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第十章 されど幸せな日々
27 緋色には内緒 成人
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「……少しでも寒いと感じたら、すぐに城の中に入れよ」
「うんっ」
大丈夫だよ、緋色。よく見て。俺だけ上着着てるんだよ。これ、もこもこですっごく暖かい。軽くて動きやすいし。
一人だけ上着を着てるってことに、ちょっとあれ? って思ったりもするけど、寒いと動けないし風邪引いちゃうから着ておく。だから安心して仕事してきて。
「ふふ」
城の中に入っていく緋色と梅光と常陸丸を見送っていたら、笑い声が聞こえた。千代はよく笑う人みたいだ。千代の笑い声はいい。好き。空気が柔らかくなる気がする。
でも、何笑ってるのかな?
「ん?」
「鶴丸さんや松吉さんからお聞きしとりましたけど、殿下方はお聞きしとったよりももっと仲のおよろしいご様子。ええですねえ」
「ん?」
「とても、ええです」
「そう?」
「はい。あ、そのお人の縄を解いたって。洗ってあげんといかんねえ」
千代は俺をにこにこと見てから、元真中を簀巻きから出すように指示を出した。
俺と緋色は仲が良い? うん。それはそう。一番好き同士だからね。伴侶だもん。特別。
「洗う?」
ちょうど、トラックから下ろされた猪が、水をかけられて泥を流されていた。血抜きは森でしてきたのかな。流石、手早い。
「ふ、ふふ。んんっ。成人殿下。人は、冬に水で流したらあきません」
ああ、うん、そっか。そうだな。冷たいな、水。暑い季節なら大丈夫だけど。戦場でも俺は、暑い季節以外は、沸かした川の水に手拭いを浸して体を拭いていた。手間がかかっても、火を使うのがちょっと危険でも、できるだけ沸かしていた。俺、寒いのとか冷たいのは、昔から苦手だったんだなあ。
ん、そうかと頷いたら、にこにこと笑う千代に頭を撫でられた。そっと、優しく。柔らかい手が気持ち良くて、千代をじっと見上げた。
千代は、見た目も何もかもが柔らかそうなのがいい。女の人は皆、ぎゅって抱っこしてくれる時、男の人より柔らかくて気持ちいいんだけれど、その中でも千代はだいぶ柔らかそうだ。俺は、緋色には内緒だけれど青葉の抱っこが好き。他の人とくっつくのを緋色が嫌がるから、緋色の見ていないところでたまに、ぎゅって抱っこしてもらう。あれは、とても気持ちいい。緋色の抱っこがもちろん一番なんだけど、なんだろう。なんか、青葉の抱っこはちょっと特別。よく分かんないけど、特別だ。
その青葉にちょっと似ている千代のなでなでが気持ちよくて、後で、千代も少しだけぎゅってしてくれないだろうか、とか思ってしまった。緋色の見ていないところで少しだけ。こっそり頼んでみようかな?
女の人って、すごく細い乙羽でも男の人より柔らかいから不思議だ。よく鍛えている似たような背格好の千寿と寿々丸も、抱きついたら柔らかさが違ったりするんだろうか? 試したいけれど、誰にでも抱きついたら駄目って教えてもらっているから我慢しよう。
「お風呂屋さんに連れて行くわ、母上」
「うちらも、ちょっと汗と汚れを流して着替えたいからちょうどええし」
「そうやね、それがええね。望と朔も入っといで。一緒におれば、外の風呂でもええやろ」
「「ええっ? また?」」
望と朔が揃った声を上げる。
「国を預かる身分になった事やし、何かあったら事やから、もう外の風呂はやめましょって言うてたやないですか」
「ほんのついこの間ですよ? 千代さま」
「しゃあないやないの。城の風呂は洗たばかりやから、湯を張るのにどうしても時間がかかるんやもの。このお人、このままやと凍えてしまうし、連れて行ってついでに自分らも流しておいで」
お風呂屋さん? 皆で入れるお風呂屋さんがあるの?
