃ駄目だよ?」
まだ何か言おうとするおーちゃんに声をかける。おーちゃんはまだ正座のままで、背筋を伸ばしていた。お説教する側も正座なんだ? 大変だね。おーちゃんは、足は痺れてないの?
「あ、は。そうでした。すみません、成人殿下。食事と休息をしっかり取ることが、ここで仕事をする者たちの決まり事でしたね」
そうそう。ご飯を食べなきゃ力は出ない。ちゃんと寝ないと頭は働かない。
「お説教はもう終わり」
「おお、天使がおる」
「あ、隊長にも見えますか? うちにも見えとります」
「優しい。ここ、ええとこや」
「ご飯いっぱい食べます。いっぱい寝ますー」
「お昼からは、仕事あるし」
お説教してたら、お仕事できない。
「え?」
「じいやがね、引き継ぎするって」
「あ、引き継ぎ。了解です」
「鍛錬所に集合だって」
晦と小望が、がくっと崩れ落ちた。
「鍛錬所……」
「引き継ぎが鍛錬所……?」
「引き継ぎってなんやっけ……?」
横の二人は顔を見合わせる。
「あの、じいやさん、って?」
「隊長を捕まえた成人殿下の護衛さんです」
小望の言葉に二人は、ひええ、と仰け反った。
「座ってお話よりいいよね?」
鍛えながらお話。二ついっぺんにできていい。正座してお話を聞いて足が痺れたって、何にもいい事ないからね。
「いい、ような気がしないでもないような……?」
ん? それは、どっち?
にこにこで戻ってきた四人は、でも、執務室で待ち構えていたおーちゃんにまた正座させられた。そのまま、お説教開始。お説教って何か知らなかったけど、見ていたら、これがお説教か、ってすぐ分かった。叱られるやつね。口でたくさん説明されながら叱られるやつ。
おーちゃんのお説教は、お昼ご飯まで続いた。おーちゃん、よく喋るなあ。俺が本物のお茶を差し入れると、恐縮です、と言いながらごくごく飲んだ。晦たちも、びっくりした顔をしながら受け取ってごくごく飲んだ。末良のくれるお茶や食べ物は、飲めないし食べられないからね。あんなに喋っていたら喉が渇くから、お茶を飲んでおかないと。
お昼ご飯ですよー、って、廊下から声がかかると、皆ほっとした顔をした。乙羽の声だ。
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そんなに喋ることがあるのか、すごいって思ってちょっと耳を澄ませて聞いてみた。……同じ話を色んな言い方で繰り返してた。それ、さっき聞いたからもういいや、って途中で聞くのをやめた。きっと、晦たちもそう思っていると思う。そんな顔してる。でも、おーちゃんは気づかずに一生懸命喋っていた。
お説教って、短いとお説教にならないのかな? ここが駄目だったから直しなさい、って簡単に伝えたんじゃ駄目なのかな? そっちの方がちゃんと言いたい事が伝わりそうだけどな。ま、いっか。とりあえず今度から、お説教する時は別の部屋でしてもらおう。
俺、お説教、あんまり好きじゃない。
「ありがと、乙羽」
「はーい」
「ありがとうございます! 頂きます!」
晦が大きな声で返事をして足を崩した。
「あ、足が痺れた」
「うちも」
「俺もです……」
「……うぅ」
ええ? 今、襲撃されたら大変だ。お説教の時は正座って決まりがあるならそれも良くないよ、おーちゃん。すぐに動けないような状態になる姿勢は駄目だ。晦たちは、動くのが仕事なんだから。
「こら。まだええ言うとらん」
「ご飯は食べなきゃ駄目だよ?」
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「あ、は。そうでした。すみません、成人殿下。食事と休息をしっかり取ることが、ここで仕事をする者たちの決まり事でしたね」
そうそう。ご飯を食べなきゃ力は出ない。ちゃんと寝ないと頭は働かない。
「お説教はもう終わり」
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「あ、隊長にも見えますか? うちにも見えとります」
「優しい。ここ、ええとこや」
「ご飯いっぱい食べます。いっぱい寝ますー」
「お昼からは、仕事あるし」
お説教してたら、お仕事できない。
「え?」
「じいやがね、引き継ぎするって」
「あ、引き継ぎ。了解です」
「鍛錬所に集合だって」
晦と小望が、がくっと崩れ落ちた。
「鍛錬所……」
「引き継ぎが鍛錬所……?」
「引き継ぎってなんやっけ……?」
横の二人は顔を見合わせる。
「あの、じいやさん、って?」
「隊長を捕まえた成人殿下の護衛さんです」
小望の言葉に二人は、ひええ、と仰け反った。
「座ってお話よりいいよね?」
鍛えながらお話。二ついっぺんにできていい。正座してお話を聞いて足が痺れたって、何にもいい事ないからね。
「いい、ような気がしないでもないような……?」
ん? それは、どっち?
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