「はい」
「ん? 成人殿下、どうされました?」
「俺もお風呂屋さん、行ってみたい」
俺は汚れてないから入らなくていいけど、お風呂屋さんを見てみたい。
「うんっ」
大丈夫だよ、緋色。よく見て。俺だけ上着着てるんだよ。これ、もこもこですっごく暖かい。軽くて動きやすいし。
一人だけ上着を着てるってことに、ちょっとあれ? って思ったりもするけど、寒いと動けないし風邪引いちゃうから着ておく。だから安心して仕事してきて。
「ふふ」
城の中に入っていく緋色と梅光と常陸丸を見送っていたら、笑い声が聞こえた。千代はよく笑う人みたいだ。千代の笑い声はいい。好き。空気が柔らかくなる気がする。
でも、何笑ってるのかな?
「ん?」
「鶴丸さんや松吉さんからお聞きしとりましたけど、殿下方はお聞きしとったよりももっと仲のおよろしいご様子。ええですねえ」
「ん?」
「とても、ええです」
「そう?」
「はい。あ、そのお人の縄を解いたって。洗ってあげんといかんねえ」
千代は俺をにこにこと見てから、元真中を簀巻きから出すように指示を出した。
俺と緋色は仲が良い? うん。それはそう。一番好き同士だからね。伴侶だもん。特別。
「洗う?」
ちょうど、トラックから下ろされた猪が、水をかけられて泥を流されていた。血抜きは森でしてきたのかな。流石、手早い。
「ふ、ふふ。んんっ。成人殿下。人は、冬に水で流したらあきません」
ああ、うん、そっか。そうだな。冷たいな、水。暑い季節なら大丈夫だけど。戦場でも俺は、暑い季節以外は、沸かした川の水に手拭いを浸して体を拭いていた。手間がかかっても、火を使うのがちょっと危険でも、できるだけ沸かしていた。俺、寒いのとか冷たいのは、昔から苦手だったんだなあ。
ん、そうかと頷いたら、にこにこと笑う千代に頭を撫でられた。そっと、優しく。柔らかい手が気持ち良くて、千代をじっと見上げた。
千代は、見た目も何もかもが柔らかそうなのがいい。女の人は皆、ぎゅって抱っこしてくれる時、男の人より柔らかくて気持ちいいんだけれど、その中でも千代はだいぶ柔らかそうだ。俺は、緋色には内緒だけれど青葉の抱っこが好き。他の人とくっつくのを緋色が嫌がるから、緋色の見ていないところでたまに、ぎゅって抱っこしてもらう。あれは、とても気持ちいい。緋色の抱っこがもちろん一番なんだけど、なんだろう。なんか、青葉の抱っこはちょっと特別。よく分かんないけど、特別だ。
その青葉にちょっと似ている千代のなでなでが気持ちよくて、後で、千代も少しだけぎゅってしてくれないだろうか、とか思ってしまった。緋色の見ていないところで少しだけ。こっそり頼んでみようかな?
女の人って、すごく細い乙羽でも男の人より柔らかいから不思議だ。よく鍛えている似たような背格好の千寿と寿々丸も、抱きついたら柔らかさが違ったりするんだろうか? 試したいけれど、誰にでも抱きついたら駄目って教えてもらっているから我慢しよう。
「お風呂屋さんに連れて行くわ、母上」
「うちらも、ちょっと汗と汚れを流して着替えたいからちょうどええし」
「そうやね、それがええね。望と朔も入っといで。一緒におれば、外の風呂でもええやろ」
「「ええっ? また?」」
望と朔が揃った声を上げる。
「国を預かる身分になった事やし、何かあったら事やから、もう外の風呂はやめましょって言うてたやないですか」
「ほんのついこの間ですよ? 千代さま」
「しゃあないやないの。城の風呂は洗たばかりやから、湯を張るのにどうしても時間がかかるんやもの。このお人、このままやと凍えてしまうし、連れて行ってついでに自分らも流しておいで」
お風呂屋さん? 皆で入れるお風呂屋さんがあるの?
「はい」
「ん? 成人殿下、どうされました?」
「俺もお風呂屋さん、行ってみたい」
俺は汚れてないから入らなくていいけど、お風呂屋さんを見てみたい。
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